レアアース磁石はEVのどこに使われている?Geminiとのレアアース磁石に関するQ&A
6月初めのレアアース磁石に関する投稿に沢山の来訪をいただいておりまして、情報ニーズが大きいのだと思います。
米国が喉から手が出るほど欲しいレアアース代替磁石は日本と海外のどの会社が開発しているのか?(2025/6/6)
中国のレアアース磁石輸出規制がEVの製造のボトルネックになっている現状がある訳ですが、その文脈で、レアアース磁石に関する一問一答を、専門知識を豊富に持っているGemini Proと行いましたので、ご参考までにシェアします。
特にQ4では、ネット上に存在する報道記事をGeminiに読ませた上で、さらにそれを補足する内容を答えさせています。こういう使い方もできます。(その記事が書いていないことを深掘り的に回答させることができます)Q4の回答内容を見ると、Geminiが持つ専門知識の深さがどれほどなのかよく理解できます。(おそらく日本の研究者レベルです。)
同じことはどなたでもできます。おそらくGeminiやChatGPTでこのように専門的な知識が得られるということは、ほとんどの方がご存じないようなので、デモンストレーションという意味もあって掲出します。
Q1:自動車、EVに用いられるレアアース磁石は、具体的にどのような部品に用いられますか?米国の自動車と日本の自動車に関して、教えてください。
A:
自動車、特にEVやハイブリッド車において、レアアース磁石は主にモーターの重要な部品として使用されます。強力な磁力を持つため、モーターの小型化・軽量化・高効率化に不可欠です。
具体的に、レアアース磁石が用いられる自動車部品は以下の通りです。
主要な用途:
- 駆動用モーター: EVやハイブリッド車の走行に直接関わるモーター。高出力と高効率を実現するために、ネオジム磁石などのレアアース磁石が用いられます。特に、高温環境下でも磁力を維持するために、ジスプロシウムやテルビウムといった重希土類が添加されることがあります。
- 各種モーター(補機類):
- オートマチックトランスミッション
- スロットルボディ
- オルタネーター(発電機)
- パワーステアリング
- 電動シート、電動ウィンドウ、ワイパー、ファンなどの小型モーター
- センサー類: 各種センサーに磁石が利用されることがあります。
- スピーカー: 音を出すための部品にも磁石が使われます。
米国と日本の自動車メーカーにおける動向:
レアアース、特にレアアース磁石の調達は、中国に大きく依存しているため、各国にとって重要な課題となっています。中国がレアアースの輸出規制を行うと、自動車産業に大きな影響が出ることが懸念されています。
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米国:
- ゼネラルモーターズ(GM)やフォードなど、米国の主要自動車メーカーは、中国のレアアース輸出規制に対し強い危機感を表明しています。
- フォードは、レアアース磁石の調達難から、工場の一時停止を余儀なくされるなど、具体的な影響が出ています。
- レアアース使用量削減や、レアアースを含まない磁石の開発にも投資が行われています。例えば、Clean Earth Magnet社のような新興企業が、鉄と窒素を用いた新たな磁石技術を開発しており、GMやボルボもこれに投資しています。
- 一部のメーカーでは、永久磁石を使用しない誘導モーターや巻線界磁式モーターの採用も検討されていますが、小型化やコストの課題もあります。
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日本:
- 日本は2010年の中国によるレアアース輸出規制の際、大きな影響を受け、以来、レアアースの供給安定化と使用量削減に積極的に取り組んできました。
- 技術開発によるレアアース削減:
- トヨタ自動車: 希少な重希土類であるテルビウムやジスプロシウムを使わず、豊富で安価なランタンとセリウムを特定の配合比で用いることで、ネオジムの使用量を削減しながらも高い耐熱性と磁力を維持できる新型磁石「省ネオジム耐熱磁石」を開発しています。
- 日産自動車: ジスプロシウムの使用量を40%削減したEV用モーターを開発し、粒界拡散技術などを活用して耐熱性を維持しています。将来的には、次世代モーターでレアアースの使用量を1%以下にすることを目指しています。
- リサイクル体制の構築: 日本自動車工業会は、電動車から発生するモーター由来のレアアース磁石をリサイクルする体制を構築する動きを進めています。
- 代替素材の研究開発: レアアース磁石に代わる新しい磁石材料の研究開発も積極的に行われています。
要するに、自動車とEVにおけるレアアース磁石の最も重要な用途は駆動用モーターであり、それに加えて各種補機類のモーターにも使用されています。米国と日本は、中国へのレアアース依存から脱却するため、それぞれ技術開発やサプライチェーンの多様化、リサイクル推進といった異なるアプローチで対応を進めている状況です。
Q2: 中国からの禁輸は、レアアース磁石も禁輸されているのでしょうか?
