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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

RFIDはメガプレイヤーのためのもの?

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以前に作成したRFIDの資料を更新するために、過去1年間の専門誌や新聞の記事に目を通しています。雑誌では米「RFID Journal」(紙とサイトと)とわが国の「LOGI-BIZ」が中心。それに日経テレコンでヒットした日経新聞および日経BPの雑誌の記事です。

過去2~3年の間、米国の事例を中心に見てきました。
日本のRFID導入はEPCグローバルの(というよりWal-Martが作った標準形の)方向性であるところのパレットレベルで行う誤納品防止/シュリンケージ防止/欠品補充精度の向上といったアプリケーションではなく、アイテムレベルのプロダクトライフサイクル管理+リサイクルといった方向を目指しているのだということを、恥ずかしながら今回初めて知りました(「EPCはあまり使えないよ」という雰囲気になっているわけですね?)「LOGI-BIZ」2006年8月号の特集「ICタグはどこまできたか?」は必読です。物流企業側のRFIDに対するニーズや懸念がよくわかります。

また、Wal-Martやヨドバシなどに見るように、RFIDの世界では大手小売企業が打ち出すアプリケーションの勢いが強いのに対して、日本では家電メーカー主導でアプリケーションを確立していこうという動きがあるのだということもよくわかりました。

米国では、Wal-Martなどの最大手スーパーのタグ貼付義務づけ以降、RFIDの導入効果が実際どのへんにあるのかの模索が続いています。最近では、最大手消費財メーカーが行う製品発売時のプロモーショナルディスプレイの管理で非常によい成果を上げたという事例が、いくつか報告されています。それ以外の目覚しい成果については、現在探索中です。

こうした状況を少し頭に収めてみると、次のことに気づきました。つまるところ、RFIDとは、現時点ですでに巨大な業務ネットワークを構築している企業が、さらに効率を上げるために使うと最大の効果が出せるツールなのであって、規模が最大手とは言えないレベルで使うと、あんまり楽しくないツールなのではないかと。
怒った方がいらっしゃったらごめんなさい。

RFID関連の記事では必ず最後に「課題はコストである」という記述が出てきます。一般論として、RFIDでコストを上回るリターンを得るには、かなりの規模が必要であるということが言えそうです。

わかりにくくてごめんなさい。自分の頭の中にあるのは、スケールフリーネットワークに働くベキ法則のことです。
世界で最大級のネットワークを構築している企業がRFIDを使えば、それなりに良好な成果が得られる(とは言っても、Wal-Martでさえ目覚しい成果を出すのに現状では苦労しています)。けれども、ネットワークの規模が小さいところがRFIDで成果を出そうとしても、ベキ法則が逆に働いて、まったく楽しくない成果になる(絶対に経済合理性がないような利用形態になる)。そんなことが言えないでしょうか?

現在、成果の上がっている事例とそうでない事例とをみると、規模が無視できないように思います。

それがほんとうにそうだとすれば、規模がWal-Martほどではない領域におけるRFID導入では(言い換えれば、Wal-Mart以外のすべての企業は)、規模に関係なく成果の上がる何らかの新しいアプリケーションを編み出す必要があるということが言えそうです。

そのように考えると、日本のRFIDアプリケーション開発がEPCとは一線を画して、別なベネフィットを追求しようとしていることがよく理解できるように思います。

けれども、どれだけ規模が小さくなっても、RFIDはネットワークが根幹にあるアプリケーションであるだけに、必ず、ネットワークを構成する諸主体の間で、コストとベネフィットの綱引きがあります(ノードの大小でベネフィットに差がつく)。この綱引きに勝てるのは、他の主体に対して”無理強い”が可能な主体でしょう。そうした現実が、RFIDにはあると思います。

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