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「リスキリング研修」と呼ぶのは間違い? DX研修やデジタルリテラシー研修との本質的な違い

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「わが社でもリスキリングに取り組んでいます」

最近、多くの企業で聞かれるようになったこの言葉。しかし、その中身をよく見てみると、単なるITツールの使い方を学ぶ『デジタルリテラシー研修』であったり、あるいは変革の動機付けを目的とした『DX研修』であったりするケースが少なくありません。

これらの研修はもちろん重要ですが、「リスキリング」とは本質的に目的が異なります。言葉の定義を曖昧にしたままでは、研修の成果は上がらず、企業の変革も進みません。

この記事では、「リスキリング」「デジタルリテラシー研修」「DX研修」の違いを整理し、企業が本当に取り組むべき人材育成の姿を考えます。

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なぜ今「リスキリング」が叫ばれるのか? - ダボス会議からの警鐘

「リスキリング(Reskilling)」という言葉が世界的に注目されるようになったのは、2018年の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)がきっかけです。

同フォーラムの「仕事の未来レポート(The Future of Jobs Report)」では、AIや自動化の進展により、既存の仕事が失われる一方で、新たな仕事が生まれるという構造変化が予測されました。例えば、2020年のレポートでは「2025年までに8,500万件の仕事が機械に置き換わられ、9,700万件の新たな仕事が創出される可能性がある」と報告されています。

つまり、今ある仕事の延長線上でスキルを磨くだけでは、未来の仕事には対応できないのです。この大きな変化に対応するため、社会全体で「新しい職業に就くためのスキルを再習得させる=リスキリング」に取り組む必要性が提言されました。

この流れは日本も例外ではありません。日本政府は、成長分野への労働移動を促すため、個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針を表明しており、リスキリングは国を挙げた重要政策となっています。

目的が全く違う!3つの研修の定義を整理する

言葉の混同を避けるため、それぞれの研修が目指すゴールを明確に整理しましょう。

  • リスキリング研修

    • 目的: 事業構造の転換に伴い、新しい職務に就くために必要なスキルを習得させること。

    • 前提: 事業転換に伴う配置転換や組織再編など、具体的な人事施策とセットで実施される。

  • デジタルリテラシー研修

    • 目的: 現在の職務の生産性向上や業務改善のために、ITツールやデータの活用スキルを習得すること。

    • 前提: 個人の自発的な学習意欲に基づき、既存業務の質を高める。

  • DX研修

    • 目的: 企業の変革を牽引するマインドセットやリーダーシップを醸成すること。

    • 前提: 変革への動機付けや、行動を起こさせるための意識改革。

このように、3つの研修は目指す方向性が全く異なります。

なぜ「リスキリング」には配置転換が不可欠なのか?

デジタルリテラシー研修で新しいITツールを学んでも、現場に戻ってからの仕事がこれまでと全く同じでは、それは「リスキリング」とは呼べません。学んだスキルを活かすべき「新しい仕事」がなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。

リスキリングを成功させている企業は、この『人事施策との連携』を徹底しています。例えば、ある大手自動車部品メーカーの事例を見てみましょう。

【事例:大手自動車部品メーカー】

  • 背景: 自動車部品におけるソフトウェアの重要性が増大し、社内のソフトウェア・エンジニアが不足していた。

  • 目的: ハードウェア・エンジニアをソフトウェア・エンジニアへと転換させること。

  • 施策:

    1. まず、ソフトウェア開発を担う新たな組織を設立

    2. 既存のハードウェア・エンジニアの中から、新組織への転籍者を募集・選抜

    3. 転籍が決定、または予定されている社員に対して、ソフトウェア開発のスキルをゼロから教える「リスキリング研修」を実施。

この事例のように、「新しい仕事(ポスト)」を用意し、そこへの「人事異動」を前提として初めて、リスキリングは真価を発揮します。 研修と人事施策は、まさに車輪の両輪なのです。

「たかが言葉の問題」で済ませてはいけない

「DX研修」「デジタルリテラシー研修」「リスキリング研修」。これらは、同じ「研修」という名前がついていても、目指すゴールも、あるべき姿も異なります。

言葉の定義を曖昧にすることは、「たかが言葉の問題」ではすまされません。目的が曖昧なままでは、研修の達成目標を正しく設定できず、効果を測定することもできません。結果として、貴重な時間とコストを投じても、期待した人材は育たず、企業の変革は掛け声倒れに終わってしまいます。

言葉には、それが生まれた背景と、達成すべき想いが込められています。その意味を正しく理解し、自社の目的に合った施策を打つことこそ、研修担当者や経営者に求められる重要な役割です。

まずは、自社で『研修』と一括りにされている施策を3つの目的に分類し、それぞれのゴールを再定義することから始めてみてはいかがでしょうか。 あなたの会社の研修は、本当にその目的に合ったものになっていますか?

今年も開催!新入社員のための1日研修・1万円

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【第1回】 2025年6月10日(火) ※受付を終了しました
【第2回】 2025年7月10日(木) ※受付を終了しました
【第3回】 2025年8月20日(水)

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