はい、中国からの輸出規制は、レアアース磁石も対象に含まれています。
中国は、世界のレアアース生産・精製において圧倒的なシェアを占めており、その供給を戦略的な外交・経済ツールとして利用することがあります。近年、特にアメリカとの経済摩擦や、国家安全保障上の理由を背景に、レアアースおよびその関連製品の輸出管理を強化しています。
具体的な状況:
- レアアース(希土類元素)自体: 中国は、高性能磁石の製造に不可欠なジスプロシウム、テルビウムといった重希土類を含む特定のレアアース元素の輸出に規制をかけています。
- レアアース磁石(永久磁石材料): 2025年4月4日に施行された中国商務部と税関総署による「公告2025年第18号」により、サマリウムコバルト永久磁石材料、テルビウム含有ネオジム・鉄・ボロン永久磁石材料、ジスプロシウム含有ネオジム・鉄・ボロン永久磁石材料などの永久磁石材料そのものが輸出管理の対象となりました。
- 「禁輸」ではなく「輸出管理」: 厳密には「禁輸」というより「輸出管理」が強化されている状況です。これは、特定の国や企業への輸出を全面的に禁止するものではなく、輸出に際して政府の許可が必要になったり、審査が厳格化されたりすることを意味します。これにより、輸出のプロセスが複雑化し、時間やコストがかかるため、事実上の輸出が滞ったり、困難になったりする場合があります。
- 混乱と影響: 実際、この輸出規制によって、レアアース磁石の輸出が滞ったり、減少したりする事態が発生しています。例えば、2025年5月の中国のレアアース磁石の輸出量は大幅に減少したと報じられています。また、一部の自動車メーカーが、この規制の影響で生産停止に追い込まれたケースも報じられています。
ただし、中国政府が一時的に特定の企業(特に米国企業)に対する輸出許可を再開したり、一部の規制を緩和する動きも見られることもあり、状況は流動的です。しかし、根本的な輸出管理体制は維持されており、今後もレアアース磁石の安定供給は世界の自動車産業にとって大きな課題であり続けると予想されます。
Q3:レアアース磁石を製造、輸出している他の国はありますか?
はい、中国以外にもレアアース磁石を製造・輸出している国は存在しますが、その規模やサプライチェーンの安定性においては、中国が依然として圧倒的な存在です。
主なレアアース磁石の製造・輸出国(中国以外)と、その動向は以下の通りです。
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日本:
- 日本は、レアアース磁石の高性能化や省レアアース化に関する高い技術力を持っています。
- しかし、レアアース鉱石の採掘から精製、そして磁石の製造に至るまでのサプライチェーン全体を見ると、原材料の多くを中国に依存しています。(注:中国からレアアースそのものが禁輸されているため、レアアース磁石が量産できない)
- 日本の磁石メーカーは、独自の技術で重希土類(ジスプロシウム、テルビウムなど)の使用量を削減した磁石の開発や、リサイクル技術の確立に力を入れています。
- 一部の企業は、中国以外のサプライヤーからの原料調達にも取り組んでいます。
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米国:
- 米国はかつて世界最大のレアアース生産国でしたが、環境問題などから採掘・精製事業が縮小しました。現在は、中国から精製されたレアアースを輸入して磁石を製造する形態が主です。
- 近年、中国への依存を減らすため、国内でのレアアース採掘・精製能力の再構築に力を入れています。例えば、カリフォルニア州の「マウンテンパス鉱山」は重要なレアアース鉱山です。
- また、中国以外の国(オーストラリアなど)との連携を強化し、サプライチェーンの多様化を図っています。
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オーストラリア:
- オーストラリアは、レアアース鉱石の主要な生産国の一つです。特にライナス・レアアース社は、中国以外の企業として重要な存在です。
- ライナス社は、オーストラリアで採掘されたレアアース鉱石をマレーシアの工場で精製し、製品を世界各国に供給しています。最近では、マレーシア工場でジスプロシウムやテルビウムの生産にも成功しており、中国以外の重希土類の供給源として注目されています。
- 米国とも連携を深め、レアアースのサプライチェーンの多様化に貢献しています。
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ベトナム:
- ベトナムもレアアースの埋蔵量が多く、近年、その開発に力を入れています。
- 韓国などとの協力関係を通じて、レアアースの採掘・精製、さらには磁石製造のサプライチェーン構築を目指しています。
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ヨーロッパ(ドイツなど):
- 欧州諸国も、レアアース磁石の主要な消費国であり、中国への依存低減を目指して、独自の技術開発やサプライチェーンの再構築を進めています。
- ドイツなどでは、高性能モーターの製造技術が高く、レアアース磁石の需要も高いです。
課題:
これらの国々がレアアース磁石の製造・輸出能力を向上させていますが、依然として以下の課題があります。
