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あれこれ考えるよりも作ってしまった方が早いんじゃね?と思う、ギークなサラリーマンのアジャイルな日々。

ハックされる公職選挙法とその脆弱性について 選挙ポスター問題から考える(1)

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昨年の都知事選挙において、特定政党が非常に多くの候補者を擁立し、選挙ポスターの掲示場の枠を販売したりした問題は記憶に新しいかと思います。

こういったセンセーショナルな出来事が起き、かつ、政府や行政などの体面を汚されるようなことになると、決まらない変わらない国政の世界の対応もとてもスピーディーに動きます。いつぞやの官邸ドローン事件やドローン少年事件のときもそうでしたが、今回も事案の再発を防ぐための公職選挙法(公選法)改正案が今年の4月2日にあっという間に可決成立し、5月2日に施行されました。本年6月に控える都議選や、7月に予定されている参議院選挙に間に合う形で施行された改正公選法ですが、これでNHK党などが行ってきたいわゆる選挙ハックは全て防げるのでしょうか?

残念ながら、それは難しいと思います。

なぜならば、ITシステムで言えば、今回の改正は一部の攻撃手法について対症療法的にバッチを当てただけのようなもので、システム全体の脆弱性は全然変わっていないからです。

その脆弱性を突いたハックが先日もTBSの報道特集で取り上げられていました。

そもそも、NHK党がいわば炎上マーケティング的にやっているような選挙ハック、公職選挙法の抜け穴探しや規制の無力化は、昔から既存政党や選挙コンサル、業者が地道に行ってきたことで、どんどん公職選挙法は骨抜きにされ形骸化されています。

例えば、裏打ちポスターの禁止

盛岡市選挙管理委員会が作った以下のイラストのように、基本的にベニヤやプラスチック板、それに類するようなものを使って個人や後援団体の政治活動用ポスターをフェンスなどに固定して表示することは、公職選挙法143条で禁止されています。

裏打ちをして掲示することはできません。いわゆる「野立て看板」による掲示もできません。後援団体の構成員であることを表示するために掲示することはできません。

また、選挙事務所や後援団体の連絡所等の看板を、事務所の実態のないところにはおけませんし、

規格外(大きい)のものは掲示できません。事務所のない場所に掲示できません。証票のないものは掲示できません。

選挙前に候補者本人の氏名の入ったタスキをかけたり、のぼりを立てたり、立て看板・立札等の掲出も禁止されています。

街頭で氏名入りの「たすき」を使用することはできません。街頭で氏名入りの「のぼり」を使用することはできません。街頭で氏名や写真入りの看板を使用することはできません。

あれれ?

こういうの選挙前数か月くらい、あちこちで見るんだけど、どういうこと???

政治家はみんな違法なことをしているの???

実際に違法なことをしている政治家もいますが、ほとんどのケースは、選挙管理委員会や警察に言っても完全にクロ判定にはなりません。

それはなぜか?

政治家や選挙参謀・コンサル、選挙のための資材を提供する会社などが長年をかけて公職選挙法の条文の抜け穴や抜け道を探してそれをノウハウ化してきたからと、それを取り締まる側が事なかれ主義で全く取り締まりに動かないからです。

たとえば裏打ちポスターと思われるものを街中で見掛けたときに、それが違法じゃないか?と選挙管理委員会に聞いたとします。

すると大抵のケースでは以下のような回答があります。

裏打ちされた個人の政治活動用ポスターの掲示は禁止されますが、政党の政治活動用ポスターについては、公職選挙法第143条16項の規定外となります。

ここで政党の政治活動用のポスターとは何かというと、二連ポスター、三連ポスターと呼ばれるような、公職の候補予定者とは別の有名な政治家などと一緒に顔と名前が載っているポスターのことで、あくまでXX党が主催する討論会や演説会の登壇者・弁士として候補予定者を含む人を紹介している体を取っています。

でも今回見たポスターは、どう見ても、フェンスに括り付けられている板に貼ってあるのは政党や政治団体の政治活動用のポスターではなく、個人のポスターです。完全に違法やないかーいって言うと、

政党の掲示板などは、規制の対象外なので、政党の掲示板として運用されているのであれば規制の対象外です

と、いう回答があります。

つまり、個人ポスターを貼る前に、政党掲示板という体で、ベニヤでもプラスチック板でも防水厚紙でもなんでもよいからフェンスに予めつけておけば、あとから見た態様、外形的に裏打ちポスターとして見えているものでも、違法では無いと言うのです。

いやいや、そんなこと言ったらこの世の全ての裏打ちポスターは後からでも言い訳がついてしまうことになるやないかーい!

でも、それが現実なんです。

公職選挙法って実はほとんどが骨抜きにされているし、守られていないし、取り締まりも積極的にはされていないのです。

じゃあなんで今回みたいな規制で改正がすぐにできるんだったら、骨抜きにされないようなものにしたり、そもそも守られていない条文ならそれを無くさないの?って思うじゃないですか。

今回、いろいろ調べていくと、

その理由もうっすら分かってきたので、次回以降、東京都や区の各選挙委員会、警察(所轄と警視庁本庁捜査二課)、総務省自治行政局選挙部選挙課などに問い合わせた内容なども含めて、解説していきたいと思います。

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