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BYDが35%もの値下げを行った背景を中国語メディアで確かめた

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本日付ブルームバーグでBYDが大幅な値下げを行ったことが報じられました。

中国EV株が軒並み下落、BYDの大幅値下げで競争激化懸念広がる (2025/5/26)

引用

中国の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)による最大35%に及ぶ大幅値下げを受け、26日の香港市場では中国EV株が軒並み下落した。

BYDはそれでなくても安価で高品質なEVを市場に送り出していることで知られています。それがさらに一段階の値下げをするとはどういうことなのか?

背景を探ってみました。


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BYD大幅値下げの背景。中国語メディアのまとめ

比亚迪(BYD)が最近実施した大幅な値下げについて、中国語メディアでは以下のような背景が報じられています。

◎値下げの概要

2025年5月23日、比亚迪は「王朝网」と「海洋网」の両ブランドで、合計22車種の「智驾版(スマートドライブ版)」モデルに対して最大5.3万元(約110万円)の値下げを発表しました。例えば、「海豹07DM-i 智驾版」は、従来の15.58万元から10.28万元に引き下げられました。また、「秦PLUS DM-i 智驾版」は6.38万元から、「汉EV 智驾版」は15.48万元からの価格設定となっています

◎値下げの背景

1. 市場競争の激化と需要の低迷

中国の自動車市場では、吉利や広汽トヨタなどの競合他社が価格競争を強化しており、比亚迪もこれに対応する形で値下げを実施しました。市場全体の需要が低迷する中、価格競争が激化しています

2. 売上目標の達成と在庫調整

比亚迪は2025年の販売目標を550万台と設定しており、1~4月の累計販売台数は約138万台で、目標の約25%を達成しています。この目標達成のため、在庫調整を含めた積極的な販売戦略が求められており、値下げはその一環とされています东方财富网

3. 技術革新と新モデルの投入

2025年2月に発表された高階智驾システム「天神之眼」(英語名God's Eye)を搭載した21車種の投入により、既存モデルの在庫処分が必要となり、値下げが行われました主なGod's Eye搭載車種はこちら。

◎リスクと市場の反応

頻繁な値下げは、既存の顧客からの不満やブランドイメージの低下を招く可能性があります。実際、タイでは比亚迪の値下げに対して既存顧客からの苦情が寄せられ、政府が調査に乗り出す事態となりました美国之音

◎今後の展望

中国の自動車市場では、供給過剰と価格競争が続くと予想されており、比亚迪を含む各社はコスト削減や技術革新を通じて競争力の維持・向上を図る必要があります。特に、海外市場での販売拡大や新技術の導入が鍵となるでしょう


上の内容からすると、同社の自動運転支援システム"God's Eye"を搭載していない旧車種を早期に売り切る必要があったから大胆な値下げに踏み切ったということのようです。

同社の自動運転支援システムは、世界中で走行している車両から豊富なデータを取り込み、それがADASをさらに精緻なものにしていくサイクルが回っています。なるべく全車種をGod's Eye搭載車種にして、ADASの地盤をより強固にしたいということなのでしょう。

日本の自動車メーカーにとってだけでなく、TeslaやフォルクスワーゲンなどADASに注力する全てのメーカーにとって脅威であることに違いはありません。

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