オルタナティブ・ブログ > インフラコモンズ今泉の多方面ブログ >

株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

PFI法改正で日本でも官民連携のインフラ市場が拡大へ(上)

»

旧聞になりますが、日経新聞が3月9日に報じた「PFI改革案、コンセッション 14分野を対象。事業運営権を民間に売却し経営委託する新方式(コンセッション)を導入」という記事。これは諸外国で行われている政府・自治体によるインフラPPP事業を日本の自治体でも行いやすくするための法改正ですね。内閣府が進めています
この報道のすぐ後に東日本大震災が起こり、法改正の動きが少し止まっていましたが、内閣府から「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(略称PFI法)の一部を改正する法律案」が4月1日に提出され、参院本会議で4月20日に可決されています。現在は衆院での可決を待っているところ。

■用語の整理:PFIとPPP

ここでは「PFI」(Private Finance Initiative)という言葉が使われていますが、中身は本ブログでいつもお伝えしているところの「PPP」(Public Private Partnership)ですね。
PPPにもいくつかのバリエーションがあり、その中でも「コンセッション」と呼ばれるものが、本ブログで取り上げている外国政府のインフラ案件です。すなわち、外国の政府が民間企業に対して特別な許可を与えて、その事業を運営できるようにするというもの。コンセッションには「免許」「特許」「利権」という意味があります。

Photo

以下はこの時の日経新聞の記事の冒頭部分。

 民間資金を活用した社会資本整備(PFI)を見直す政府の最終案が明らかになった。まず上下水道事業など14分野を対象に、事業運営権を民間に売却し経営委託する新方式(コンセッション)を導入。民間の経営ノウハウを採り入れることで、柔軟で質の高いサービスを提供する。企業や銀行の参画を促し、国や自治体の財政負担を軽くする狙いもある。
 14分野は鉄道や港湾施設、浄化槽、国・地方の医療施設など。「道路」はひとまず外し、高速道路料金制度のあり方などを踏まえ検討を続ける。これまで公共性の高い施設の運営権は、民間への譲渡が事実上認められていなかった。
 政府は月内にもPFI法改正案を閣議決定し、国会提出する方針。
(2011年3月9日付日経新聞)

PFIとPPPとで、中身が異なっているのではという印象を与えますが、諸外国でも双方の線引きはあいまいで、イギリスではまだ「PFI」を使う人たちが多いですし、国連、EUなど官民連携インフラ事業の国際標準を定める活動に関係した人たちは「PPP」を使っています。双方まとめて「PFI/PPP」と記すやり方も間々行われていますが、やや煩雑ですね。細かく定義し出すとキリがなく、また、定義の差異を論じることにはほとんど意味がありません(理由→世界のインフラ分野における趨勢はコンセッション型PPPへ向かっており、諸外国政府、関連企業、金融機関のいずれもそれを標準形として動いているため)。よって、分野がインフラ整備であり、タイプが「コンセッション」であれば、頭に「PFI」あるいは「PPP」のいずれが付いていても、中身は同じものと考えて差し支えないです。

日本の場合、明治の昔から、舶来の概念はそれを移入する様々な立場の組織や専門家がその業界、専門領域の経緯を踏まえながら、カタカナ語化したり専門的な語彙にするため、ある業界では専門語「abc」を使っていても、別な業界では専門語「xyz」を使うというケースが多々あります。今回の「PFI」も、内閣府が所管する「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)に関連した動きの中では、用語として「PFI」が使われるということであり、国連、EU、諸外国の政府がインフラ整備に関して「PPP」と言っているものと中身はほとんど同じであると理解すればよいでしょう。なお、内閣府の言うPFIには、インフラ分野以外の市民会館や図書館などの公共施設整備も含まれるので、その点には注意が必要です。

補足すると、インフラ分野においてコンセッション型のPPPないしPFIが具体化する際には、必ずと言ってよいほど、特別目的会社が設立され、そこに対してプロジェクトファイナンスの融資が行われて、大きな初期投資がまかなわれます(さらに、プロジェクトファイナンスと並行して初期投資の何割かは参画企業側が出資という形で資金を拠出するのが通例です)。これには、インフラ整備の巨額な資金調達を行う場合、複数の銀行がシンジケートを組んで融資するプロジェクトファイナンス式の融資方式しか現実味がないという背景があります。プロジェクトファイナンスは、そのプロジェクト=当該インフラ事業から上がるキャッシュフローのみを返済原資とし、かつ、担保をその事業の諸設備および事業運営権のみに限るので、「当該インフラ事業のお金の出入りの一切と有形無形の資産の一切とが1つの法人にまとまっていること」を要求します。そのため特別目的会社が設立されるわけです。ここで俎上に上っているのは、そうした特別目的会社が設立されるタイプの官民連携インフラ事業です。

逆に言えば、プロジェクトファイナンスをするまでもないインフラ事業や公共施設整備事業では(例:初期投資額が少なく一般的な融資でカバー可能なもの)、特別目的会社を設立しなくてもよいわけであり、事実、従来の日本のPFIでは特別目的会社を設立しないタイプがほとんどです。

なお、内閣府・民間資金等活用事業推進室が管掌しているPFIについては、概要説明がこちらに、年次報告がこちらにあります。

今回の法改正が日本のインフラ関連市場に与えるインパクトについては、次回に記します。これまで「インフラ市場」と言う時は、国内制度の未整備のためにほぼ常に海外市場が想定されていたわけですが、その図式が大きく変わる可能性があります。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する