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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ビットコインなど仮想通貨の現況

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昨年1月に、従来とはまったく異なる構造を持った仮想通貨を発案し、それの実現のために、ボストンに行ったり、テルアビブに行ったりして、人に会ったりしてきました。その後、いわゆるICOのバブルが終わり、仮想通貨の資金調達がきわめて厳しくなったことで、軌道を修正。仮想通貨開発のための資金を稼ぐ目的で、別な、決済系のサービスを発案し、「リワーズ」(仮称)という名称で開業の準備に取りかかっているところです。
色々な方々のご支援もあり、3月開業のメドが経ったのは大変にありがたいことです。神様に感謝します。

昨年7月に、あるフィリピンの教会関係者から、ビットコインの大口の買い手が韓国にいるので、売り手を探してくれないかということを頼まれした。100億円規模の売り買いです。それまで太陽光発電所のFIT権利・土地の案件ものの売り買い、できあがった太陽光発電所の売り買いなどを4年程度やってきていましたから、100億円規模の菌額の大きさには驚きません。また、私のように売り手と買い手の間に入ってつなぐ役割のインターミディアリー(別名ブローカー)がいただける手数料は、相場にあったきわめて小さな金額ですから、取引額の大きさで驚くことはないのです。

それ以来、ビットコインの大口の売り手を探す長い旅が始まりました。買い手筋がいるマニラにも行きました。ブダペストでは大きな売り手が現れましたが、最終的にそれはフェイクだとわかりました。昨年の7月から10月にかけて、あたった売り手は以下です。

- Estonian exchange
- Russian ICO consulting law firm
- US large exchange GDAX
- Indian ICO consulting company
- Singaporean consulting company
- Japanese exchanges
- Macau exchange
- US other exchanges
- World's 5th largest Bitcoin Miner

大口のビットコインの取引は、マネーロンダリングのおそれがあることから、まず普通の取引所では扱ってくれません。大口とは、1万Bitcoin以上の取引をさします。金額で言うと40億円でしょうか。尋ねて歩くほどに、そうした大口のビットコインを売る主体はまずいないのだ、という現実がわかってきました。その当時、大口ビットコインの売り手を探すのに、Bulk Tradingというキーワードで探していました。BulkとBitcoinでキーワード検索するイメージです。

しかし、9月から10月にかけて、大口の売り買いはOTCと呼ばれているのだということが、ひょんなことからわかりました。OTCとは、Over the Counterの略です。日本で言う相対取引です。大口の売りないし買いを市場に出すと、瞬時に価格に影響を与えます。ビットコインの市場はまだまだ小さいですから、1万Bitcoin程度でも、すぐに、数%の価格変動になって表れる可能性があります。売り買いの価格決めの際にも大いに問題になります。そのため、市場価格に影響を与えない、日本語で言う相対取引、ないし、市場外取引が不可欠になります。
欧州の金融取引市場はさすがに層が厚く、そうした相対取引=OTC Tradingに対応しているところが、特にロンドンにはいくつかある、ということがわかってきました。

それで、長らく、IT系の人材を探して(もっと具体的には仮想通貨の新技術のための数学の天才を求めて)ブダペストに滞在していたものを、10月下旬からはロンドンに移動しました。

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私は近年、まじめなクリスチャンとしての歩みを堅くしていて、外地でも長くいるときには、通えるプロテスタント教会を探して、毎週日曜日はそこに行って礼拝に参加するようにしています。
ブダペストに2ヵ月いた時には、Facebookで見つけた英語で礼拝をする教会を探して行き、大変に歓迎されました。そこで滞在の目的を話したところ、数学の専門家やプログラマーと出会うことができました。現在、リワーズ(仮称)という新規サービスを開発しているプログラマーは、この教会で偶然出会った人です。

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また、ロンドンでも、ある偶然のめぐり逢いがあって、現地のアフリカ系英国人の姉妹に出会い、彼女が所属している教会に通うことになりました。そOTC Tradingの会社の経営陣。
この会社では、大口の売りには買いの相手をあてがってくれ、大口の買いには売りの相手をあてがってくれて、常に、一定数量の売りでも買いでも対応してくれます。むろん手数料は取りますが。
そのようにして、理想的な大口取引の当事者を見つけることができました。ここまでくるのに4か月以上かかっていました。

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この間、ビットコインの市場価格は下がり続けていました。2017年中にICOにこぎつけた企業は、開発を済ませ、新規の仮想通貨を市場に出すことができるようになりましたが、多くの場合は、取引所で売り買いが始まったとたんに値が崩れ、IPOで時々起こる公募価格割れと同じ現象が起こっていました。

大口のビットコインの売り買いという点では、元から、金融資産のポートフォリオのひとつとしてビットコインをある程度組み入れることを狙っていた機関投資家などは、安く好きなだけ買えるので、好機です。私は、そうした大口の潜在的な買い手に働きかけて、色々と動いてきています。

売り買いのつなぎをする人間として、そして、新規仮想通貨の発案をして具体化を図る当事者として、この1年動いてきてわかったのは、次の事柄です。

仮想通貨とは、つまるところ、テクノロジーのものというよりは、より多くの人の信認をいかに集めるか、いかに多くの人から支持され愛される通貨になるか、その一事にかかっている。大多数が考えるように、ブロックチェーンの技術優位性が根幹にあるのではなく、「人が支持するか否か」が根幹にある。ビットコインが多くの人に支持されているのは、それが最初の仮想通貨であるという希少価値から。また、ビットコインに設計上組み込まれた発行上限が定まっているという、これもまた希少価値から。

ブロックチェーンの技術も、もろもろ調べてみると、企業ユースでは限界があります。レイテンシーとデータストレージ容量の問題があり、現在の素のままのブロックチェーンでは、企業が使えるものにはなりません。従って、そうした制約を解決した、次世代ブロックチェーンを開発することが、スケーラブルでリライアビリティの高いブロックチェーン・アプリケーションを開発するための大前提となります。
次世代ブロックチェーン・インフラストラクチャで実現すべき最大のポイントは、利用当事者による適正なコスト負担の仕組みを組み入れることです。ここに新しいタイプの仮想通貨の芽があると思われます。
次世代ブロックチェーン・インフラストラクチャの具体化については腹案があり、人づてに探し当てたインド・チェンナイの中堅開発会社の人たちとも意見交換をして、まずは行けるかなという手ごたえまでは得ました。あとは開発資金を稼がなければなりません。ということで、上述の決済ツール・リワーズ(仮称)の展開待ちです。

私は長くカードビジネスの専門誌の編集をやっていた経緯があり、ある程度までは、カート発行元と無数のカード加盟店から成るカード決済ビジネスの肝がわかっているつもりです。その視点から見ると、これまでの仮想通貨では、値上がり期待により買いが殺到すれば市場価格が上がるし、それがはげ落ちると値が暴落するという、大変にぜいじゃくな構造を抱えています。仮想通貨と言いながら、通貨として有用性を感じられる場面がほとんどありません。
発想を変えて、まずは、通貨としての利便性を感じられる場面が増えるメカニズムを最優先にすべきではないか。場合によっては、ブロックチェーンという技術を捨ててもいいのではないか、とまで思っています。
個人的はリワーズに大いに期待しています。過去にピーポーズというサービスを出して、大きくコケましたが、その時の失敗経験もずいぶんと役立っています。

まずは英語版でリリースし、頃合いを見ながら日本向けのサイトも作っていく予定です。
まとまりがありませんが、仮想通貨に関して過去1年動いてきたことの着地点が、そのようなところです。

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