ビジネス方法特許の代わりに著作権法を使う-その3
この問題については、まだ、態度を決めかねています。
その後、GNU General Public Licenseとクリエイティブ・コモンズを少し調べてみました。また、遅ればせながら「コモンズ」(レッシグ)も手に取り、半分ぐらいまで読んだところです。
どちらかと言えば、GPLに惹かれます。生態系の精妙なメカニズムにぼーっと見とれてしまうような、ものすごく魅力的な要素を持っており、その末席に連なることができるとすれば、非常にすばらしいと思います。
クリエイティブ・コモンズの方は、僭越ながらまだ若いというか、歴史でもって効果が実証されている仕組みとは言えないところがあります。2003年9月の論考になりますが、八田真行氏が「『オープンソース的著作物』は可能か」で指摘している、コラボレーションがほとんど見られないという点は、いまでもまだ認められるのかなと。
これがまだ初期段階にあるから起こる現象なのか、それともクリエイティブ・コモンズが持っている特性に起因したものなのか、私には論じる知識がありません。ただ、惹かれる惹かれないで言えば、GPLの方だということです。(単に好き嫌いだけでものを言っています。)
それはそうとして、「コモンズ」は、インターネット空間で知的な価値のあるものを流通させる際に検討しなければならない問題の整理に非常に役立つ本です。知的な有用物を、特にネットワーク空間で共有することにどのような意味があるか、そこに独占的な権利を設定することの是と非とはどんなものか、知的な有用物を基にしたイノベーションが連続的に生成するためにはどのような条件が必要か、といった点について、明快に整理してくれているので、その意味ではよい本だと思います。まだ半分しか読んでいないので、どこに連れて行かれるのかわからず、最終的な評価はできませんが。
私がGPLとクリエイティブ・コモンズに興味を持ったのは、私が考案した新規事業案複数に関して、①他者が同内容の事業案でビジネス方法特許を出願することを防ぐ目的で、こちらから先んじて事業案内容をインターネットで公開し(公知になってしまうため他者の特許が成立しなくなる)、かつ、②資本力のある企業が、公開された私の事業案を模倣して事業を展開することを防ぎ、さらには、③事業化の権利をこちらが許諾した主体に認めることが可能、という状況を実現するために、どちらかが使えればと考えたからでした。
けれども吟味してみると、GNU General Public Licenseは言うまでもなく、ソースコードに最適化されたライセンスであり、その派生物であるGNU Free Documentation Licenseも文書一般に適用するように作られたライセンスであって、文書として存在している事業案については完璧にGNU Free Documentation Licenseが利用できるけれども、その事業案を現実に展開・実施して事業をどしどし行っていく権利(以下、事業化権)は守ってもらえる仕組みになっていないということがわかります。
ちなみに特許法では、事業化権を、実施権という言葉で記述してますね。
クリエイティブ・コモンズも同様で、こちらは特に日本の著作権法と完全に整合性を持つように調整されていますからなおさらですが(著作権法では事業化権ないしそれに類する権利は守られない)、事業化権を守ってもらえる仕組みにはなっていません。
(このへん、そういう解釈でよいのでしょうか?どなたか専門家の方、ご教示いただければ幸いです)
好き嫌いで言ったら、GNU Free Documentation Licenseを使いたいところなのですが、どちらを選んだとしても、一番避けたい、資本力のある企業による模倣から守られない枠組みになっています。
たとえば、Googleのこれ以上の伸張を本気で防ぎたいと考えた事業者がいるとして、彼らがやりそうなことに先手を打って、GNU Free Documentation Licenseかクリエイティブ・コモンズのライセンス方針の下にインターネットでその事業案を公開(彼らにとっても公知となりうるサイトで、かつそういう言語で)したとしても、彼が特許を取得することは防げるかも知れませんが、事業化することには何ら歯止めがかけられないわけです。
そういう状況なので、もう本ブログで、#1モバイルプロファイル、#2カスタマーアライブ、#3KAIZENエンジンの中身を公開してしまっているけれども、これを後追いで、「xxxxxxに基づいたライセンス方針でもって、本事業案の帰属を明示する限りにおいて、事業化を認める」などと謳えないわけです。残念ですね。
本トピックはもう少し続けます。