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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ベキ法則下の企業活動 - 中間まとめ

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「The World Is Flat」をようやく読み終わりました。とにかく読む価値のある本です。これから読む方もいらっしゃると思うので、具体的な内容にはあまり触れずに、以下を記します。

非常に荒っぽい理解ですが、以下の5冊は根っこで通底する現象を取り扱っています。

「新ネットワーク思考」(アルバート・ラズロ・バラバシ著、NHK出版)
「情報社会学序説」(公文俊平著、NHK出版)
「人生を成功させるための『80対20』革命!」(リチャード・コッチ著、ダイヤモンド社)
「ウェブ進化論」(梅田望夫著、筑摩書房)
「フラット化する世界」(トマス・フリードマン著、日本経済新聞社)(厳密に言うと邦訳はUpdate版をベースにしており、自分が読んだのは初版ですが、細かいことはこの際無視)

スケールフリーネットワークの原理を「新ネットワーク思考」が説明し、「情報社会学序説」で考えが深められ、実務面への適用を「人生を成功させるための『80対20』革命!」が講釈し、特にインターネット空間の現象に着目して「ウェブ進化論」が書かれ、グローバルな人と企業と社会との変化を「フラット化する世界」がレポートしているという具合です。
自分からすると、スケールフリーネットワーク化する状況で企業がどのように振舞うべきかを書いているという意味で、「ライフサイクル・イノベーション」(ジェフリー・ムーア著、翔泳社)も隣接領域を扱う本のように思えます。

以下、簡単にまとめてみます。

・「フラット化する世界」を読む限り、スケールフリーネットワーク化する世界は、万人の万人に対する闘争でぎすぎすするような空間ではなく、多様性が無限に醸成されていく豊かな空間である。企業活動においても、世界規模で競争が激化すると捉えるよりは、世界規模で多様な主体との協業が可能になると捉えるべきである。企業の戦略のオプションは飛躍的に増大する。(戦略のオプションが増えると言うことは、リアルオプションにより、企業価値がいや増しに増すということでもある)
・そもそも自己組織化によってネットワークが拡大していく(=スケールフリーネットワーク化する)ということは、本来的に多様性が増すということ。
・個々のスケールフリーネットワークを取り出してみることができるなら、そこにおいてロングテール現象が出現するのは不可避。
・けれども、現実的な生活や商売の空間は、単一のスケールフリーネットワークだけでできあがっているわけではない。多種多様なスケールフリーネットワークが分かちがたく絡み合ってできている。そして、個々のノード(人および企業)は必ず複数のスケールフリーネットワークに属して活動している。従って、あるスケールフリーネットワークにおいてはアマゾンに対する小規模書店のような存在であったとしても、別なスケールフリーネットワークにおいてはアマゾンのようにスペシャルな存在でありうる。
・売上高などの規模の話はおいといて、人と企業は、このフラット化する世界において、スペシャルな存在を目指すのが賢い。
・自らがスペシャルであれば、世界中のどこかで相互補完できるスペシャルな存在が必ず見つかるので、そうした相手と協業するのがよい。
・ただし、世界は諸主体が絶えず刺激しあって速いペースで変化していくので、スペシャルたるゆえんのもの、すなわちコアがいつまでもコアであり続けるとは限らない。
・そこで「ライフサイクル・イノベーション」で説明されているコア/コンテキスト分析のような仕訳と、その後にコアに集中的に資源を配分する方策が必要になる。企業においても人においても、それは言える。
・平たく言えば、コアに関する「工夫」(イノベーション)と「勉強」(研究開発)が必要だということ。
・それをさぼっていると、コモディティ化の海に飲み込まれてしまい、すごくつまらない思いをする。

こんなところでしょうか。「日々の精進を怠らない」という、日本のごくごく伝統的な考え方に落ち着くようです。

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