ボストンコンサルティンググループのパートナー3名による共著「Globality」
米国のマネジメントコンサルティング界で話題になっている書籍のようで、クライアント経由で情報が来ました。すぐにアマゾンで注文したところ、翌日到着したのには驚きました。浦安の配送センターに在庫があったようです。
新興国で力をつけつつある新しいタイプの企業が今後、世界経済においてどういうインパクトを持っていくのかを論じています。巻末に、各新興国で注目される企業100社をピックアップしたリストがあり、外国株銘柄の物色用資料としてもおもしろそうです。
著者のHarold Sirkin, James Hemerling, Arindam Bhattacharyaの3氏はボストンコンサルティンググループのパートナー。過去20年以上にわたって、国際企業へのコンサルティングを続けてくるなかで、最近、新しいタイプの大企業が新興国に出現しつつあることに気づき、3名でまとめてみたそうです。
こちらにサイトがありますが、現時点ではアクセスできない模様。要約やさわりがわかる動画があります。
「Globality」とは彼らの造語で、既存の「Globalization」が西洋対東洋、先進国対新興国といった二極対立の図式で物事が進んでいた状況を括る概念であるのに対し、「Globality」は、”極”が世界のあちこちに出現して、競争が多軸化、多元化する様相を括る言葉なのだそうです。彼らはそこで起こる競争を"competing with everyone, from everywhere, for everything"と表現しています。また、"Manyness"というキーワードがあちこちに出てきます。これからは、"Manyness"をハンドリングすることが必要になる時代なのだと。日本語にすれば「多数性」でしょうか。
日本にいるわれわれは、島国から外を見る視点で、日米とか日中とかいう二者関係で物事を捉えるのに慣れていますが、言語もカルチャーも異なる当事者同士が多対多で繰り広げる競争ということになると、かなり認識の枠組みを変えて臨まないといけません。いったん認識の枠組みを壊すぐらいの作業が必要なる気がします。著者も「これは世界の新秩序だ」みたいな言い方をしています。(余談ですが、太平洋戦争において戦局が中国および南方へと多軸化していく様がうっすらと思い浮かびます)
Globality的図式において、新しいタイプの企業は、例えば次のような拡大パターンをとります。
1. 数億人の規模がある国内市場において、既存技術による半ばコモディティ化した製品ジャンルにおいてシェアトップをとる。
2. 米国流のマネジメントにより、高収益体質を身につける。
3. 下位市場から上位市場へ上り始める。
4. 市場を通じた資金調達により財務基盤を拡充。
5. 先進国市場には、M&Aなどを使って、比較的短い時間で参入、現地のシェアを拡大。
6. 5年~10年程度で押しも押されぬグローバルプレイヤーになる。
国内市場の規模があるだけに、スケールになじむわけですね。また、経営者は多くの場合、米国のビジネススクールで学んでいますから、既存のグローバル企業が取ってきた戦略戦術はすべて頭に入っています。国内株式市場で資金を集められれば、あとは外へ出て行くのは訳ない、という発想なのでしょう。また、成長率が高いので国外の資金も集めやすいはずです。
70年代から80年代にかけて、ホンダ、トヨタ、ソニー、パナソニックなどが世界の下位市場から上位市場へと進出して存在感を高めていったのとほとんど同じことが、インド、中国、ロシア、ブラジル、メキシコ(日本とさほど変わらない人口)、インドネシアといった国々の大企業によって起こりうる、というのが本書の見立てです。
現在は経済がネットワーク化されているため、いったん規模が確立されてしまうと、Googleのような規模が規模を呼ぶ的な成長も不可能ではありません。そうした新しいタイプの企業の成長も、この本には書かれています。
まだ最初の1章程度を読み進んだだけですが、早い方がよいと思い、情報をお伝えします。
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簡単な思考実験として、日本としては、どうすればこうした新しいタイプのプレイヤーが多数出現してくる世界で、富み栄えていられるのか?ということを考えてみると、どういう答えになるでしょうか?
非常に素朴ですが、こうした高成長率の企業の株を買う(ピーター・リンチが言っていた、素朴な”成長を買う”発想)、という形がまず第一なのではないかと思います。それがもっともまとも。もっとも妥当。日本の1,000兆円以上の個人金融資産がそのように生かされると、向こう数十年も安泰なんでしょうね。でもこれはシリアスな話です。
第二は、新しいタイプの日本企業に期待。ですが、要解決事項はいっぱいありますね。そのもっとも大きなものが「人のマインド」。話が長くなるので、別な機会に…。