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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

大貫妙子ゴールデンイヤーズ

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大貫妙子の楽曲のうち、自分が好きなものはほぼ例外なく坂本龍一が編曲したものだったということに気づき、あーと思った。坂本龍一は個人的に言ってもっとも遠ざけたいアーティストの1人。なぜかは言わない。それでも編曲はすごくよかったりするので、適材適所というところか(あー言っちゃった)。

「夏に恋する女たち」。この曲は何かのTVドラマの主題曲になった(ぐぐってみるとTBSの同名のドラマ)時期から延々聴き続けているが、やっぱり飽きない。イントロのサックスの音を聴くと、幾年か前の夏の五反田だの豪徳寺だのの夜のにおいがすっと甦って消える。
~光の海で、Leve toi et viens avec moi~の「Leve toi et viens avec moi」はたぶん、日本の詩人によるフランス語の詩としては当代随一、空前絶後だと思う。2回繰り返されるのがまたいい。
「宇宙みつけた」。これは確か、小林克也が司会をしていた教育テレビの18時台の番組の主題歌だったと思う。数年してやたらといい歌だということに気付き、今日に至るまで定番となっている。ボーカルを気持ちよく再生するセットで聞くと、声が輝いて弾んで澄んだゴムまりのように聴こえる。大貫妙子の最高傑作かどうかはわからないが、真骨頂ではあると思う。
「ピーターラビットとわたし」。これは確か「みんなの歌」ではなかったか。なぜ覚えているんだろう。歌としての完成度が高い。叙情に流されず、メッセージ性に溺れず、表現主義に傾かず、ハイブロウを狙わず、時代性や都会性や音楽性や個性を追い求めない。これこそがポップミュージック。その鑑とも言える佳品だと思う。
「雨の夜明け」。自分はいまこれを「History 1978-1984」で聴いているので、比較的近年の再録なのか、元盤の「ロマンティーク」に収録されていたバージョンなのか判別がつかない。でも悔しいことにものすごくよく、「History 1978-1984」のクレジットでは坂本龍一編曲になっている。「ロマンティーク」は聴いていました。81年の夏頃か。ひと様のレコードで。何度も。いま改めて聴くと結局このへんが大貫妙子のすべて中のすべてかと思う。そして極め付けが次。
「最後の日付」。もうなーんも言うことありません。聴いてください。これが大貫妙子中の大貫妙子。この「History 1978-1984」に入っているのはたぶん、初回録音バージョンではないかと思う。「AVENTURE」。これも聴いていました。やはりひと様のレコードで。何度も。
大貫妙子の生の声が持っている若干ハスキーで、どこぞの女子高校の合唱部のあまり声が出なさそうな生徒の声風で、東京っぽく(都立高の生徒たちがつるんでる雰囲気)、パルコが文化を標榜する前の、何も荒らされていない、素の良質のアマチュアポップミュージックカルチャーの伸び伸びとした透明感がたまらない。

「雨の夜明け」と「最後の日付」はエンヤの最盛期の最良の楽曲にも勝るとも劣らない初々しさと純度を備えた名曲だと思う。「ロマンティック」(80年)「AVENTURE」(81年)の頃の坂本龍一というとYMOの活動が軌道に乗り始めた頃で、さぞかし忙しかろうと思うのだけれど、大貫妙子の編曲はまったく手を抜かず、往時のユーミンの松任谷正隆の編曲よりもちと冴えがあるのはさすがかと思わせるレベルの高いものになっている。たぶん、大貫妙子が持つある種の作家性が、世界で最高の編曲家にも成り得た、音を色彩あふれる形態として構築していく才能を刺激したんだと思う。

坂本龍一に再度ご登場いただいて、大貫妙子の第二期ゴールデンイヤーズがそろそろ始まってもよいように思いますが。どうでしょうか?

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