サービスサイエンスを形作る形成的アプローチ
「サービスサイエンス」という概念把握の枠組みがひとつできてしまうと、見るもの聞くものをすべてそれに引き寄せてみたりということになります。
「イノベーションのジレンマ」はつくづく名著だと思っていますが、以下のくだりなんかを読んでも、
「目標管理」、「例外管理」などの理念は、マネージャーの注意を一点に集中させるため、新しい市場の発見を妨げる場合がある。通常、このようなシステムでは、業績が計画を下回ると、マネージャーは、計画と現実の差を埋めようとする。つまり、予想外の失敗に神経を集中するようになる。しかし、ホンダの北米オートバイ市場での経験が示すように、破壊的技術の市場は、たいていの計画システムでは上層部の注目を集めることのない、予想外の成功から現れることがある。そのような発見は、人々の声に耳を傾けることによってではなく、人びとがどのように製品を使うかを見ることによって得られることがある。
その「見る」ことの方法論確立が、たぶんサービスサイエンスが向き合うべき1つの課題だったりするのではないか、などと思ってしまうわけです。
素人の聞きかじりの私から見ても、サービスサイエンスの領域は広大だということがわかります。
shibaさんの投稿「Service Science Organization in EU」にリンクされている資料をざっと読むと、欧州の取り組みは昔(新潮社「複雑系」に記述されている時代の話しか知らないので)サンタフェ研究所で行われていた複雑系のアプローチにかなり近いように思えます。
ものすごく野心的な試みであり、ロングジャーニーになりそうな雰囲気ですが、それをあえてやろうとしている人たちがいるということに感銘を覚えます。(参加者のなかにひとり日本人と思われるMari Sako教授がいらっしゃいますね。)
この広大な領域では、おそらく、全体をまず階層化してその後統合するということをどなたかがやられないといけないのではないかと、素人ながら思っています。
例えば、企業が新しい価値を作っていく際に、顧客との協働が不可欠な時代に入りつつありますが、その企業と顧客とのインターフェースの部分で、顧客をモニタリング/センサリング/単純ウォッチする方法論だけでも、ものすごい深みがあり、ここを集中的に攻める人は、それだけで手一杯になってしまうと思われます。
サービスサイエンスの枠組みのなかでこの仕事を行うには、サービスサイエンスの体系にうまく自分を接続するするためのプロトコルが不可欠で、そうしたプロトコルが上述の「全体をまず階層化してその後統合する」作業のなかからもたらされると思います。でないと業績がばらばらになってしまうのではないか。とまぁ素人考えです。
そんなことをつらつら思いつつ、stage_gate_analysisさんからいただいたTB「サービスサイエンスが成功するための3要件」を読むと、特にそのリンク先にある「技術経営・サービスサイエンスにおける形成的なアプローチ」では、次のように書かれています。長くなりますが。
研究・技術計画学会の第20回年次学術大会における平澤先生の特別講演では,形成的なアプローチに関する提言があり,たいへん興味深かった.ここで,「形成」とはシンセシスのことであり,分析/アナリシスと対峙する言葉である.
研究・技術計画学会で扱っている研究(特に,筆者が興味を持っている技術経営・サービスサイエンスに関する研究)においては,分析的アプローチではなく,形成的アプローチが必要である.すなわち,唯一の解(真実)は存在しないという前提に立ち,事実との論理的整合性と有用性を担保として仮説検証サイクルによりモデルを進化させていくアプローチである.学問体系としては,そのアプローチを支援する道具(概念や方法論のセット)を整備すべきだとしている.
「形成」、しっくりくる言葉です。「唯一の解(真実)は存在しないという前提に立ち,事実との論理的整合性と有用性を担保として仮説検証サイクルによりモデルを進化させていくアプローチ」←いいですね。IDEOがやっている方法論としてのプロトタイピングに近いでしょうか?
全体構造の階層化や統合を行うとしても、具体的な作業は形成的なアプローチになるように思います。