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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

勉強が好きな人になろう(ベキ法則下の企業活動-その10)

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「The World Is Flat」(邦題「フラット化する世界」)の終わりの方を読んでいたら、ジェフリー・ムーアが「ライフサイクル・イノベーション」(栗原潔訳)などで主張しているコアvsコンテキストとまったく同じことを言っていたのでひどく驚きました。

そろそろ書店に出回る邦訳を買われる方もいらっしゃるかと思いますので、ネタばらしにならぬように、引用などはやめておきますが、第10章で、企業の業務内容のX線写真を撮ってコアを分析し…というふうな記述があります。

ジェフリー・ムーアがコアvsコンテキストの分析が必要だと主張しているのは、企業の人、モノ、金、時間という資源が有限だからです。(以前にも少し書きました)
常にコモディティ化の波に洗われる現在の経営環境では、自社自体がコモディティにならないようにするためには、顧客や市場にとって非常に価値の高い、他社が追随しえない何かを継続的に生んでいかなければなりません。それを生むことのできる能力がコアです。
コアの定義の厳密さ関しては議論がありますが、ここではそれはおきます。(また、プラハラードらが過去に言っていた「コア・コンピタンス」とは、特に時間による変質の概念が入っているという意味で異なります)

コアは放っておくとコンテキストになります。これがムーアの主張のユニークな点です。

従って、自社の企業価値がコモディティ化の波にさらされないためには、新たなコアを形作る必要がある。しかし資源は有限である。従って、自社がコンテキストに投入している資源は、何らかの方策によって、うまく現在のコアおよび次代のコアになりうるものに振り向けなければならない。そのサイクルをずっと回し続ける必要がある。うまずたゆまず切磋琢磨というところですね。

そのように有限の資源を常に新たなコアの方に集中させることによって、企業は絶え間ないコモディティ化の波にもびくともせず、ユニークな企業として立ち続けることができる。と、そんなロジックです。

これとほぼ同じことをトマス・フリードマンも述べています。(そして彼の場合、個人がこのスケールフリーネットワーク化しつつある環境でユニークな価値を保つ場合に、その種のことが必要になるということも重ね合わせているのが興味深いです)

個人的にこの文脈で思い起こすのが、ドラッカーの以下の文章。

-Quote-
イノベーションを経営管理者にとって魅力的なものにするための第一の段階は、もはや活力を失ったもの、陳腐化したもの、生産的でなくなったものの廃棄を制度化することである。
スタッフ活動についてはもちろんのこと、一つ一つの製品、工場、技術、市場、流通チャネルの継続の可否についても、三年ごとに判定しなければならない。
これまで手がけていなかったとして、「今日これから、この製品、市場、流通チャネル、技術を手がけるか」を問わなければならない。答えが「ノー」であれば、「それでは検討しよう」ではなく、「それでは、この製品、市場、流通チャネル、スタッフ活動に資源を浪費するのをやめるにはどうすべきか」を問わなければならない。 
     ---中略---
実はこれは、あらゆる種類の組織が、自らの健康を維持するために行っていることである。いかなる有機体といえども、老廃物を排泄しないものはない。さもなければ自家中毒を起こす。
     ---中略---
イノベーションを行うためには、イノベーションに挑戦できる最高の人材を自由にしておかなければならない。同時に、資金を投入できるようにしておかなければならない。
    「イノベーションと起業家精神」
-Unquote-

ドラッカーは、企業は「老廃物を排泄」しなければならないと、かなり刺激的な言葉で述べていますが、やっぱりそうなんでしょう。この言葉がストレートにリストラや人員整理を指すものでないことは、賢明な方ならご理解いただけると思います。

これまでコンテキストの部分に携わっていた人がコアを受け持つようになるためには、一にも二にも勉強と新たなスキルセットの習得が不可欠です。コアvsコンテキストは、企業にあっては資源の割当の問題ですが、そこで働く人にとっては、学習とトレーニングの問題であることがわかってきます。

その延長で考えると、産業界のコアvsコンテキスト的なアプローチおよび継続的なイノベーションは、ものすごいボリュームの人材教育措置によって支えられていくのだということが言えます。人材教育関連株は買い。なんちて。(こんなことを書くとまた株価操作だなどとコメントが入りそうですが、自分の場合、シャレ半分に過ぎないことはおわかりいただけると思います。しかし人材教育関連が21世紀の超成長産業であることは間違いありません。事業戦略と人材資源割当とを連動させるという意味で、ITをどう使いこなせるかがキー)

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