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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ヤフオクオーディオ取引顚末記-その2

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 ヤフオクで特定ジャンルの商品の売買を精力的に続けていると、おそらく誰であっても、市場メカニズムの何たるかを深く理解するようになると思います。すなわち、価格形成メカニズム、情報が価格に与える影響(過去の落札価格情報と、当該商品関連情報の2種類ある)、買う側が負うリスク、素人商売の限界、市場参加者の信用の重要性、そして、流動性についてです。

 ヤフオクでは多種多様な商品が売り買いされており、他のジャンルの商品では別種の市場特性が明らかになるのかも知れませんが、私の場合は、とりあえず中古オーディオ機器に限定して話を進めます。

 

オーディオ機器は、“それがなくても生きていける商品”の典型で、まぁぜいたく品に属します。その意味で、仕事に使うパソコンや、移動の実利を提供するクルマなどとは一線を画します。

なかでも、中古オーディオ機器は、マーケティングや流通機構が確立されている“新品”に比べて、元々のメーカーが関与するマーケティングはないに等しい、流通機構はジャングル状態だ、という特徴があります。つまり、まともな企業プレイヤーが近代的な経営の観点で営業効率や利益率を考えて売買を行うという動きは一切なく、売り手と買い手のバトルロワイヤルにも似た、自然発生的な売り買いがその都度生じるという状況にあります。そこに、ヤフオクがすこーんと現れました。

 念のため、商品ジャンルとしての中古オーディオ機器が持っている特徴をすこし挙げてみます。

1.      

個体ごとにコンディションのリスクがある。

中古CD、中古DVD、古本などは、ネットショップやネットオークションで購入しても、コンディションの良し悪しにさほど開きはなく、よほど悪くてもコンテンツそのものが楽しめないということはまずありません。

中古オーディオ機器の場合、販売から何年経過しているか、出品者は何番目のオーナーか、喫煙者がオーナーだったことがあるか、過去オーナーは丁寧に扱っていたか、熱やホコリなどで劣化していないか等々の条件が11台でまったく異なるため、コンディションはほんとうに千差万別です。また、見た目はきれいであっても、内部のコンデンサなどが経年劣化でダメになっている場合もあります。

ヤフオクの出品欄の記述と写真だけでは、「この個体はどの程度ダメになっているか?」、言い換えれば、「オレはこの個体を買う際にどの程度のリスクを負うことになるのか?」ということが非常にわかりづらく、最高価格をつけて落札する行為は、常に冒険でもあります。

2. 深い満足感に関わる商品である。

 オーディオマニア=音楽マニアということにはならないようですが、少なくともオーディオにそこそこ凝る人は、美音を愛でます。美音の定義や基準は人さまざまとしても、オーディオ機器をいくつか買ってつなげて鳴らしている人は、タイプA「これが美音というものだろう」、タイプB「いつかは美音を実現してやる」、タイプC「美音探求中につき、ぼくにその定義を聞かないで」のどれかに属します。

ヤフオクで中古オーディオ機器を購入するのも、それによって美音を出して深い満足に浸るためです。落札できた価格が数千円であれ数十万円であれ、落札した瞬間は、「これでオレの美音生活がますます豊かになる」というものすごい期待で胸がはちきれんばかりになっています。

したがって、送られていた機器が何らかの原因によって、かすかに音が歪んだり、時々ビリビリ言う音が出たり、ステレオ音像に乱れがあったりといったことがあるとすれば(いずれもオーディオ機器にはあるまじき大欠陥です)、深い満足感は一瞬にして崩れ落ち、「この非美音を出すあるまじき個体!」という深い深い不満足感に変わってしまいます。

通例、ヤフオクの中古オーディオ出品者は私を含めてオーディオの素人であり、音の良し悪しがわからない人が6-7割ぐらいいます。古いピアノを鳴らしてみて、「あ、この音びびってる」と感じる程度の耳もないような人であっても、比較的安易に「完全動作品です」と出品してくるので、すごく厄介です。

3.       複数の機器を組み合わせて楽しむものである。

オーディオ機器は最小限の構成であっても、CDプレイヤー、プリメインアンプ、スピーカーの3種が揃わなければ音が出ません。各機器はそれぞれ分化発展の途上にあり、たとえば、CDプレイヤーがCDトランスポートとデジタルアナログコンバーター(DAC)の2つに分かれて高級品なら各50万円、プリメインアンプがプリアンプとパワーアンプの2つに分かれて一級品なら各80万円、といった風に、組み合わせる機器は多々あります。

 組み合わせている機器を1つ取り替えただけでも、音がまったくよくなるということがあるため、組み合わせを変化させながら、自分の狙った音に近づけていくという行為が楽しみになります。

 したがって、投下資本が限られているなかで、多種多様な機器を取り替えて聴く機会が与えられれば、オーディオマニアは喜びます。ヤフオクができてはじめて、その楽しみを自分のものにしたという人は少なくないと思います。

 4. 発売時は比較的高額品である。

オーディオ機器はどの水準からまともなものと言えるか?議論もあることでしょうが、単体の機器で発売当時定価が20万円以上がひとつの目安だと考えています(スピーカーの場合は2本で40万)。CDプレイヤー、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカー2本を揃えると、まぁ100万円程度。このぐらい出さないと、オーディオだなぁという音にはなりません。 

現実に、ヤフオクでそこそこの入札者を集める中古機器は、発売当時定価が20万円前後というのがすごく多いです。前回書きましたが、「発売時定価総額が150万円を超えるあたりからハイエンドの音がし始める」というのはまったく事実であり、そのひとつ前のレベルが発売当時定価総額が100万円というところ。

こうした高額品をヤフオクで揃えると、モノが中古ですからかなりお安い水準で大丈夫になる。これは大きいです。ただ、お安くなりやすいブランド(DENONなど)と、あまり安くならないブランド(アキュフェーズなど)とがあります。

 5. 数多くコレクションして意味があるジャンルではない

 実はある時期、プリアンプが6台程度、パワーアンプが5台程度、それからCDプレイヤーが3台、スピーカーがでかいの中ぐらいの合わせて4セット、その他もろもろで計30台近い中古オーディオ機器が自分の部屋であふれかえっていました。

 どれもまぁ13万円程度でお安く買えたものばかりですが、調子こいて、いろいろ組み合わせる実験と称して何台も買い込んで多種多様な組み合わせを試していました。

 で、結局、悟ったのが、多数の機器を買い込むなら発売当時定価が一番高いのに絞り込めということでした。オーディオはほんと価格が音に如実に現れる世界です。これは、オーディオ機器が本来は楽器であり、パーツに高級品を使えばよほどダメな設計でない限り、素直によい音がするということから来ています。

 機器が何台あっても、鳴らすことができるのは1つの組み合わせだけであり、ミニカーのように何百台も集めて、その台数の多さによって喜びが増すという商品ではありません。

取引的には、何かを買う場合には、何かを売ることが想定されているということが多いわけです。つまり、ヤフオクで繰り返し売買している人は、上述の美音追及のため、売りつつ買う、買いつつ売るということをやっています。このへんは株でリターンを稼ぐというのに多少近いです。

 本論に入れませんが、今日はこのへんで。

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