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デジタル教科書に関する取り組みについて(まとめ)

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ここ数カ月、デジタル教科書に関する議論が活発化しています。

最近の動向について、少し整理をしてみたいと思います。

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DiTT デジタル教科書教材協議会    
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7月27日に、DiTT デジタル教科書教材協議会 の設立総会が開催されました(メディア取材実績一覧)。幹事会員19社、一般会員51社の計70社が参加しており、今後も会員を募る予定、デジタル教科書を推進する団体としては、最も大きな団体といえるでしょう。設立総会の模様は、「USTREAM」等から確認することができます。

本協議会では、課題整理、政策提言、ハード・ソフト開発、実証実験及び普及啓発を進め、政府(文部科学省、総務省等)とも連携して活動を推進するとしています。協議会が目標としているのは、

  • 全ての小中学生がデジタル教科書・教材を持つ環境を整える。
  • その実現を図るためのコンソーシアムを形成し、課題整理、政策提言、      
    ハード・ソフト開発、実証実験、普及啓発を進める

が中心となります。そして、活動概要としては

  • 推奨スペックの検討      
    オープンに議論しつつ政府と連携し、標準ガイドラインを策定する。
  • 実証研究      
    ガイドラインを検証するため、数校で実証し、商用ベースへの展開を図る。
  • 普及啓発      
    家庭向け、学校向けの普及啓発を行う。
  • 政策提言      
    教育政策、情報通信政策等について政府・自治体等への提言を行う。

となっています。

デジタル教科書・教材の背景と求められる機能」や「デジタル教科書・教材の3つの目標と 10 の条件(試案 )」の内容も要チェックです。

政府についても、文部科学省や総務省が中心となって、デジタル教科書や教材そして、ICTを活用した教育のあり方などについて検討が進められています。

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○文部科学省      
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文部科学省では、今後の学校教育(初等中等教育段階)の情報化に関する総合的な推進方策について有識者等との意見交換等を行うため、「学校教育の情報化に関する懇談会」を開催し、7月末時点で、既に8回の懇談会が開催されています。 

7月28日に開催された第8回の懇談会では、「教育の情報化ビジョン(骨子) 」が公表されています。21世紀にふさわしい学びと学校教育の情報化においてポイントとなるのは、以下のとおりです。

  • 情報教育 ・・子どもたちの情報活用能力の育成
  • 教科指導における情報通信技術の活用 ・・わかりやすい授業の実現
  • 校務の情報化 ・・情報共有によるきめ細かな指導。教育の校務負担軽減

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教科指導における情報通信技術の活用においては、

  • 指導用デジタル教科書
  • 学習用デジタル教科書の開発、情報端末
  • デジタル教材
  • 超高速の校内無線LAN環境の構築 
  • 電子黒板、プロジェクタ、実物投影機、地上デジタルテレビ等の提示用デジタル機器の活用

があげられています。

デジタル教科書には、「指導用デジタル教科書」と「学習用デジタル教科書」に分けられています。現在、教科書発行者から発行されているのは、いずれも「指導用デジタル教科書」で教科書に準拠しているものの、法令上は教科書とは別の教材に位置づけられているとのことです。「指導用デジタル教科書」の特徴としては、教科書の内容を引用しつつ、任意箇所の拡大や任意の文書の朗読、動画など、わかりすい授業を実践できるような機能が盛り込まれています。今後は、これらのさらなる開発や、学校設置者が容易に入手できる仕組みが必要であるとしています。「デジタル教科書」の普及においては、まず、教師が自らが使いこなせるということが大前提となるのではないでしょうか。

また、「学習用デジタル教科書」では、さらに踏み込んだ内容が記載されています。主なポイントは以下のとおりです。

  • 協働的な学びを創造すつための子ども一人ひとりに学習ニーズに柔軟に対応でき、学習履歴の把握・共有等を可能にする
  • 求められる機能の例として、インターネット接続により、教職員や子どもたちなどとの双方向性が確保されること、子どもたちの書き込みがネットワークを介して共有されること、教員が子どもたち一人ひとりの学習履歴を把握できること
  • 学校種、発達の段階・教科に応じた教育効果や指導方法、必要な機能の選定・抽出、実現するための規格、モデル的なコンテンツ開発、供給・配置方法など
  • 子どもたちの健康への影響の有無や健康に配慮した使用や活用方法、障害のある子どもたちについての障害の状態や特性・ニーズへの対応等

等について検討を進めることが重要であるとしています。

また、「デジタル教科書」実現するためには、子どもたち、一人ひとりに情報端末環境を整備することが重要な鍵となるとしています。

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○総務省    
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総務省は、昨年12月に「原口ビジョン」を公表し、フューチャースクールの推進において、デジタル教科書を全ての小中学校全生徒に配備(2015年)」という内容が盛り込まれています。

5月に公表された「原口ビジョンⅡ」では、「デジタル教科書」は使わず、「デジタル教材(電子教科書)」という表現にしています(関連ブログ)。

また、総務省では、5月24日「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」を開催し、6月1日に開催された第一回の研究会では、フューチャースクール推進事業の実施スケジュール(案)が公開されています。

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また、総務省は、8月6日に、「フューチャースクール推進事業」の実証研究に係る請負先と実証校の決定を公表し、東日本エリアの請負先がNTTコミュニケーションズ、西日本の請負先が富士通総研となっています。今年度中に、東日本と西日本エリアで5校、合計10校での実証実験が実施され、3月末にはガイドライン策定や報告書を提示するといった、スケジュールとなっています。

IT戦略本部が6月22日に公表した「新IT戦略」では、教育分野の工程表が示されており、デジタル教科書などについては、文部科学省、総務省による連携施策であることが、伺えます。

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○その他の団体の活動について
    
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デジタル教科書については、世間の関心度が高く、様々な団体がデジタル教科書に関する研究会や勉強会などを立ち上げています。例えば、「みんなのデジタル教科書教育研究会」や「デジタル教科書・アナログ読書研究会」などがあげられます。

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○まとめ   
--------------------------------------------------------------------------------------   以上、デジタル教科書をどちらかというと推進する立場にある取り組みを紹介しました。一方、明治図書オンラインでのデジタル教科書の導入の是非に関するアンケートでは、反対が64.1%となっており、私もPTA活動などで、学校の先生やPTA、そして保護者などに話をお伺いする機会があるのですが、総じて、肯定的ではないような印象をもっています。

いずれにしても産官学一体となった取り組みが必要ですが、どうギャップを埋めて、導入を進めていくのか、今後のデジタル教科書の動向からは目が離せません。

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