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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

インフラ投資の基本用語:グリーンフィールドとブラウンフィールド

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インフラ投資関連の資料を読んでいてよく出くわすのが"Green Field"と"Brown Field"という言葉。これは投資家の目線で投資対象を大きく2つに区分する時に使われる言葉です。ただし、投資家から見てそのように見えるということを表しているのであって、対象資産のオーナーや権利を持つ自治体にとっては、自分のところの資産が"Green"と言われたり"Brown"と評されているということを聞くと、ややいぶかしく思うケースもあるかも知れません。

"Green Field"には、今まで建物や工場などが建ったことがない草ぼうぼうの土地、樹木が生えていて整地しなければならない土地という意味合いがあります。インフラ投資で言えば、発電所、水道施設、鉄道、空港などがまっさらな状態から作られるケースを指します。まっさらな状態から作るので、既存の権利関係などのしがらみがなく、自分たちの思ったようにビジネスができる自由さがあります。反面、建設を請け負ったコンストラクターが期日通りに完成できなかったりする完工リスクや、施設の完成後、収益が安定するまでに予期せぬ事態が発生するといった操業リスクがあります。
一般的に、インフラ投資で"Green Field"に投資する場合は、20年といった長期間にわたるオペレーションの比較的早い時期に高いリターンを得ることが想定されています。事業が存在しない状況において独占的な条件で事業をスタートさせるので(インフラ投資そのものが政府等による独占営業の許可という性格があるので)、早期に高いリターンが見込まれます。

"Brown Field"とは、現在、工場などの建物が建っている土地に、新たに設備投資をして新しい工場を建設したり、既存設備を刷新したりする際に、その土地を「すでに手がついている」という意味合いで表現するための言葉です。インフラ投資で言えば、すでに操業している発電所を買収する、運用中の空港の権益の一部を買う、自治体から港湾施設を譲渡してもらうといったケースを指します。
"Brown Field"への投資は、すでに「顧客がいる」状況に投資するので、先々の収益が読みやすいというメリットがあります。また、多くのケースでは官営の事業に民間のノウハウが入るので、収益性が向上する余地も期待されます。一方で、"Green Field"のように、事業が存在しない状況で事業を立ち上げるがゆえの高いリターンは見込めず、リターンは比較的マイルドなものとなります。

この言葉がどの分野から出てきたものか、少し調べて見ましたが、いわゆるFDI、Foreign Direct Investment(海外直接投資)の世界で使われ始めた言葉のようです。メーカー等が外国に投資を行う際に、その敷地が草ぼうぼうの土地なのか、すでに工場設備などがあってそれを撤去する必要があるのか、といった違いをわかりやすく表すために使った言葉なのでしょう。

少し前にインフラファンドのGlobal Investment Partnersについて触れた際に、参照した記事で、同ファンドの代表が「自分たちが狙うのはBrown Fieldであって、Green Fieldはやらない」と言っていたことが印象に残っています。投資対象がこなれた案件であって、そこに自分たちの経営のテクニックを適用することができるBrownがよく、収益性に不分明さの残るGreenは好まない、という考えのようです。

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