- 精製能力の不足: レアアース鉱石を採掘しても、それを高純度の金属や酸化物に精製する技術と設備は中国に集中しており、この部分のボトルネックが解消されていません。
- コスト競争力: 中国は、環境規制の緩さや規模の経済により、圧倒的なコスト競争力を持っています。中国以外での生産は、コストが高くなる傾向があります。
- 重希土類の偏在: 高性能磁石に不可欠なジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類は、依然として中国とミャンマーからの供給に大きく依存しており、代替源の確保が難しい状況です。
したがって、中国以外の国々もレアアース磁石の製造・輸出を行っていますが、世界の供給構造を変えるまでには至っておらず、中国の動向が市場に与える影響は引き続き大きいと言えます。
Q4:以下の記事(中国のレアアース輸出規制に関して比較的詳しく報じている経済記事)に補足できることがあれば、お願いします。
A:
記事の内容は、レアアース磁石の基礎、自動車における用途、地政学的な重要性、そして各国の動向について非常に良くまとめられています。
以下に、記事に補足できる可能性のある点をいくつか提案させていただきます。
1. レアアース磁石の種類と特性の深掘り
記事中でネオジム磁石が触れられていますが、他の主要なレアアース磁石についても簡単に補足すると、より包括的になります。
- サマリウムコバルト磁石 (SmCo):
- 特性: ネオジム磁石に次ぐ強力な磁力を持ち、高温環境下での磁力低下が少ない(耐熱性が高い)。耐食性も高い。
- 用途: 航空宇宙、防衛、医療機器(MRI)、高温環境下で使用されるモーターなど。コバルトが高価なため、ネオジム磁石ほど汎用ではない。
- フェライト磁石との比較: レアアース磁石(特にネオジム磁石)がいかに高性能であるかを際立たせるために、従来のフェライト磁石との性能差(磁力、サイズ、重さ)に簡単に触れると良いでしょう。
2. サプライチェーンの具体例と課題
「供給網」のセクションをさらに具体的にできます。
- 「マウンテンパス鉱山」の再活性化: 米国が国内のレアアース供給を確保しようとする具体的な取り組みとして、カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山の再稼働とその課題(精製能力、中国への依存)に触れると、米国の戦略がより明確になります。
- 日本の独自の精製技術: 記事内で触れられているように、日本企業が重希土類を使わない磁石開発を進めている点を、単に「研究開発」だけでなく、例えば「粒界拡散法」のような具体的な技術名に触れることで、日本の技術力をアピールできます。
- リサイクルの現状と課題: 日本のリサイクルへの取り組みは素晴らしいですが、現状の回収率やコスト、技術的な課題(不純物の除去など)についても触れると、より現実的な視点を提供できます。
3. 今後の技術動向と代替材料
「今後の展望」セクションで、レアアース磁石の代替技術についてもう少し掘り下げることができます。
- 非レアアース磁石の研究:
- 鉄系窒化物磁石: 記事中で言及されているClean Earth Magnet社(GMも投資)の技術は、レアアースを使わない磁石として非常に注目されています。その原理(鉄と窒素の化合物)やメリット(安価、豊富)に触れると良いでしょう。
- その他: マンガンビスマス(MnBi)などの研究も進められていますが、実用化にはまだ時間がかかるといった記述も加えると、現状の課題が明確になります。
- モーター設計の進化:
- 巻線界磁式モーター: レアアース磁石を使用しないモーターの一種として、巻線界磁式モーターがあります。トヨタがEVで採用を検討した事例や、BMWなど一部の欧州メーカーが採用していることを挙げることで、磁石依存からの脱却に向けたモーター自体の設計変更も重要なアプローチであることを示せます。
- シンクロナスリラクタンスモーター: これも磁石を使用しないモーターの一種で、高効率化が期待されています。
4. 経済安全保障と各国戦略の深化
- 中国のレアアース戦略の歴史的背景: 中国がどのようにしてレアアース市場を支配するに至ったか(低コスト生産、環境規制の緩さ、戦略的投資など)を簡潔に加えることで、現在の地政学的状況の理解が深まります。
- 主要国の協調の動き: 米国、EU、日本、オーストラリアなどがレアアース供給網の多様化を目指して、共同で投資や技術開発を進めている枠組み(例:クアッド諸国の連携など)に触れると、国際的な協力の重要性が強調されます。
- 国内法の整備: 各国がレアアースの安定供給を国家安全保障上の課題と位置づけ、国内法(例:米国における国防生産法DPAの活用)を整備していることにも触れると良いでしょう。
5. 図表やデータの活用
もし可能であれば、以下のような図表やデータを追加すると、視覚的に分かりやすくなります。
- 世界のレアアース生産量シェアのグラフ: 中国の圧倒的なシェアを示す。
- ネオジム磁石とフェライト磁石の性能比較グラフ: 磁力、耐熱性などの違い。
- EVの駆動用モーターの構造図: レアアース磁石がどこに使われているかを分かりやすく示す。
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