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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

オバマ大統領&胡錦濤主席によるクリーンエネルギー政策合意でわかったこと(2)

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昨日の続きです。

・21世紀石炭の概要にはいくつかの企業名が出てきます。基本的な枠組みは、両国が協力して石炭のクリーン利用を推進するというもの。具体的には、
 (1) 米商務省からChina Power Engineering and Consulting Group Corporationに助成金を交付し、米国の技術を使って実現するIGCC(Integrated Coal Gasification Combined Cycle、石炭をガス化して発電する効率的な発電技術)の事業化調査を行う、
 (2) 二酸化炭素排出を大きく削減できる石炭火力発電所を実現する目的で米国Peabody Energy社が中国GreenGenプロジェクトに参画する、
 (3) GEとShenhua Corporation(中国政府系の世界最大の石炭採掘会社)が共同でIGCCおよび他のクリーン石炭技術を開発する、
 (4) AES(米国の発送電会社)とSongzao Coal and Electric Company(石炭発電会社)が共同で重慶の炭鉱から得られたメタンガスを活用した発電を行い、温暖化ガス排出を軽減する、
 となっています。

・シェールガス・イニシャティブでは、米国のシェールガス(前投稿の注参照)技術を活用し、環境を配慮したシェールガスの開発を行う。具体的には日米共同の技術研究、シェールガス田開発、石油ガス産業フォーラムの活動、視察、ワークショップなど。

・米中エネルギー協力プログラムでは、民間22社以上が資金を拠出し、米中共同で中国における多数のクリーンエネルギープロジェクトを推進する。内訳は再生可能エネルギー、スマートグリッド、クリーン輸送、グリーンビル、クリーン石炭、コンバインド暖房・発電、エネルギー効率化。

こうした政策、方策を両国共同で行うことが合意されました。

21世紀石炭プロジェクトの項では、エネルギー関連企業およびスマートグリッド関連企業としては世界最大手のGEの名前が出ています。ここで記述されている要素を組み合わせると、世界最大の石炭採掘会社の石炭を活用する大規模なIGCC発電所の実現にあたってGEが技術を提供するという図式が見えます。中国における石炭火力発電の規模の大きさ、そして排出される二酸化炭素の多さについては様々な場所で指摘されています。これをGEが解決するわけですね。そして大きなビジネスにする…。

近年、日本の産業界の発展のためには中国の非効率なエネルギー事情に日本の省エネ技術、環境保護技術を投入すべきだという議論が多くなされてきました。今回のオバマ大統領&胡錦濤主席の合意はそれに先手を打つ形になるわけですね。
実に驚くべき内容と言っていいでしょう。中国のエネルギー活用が近代的なものになっていくのに必要な省エネルギー技術の導入、電気自動車の開発、再生エネルギー発電の開発、クリーンな石炭発電の開発、膨大なポテンシャルがありそうなシェールガスの開発、そしてスマートグリッドがすべてカバーされています。GEなどの名が挙がっている以上、この動きから生じる事業機会には米国企業が優先的にアクセスできるものと見て間違いありません。

ある意味では、相当の期間をかけて準備してきた奇襲攻撃。日本企業がこの中国でエネルギー関連の事業機会を獲得していくためには、鳩山政権と各関連省庁が早期にこれに匹敵する戦略を練ることが不可欠だと思います。

なお、GEについては、この記事(GE: A Third of Smart Grid Stimulus Winners Are Our Customers)が、先般のオバマ政権によるスマートグリッド関連助成金の対象となった1/3のプロジェクトは、実はGEの顧客企業(電力会社等)であったことを報じています。GEのCEO、Jeffrey Immeltは、助成金政策を策定したEconomic Recovery Advisory Boardの委員だったとのこと。また、関連のロビー活動に四半期だけで755万ドルを投じたそうです。今回の米中合意についても、相当綿密なロビー活動が行われたものと見るべきでしょう。

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