ユニークで行こう(ベキ法則下の企業活動-その9)
延々ネタにし続けている「The World Is Flat」も「フラット化する世界」という邦題で、日本経済新聞社から5月中に刊行されるとのこと。間もなく店頭に並びますね。こちらは土日も仕事に投入ではや4週目、未読分あと2章というところまでこぎつけました。
仮に、インターネットの浸透によってスケールフリーネットワーク化が各所で進展しているとすれば、インターネットが多種多様な主体を接続しているものである以上、変化も多面的にならざるを得ません。複数の目に見えないスケールフリーネットワークが相互に絡み合っている様が想像されます。
トマス・フリードマンが記している”変化についてのレポート”も、個人のブログジャーナリストから世界最大手企業のアンバンドリングおよびリバンドリング、さらにはBill and Melinda Gates Foundationの共同議長の一人であるところのビル・ゲイツのコメントにまで及んでおり、考えさせられる箇所が多々あります。(この本はディテールが非常におもしろいので、要約でなく、ぜひ本の現物を手にとって読まれることをお勧めします。例えば、第11章The Unflat Worldに記されているビル・ゲイツの姿勢はやや感動的ですらあります。)
この多面的な変化は、3つの動きに収斂しているとのことです。第一の動きが以下。
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It is my contention that the opening of the Berlin Wall, Netscape, work flow, outsourcing offshoring, open-sourcing, insoucing, supply-chaining, in-forming and the steroids amplifying them all reinforced one another, like complementary goods. 中略 That tipping point arrived sometime around the year 2000.
The net result of this convergence was the creation of a global, Web-enabled playing field that allows for multiple forms of collaboration - the sharing of knowledge and work - in real time, without regard to geography, distance, or, in the near future, even language. 中略 but it is open today to more people in more places on more days in more ways than anything like it ever before in the history of the world. This is what I mean when I say the world has been flattened.
--Chapter Three, The Triple Convergence
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ベルリンの壁崩壊から”ステロイド”まで10のFlat化要因が相まって、距離を越えた連携がしやすくなり、大企業だけでなくてどのような企業にも、そして個人であっても、「利」で結びつくことができやすくなった。チャンスはより開かれている。それが第一のトレンド。
ちなみに、彼の言う”ステロイド”とは、デジタルの”ごった煮”みたいなものを指していて、日本のiModeにデジタルカメラも搭載されていればSuicaも使えて、メールもウェブのブラウジングも何でもできる、ハイテクジャパンWow!(半分Weird..)みたいなニュアンスが込められています。
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But for the full flattening effects to be felt, we needed not only the ten flatteners to converge but also something else. We needed the emergence of a large cadre of managers, innovators, business consultants, business schools, designers, IT specialists, CEOs and workers to get comfortable with, and develop, the sorts of horizontal collaboration and value-creation processes and habits that could take advantage of this new, flatter playing field. In short, the converged of the ten flatteners begat the convergence of a set of business practices and skills that would get the most out of the flat world.
--Chapter Three, The Triple Convergence
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端的に言えば、この平らな世界で優勢に立つには、企業において新しい形のマネジメントが確立されなければならないということですね。新しい経営者、新しい経営手法、新しいビジネスプロセスが求められている。
これはまぁ古くはドラッカーから近年のクリステンセンに至るまで、既存の経営アプローチを否定する人はたくさんいたわけで、別段新しいことを言っているわけではありません。旧来の経営は打破される必要がある。おそらくはイノベーションが自律的に機能する組織形態へと。そのへんでしょう。けれどもこのなかで注意すべきは、経営者だけでなく、専門職の人たちも"the sorts of horizontal collaboration and value-creation processes and habits that could take advantage of this new, flatter playing field."(対等なコラボレーション、付加価値プロセス、フラットになったビジネスフィールドをうまく使いこなせる能力)が求められるとおっしゃっています。経営だけの問題として済ませるのはよろしくなく、個人もまた向き合わなければいけない現象だとのこと。
これが第二の動き。そして第三の動きは、競走場裡への膨大な新規参入です。
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according to a November 2004 study by Harvard University economist Richard B. Freeman, in 1985 "the global economic world" comprised North America, Western Europe, Japan, as well as chunks of Latin America, Africa, and the countries of East Asia. The total population of this global economic world, taking part in international trade and commerce, said Freeman, was about 2.5 billion people.
By 2000, as a result of the collapse of communism in the Soviet Empire, India's turn from autarky, China's shift to market capitalism, and population growth all over, the global economic world expanded to encompass 6 billion people.
--Chapter Three, The Triple Convergence
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ロシア、インド、中国が加わって、人の数という意味で世界経済が倍以上のサイズになったということです。就業人口では15億人がグローバル経済に加わったことになるそうです。
彼らもまたインターネットで接続されて、フラット化する世界のさまざまな特性を使いこなす人たちなわけで、特にインドと中国は人口が多い分、優秀な人も多いですから、変化はものすごい。ある視点で見れば競争が熾烈になる、別な視点で見れば好機がますます増える。そうした人材に関する地球規模の変化が起こっている。
これら3つの動きは、地球規模でスケールフリーネットワーク化が起こっているとすれば、さもありなんというもの。確かに読んでいるそばから衝撃を受けはしますが、冷静になって考えれば、日常的に日経新聞で報じられているような現象が集積したものであり、目の玉むくほどのことではない。
けれども、ジャーナリストであるトマス・フリードマンの想像力はすぐにこうしたマクロなトレンドが個人に影響を及ぼした時に何が起こるかを察知し、そうした事実も取材して、非常に説得力あるエピソードとして記しています。話がそこまで行かなければ腹に落ちません。
このマクロトレンドには私の仕事も影響を受けるはずであり、あなたの仕事も影響を受けるはずである。そしてまた子どもの世代にもたぶんさらに大きな影響を及ぼすことが予想される。仕事は生活の基本であり、仕事は納税という形で国の基でもある。その仕事がものすごく大きな影響を受ける。ならばどう対処すればいいのか?そこをかなり真剣に考えながら筆を進めている風があって、良書性のようなものが行間からにじみ出ている印象を覚えます。
では、スケールフリーネットワーク化する世界において、個人はどういう姿勢で立つのがいいのか?
膨大な法人と個人とコンピュータが接続されたフラットな世界では、猛烈な勢いでコモディティ化が進展します。法人の事業モデルもコモディティ化にさらされると同時に、個人の知的かつ特殊な能力もコモディティ化の波を受けます。ハードウェアは言うまでもなく。おそらくソフトウェアも。先日のダボスの会議ではジョン・チェンバーズ自身が回線の帯域は実質的にフリーになると言ってました。回線ですらそうです。そんなこんなでコモディティ化の波が各所で起こる。
このとき、コモディティ化に耐えられるのは、真にユニークなものであるわけです。真にユニークであれば、誰も真似をできず、デジタイズもできない。サブプロセスに小分けして伝送することもできず、アウトソーシングは不可能。
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When it comes to responding to the challenges of the flat world, thereis no help line we can call. We have to dig into ourselves.
--Chapter Eight, This is not a test
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自分自身を掘り下げてユニークになる。個人だけでなく法人もということであります。
このへんではたと気づくのが、最近のIBMの広告メッセージ「スペシャルになろう。」はまさにそのことを言っているのだなぁということです。慧眼。すごいぞIBM。もちろんこのキャンペーンでは「The World Is Flat」を下敷きにしているので、それ系のメッセージが出てくるのは当然のことなのですが、広告コピーとして秀逸ですね。
「スペシャルになろう。」
(まだしばらくは気長に続きます)