「ウクライナ軍がロシア空軍基地に壊滅的打撃を与えた作戦に用いられたAI」でわかったこと
先日のウクライナによるロシア空軍基地を大規模編成ドローンで奇襲した戦術は、「軍事史上初の"AI戦術による戦略的打撃」であると報道されています。例えばアルジャジーラの動画では以下のようなナレーションが入っています。かなり詳しいです。(アルジャジーラはカタール政府系の報道メディア。イスラム諸国の動きを代弁する位置付けがある。西側の報道メディアはそういうことをしないので)
Ukraine uses AI to strike Russian airbases (ウクライナはロシア空軍基地を攻撃する際にAIを使用)
引用
世界で初めて、ウクライナはAI搭載ドローンを用いて、ロシアの爆撃機を識別・攻撃しました。攻撃はロシア本土の深部にある空軍基地を直撃し、ロシアの長距離爆撃機部隊の3分の1を損傷または破壊したとされています。
「スパイダーウェブ作戦(Operation Spiderweb)」と呼ばれるこの大胆な計画は、ウクライナの情報機関SBUによって考案され、ロシアの爆撃機戦力を可能な限り削減することを目的としていました。
攻撃対象となったのは、クルーズミサイルの発射母体として頻繁にウクライナを攻撃していた**Tu-22(バックファイア)、Tu-95(ベア)、そして超音速爆撃機Tu-160(ブラックジャック)**といった機種です。
この作戦は2023年末から準備され、武装ドローンに搭載するAIソフトウェアが開発されました。AIは、ロシア機の旧型モデルが展示されているウクライナ国内の博物館で訓練され、爆撃機の特有のサイズや外観を識別できるように学習しました。
準備が整ったタイミングで、117機の武装ドローンが複数のトラックの屋根にある秘密の隔間に隠された状態でロシア国内に密輸されました。トラックはロシア各地の5つの空軍基地の近くまで移動され、運転手たちは何も知らされないまま待機。ドローンはその後リモートで解放され、空軍基地へと直進し、滑走路に並んだ爆撃機を攻撃したのです。
ウクライナ側の発表によれば、作戦は大成功。合計41機の航空機が破壊または深刻な損傷を受けたとのことです。これはロシアの長距離爆撃機部隊の約3分の1に相当し、その軍事的・経済的損失は計り知れません。
これらの爆撃機は極めて高価な機体である一方、攻撃に使われたドローンは1機あたり数千ドル程度。被害総額は70億ドル以上にのぼると見積もられています。
中略
AI搭載ドローンによるこの新しい戦争形態は、現在進行中の軍事革命の最前線に位置づけられるものです。今後は、戦車、特定の軍服、要塞、火砲などを識別するよう訓練されたドローンスウォーム(群れ)が登場するでしょう。
さらに懸念されるのは、特定の人物を識別して狙うように訓練されたAIドローンが、今後「暗殺兵器」として実戦配備される可能性です。
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これは"戦争のiPhoneモーメント"
ウクライナのAIドローン攻撃「スパイダーウェブ作戦」要点
◎作戦概要
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作戦名:Operation Spiderweb(スパイダーウェブ作戦)
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主導機関:ウクライナ保安庁(SBU)
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目的:ロシアの長距離爆撃機(Tu-22、Tu-95、Tu-160)を識別し、破壊
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方法:
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ドローンにAIを搭載し、対象機種を識別・攻撃
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ウクライナ国内の博物館にある旧式の同型機を使ってAIを訓練
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117機の武装ドローンをトラックの屋根に隠してロシア領内に密輸
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5箇所の空軍基地近辺からリモート起動、爆撃機群へ突入
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◎戦果の衝撃
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破壊・損傷した航空機:41機
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被害総額:70億ドル超
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ロシアの長距離爆撃機戦力の1/3を喪失
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補充困難性:
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Tu-22とTu-95はすでに生産終了、部品供給も困難
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Tu-160(ブラックジャック)は限定的な新造体制だが、生産は極めて低速
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◎技術面の注目ポイント
1. AIによる目標識別能力
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機種ごとの形状・サイズ・特徴(レーダー形状、機首形状など)を画像ベースで学習
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標的を自律的に選別し、飛行中に軌道修正して攻撃可能
2. 完全オフライン作戦
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ドローンは事前学習済みAIを搭載
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通信を絶たれても、自己判断で攻撃を遂行できる
3. 新たな軍事パラダイム
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このような攻撃は、従来の「人間のオペレーターによる操作」ではなく、
**"AIによる戦術遂行"**という新領域 -
戦場の主導権が「大量の安価なAIドローン」に移行する兆候
◎戦略的インパクトと今後の示唆
1. 戦略的な非対称兵器
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ロシアの億単位兵器 vs ウクライナの数千ドルドローン
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コスト対効果の面で「絶対に勝てないゲーム」になる可能性
2. 西側諸国の支援技術の影
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情報収集・位置特定にNATOや米国のインテリジェンス支援が関与した可能性が高い
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今後は、ターゲット識別型AIドローン × 米国衛星情報のコンビネーションが主流に?
3. 軍事AIの民主化
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AIとドローンがあれば、国家規模でなくても空軍基地を無力化できる時代へ
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イスラエル、台湾、イラン、北朝鮮などがこの戦術を模倣する恐れあり
4. 個人識別型AIドローンの危険性
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最後にアルジャジーラも警告しているとおり、
今後「特定人物を殺害するAIドローン」が登場する可能性-
例:顔認識AIを使って政治家や将軍を標的にするなど
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◎結論:これは"戦争のiPhoneモーメント"
かつてスマートフォンが情報産業のすべてを変えたように、
今回の「AI戦術ドローン」は、戦争のルールそのものを塗り替える可能性を示しました。
特に、
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高価な兵器の優位性の崩壊
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後方基地の安全神話の崩壊
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情報とAIの組み合わせによる"目に見えない戦力"の可視化
という点において、世界中の軍事戦略と兵器開発の再定義が始まる転換点だといえるでしょう。
ここで用いられた「AI」は、つまり、ロシア空軍機を正確に識別するという古典的な機械学習であった訳です。こうした視覚による物体識別は従来から工場の不良品検査などで使われてきました。この古典的な機械学習が今回の壊滅的なロシア軍被害をもたらしています。どうも軍事の世界は「古い」ようで先端的な技術が随所で用いられているように見えるものの、そうではない所があるようです。特にAIについては。
しかしこの古典的な機械学習が甚大な被害を敵国にもたらしたことは確かですので、有用性はあるということです。仮に現在の最先端のAIが軍事に用いられればどのような戦争になるのか?想像もできません。
ChatGPTは、これは"戦争のiPhoneモーメント"とまで言ってまとめています。読めばご理解いただけるように、この作戦は、巨額の軍事費を必要とする従来の戦略・戦術のパラダイムを完全に刷新するインパクトを持っています。
軍事には素人である私ですが、このインパクトはあまりに強烈であり、関係の方々が早期にご理解くださることに意味があるので、あえて取り上げた次第です。