トシ・ヨロイヅカの理念に耳を澄ませてみた
結局のところ、食べるものを作る人も本気度が高くなると勝負に打って出るものであり、あるレベルを超えると、独自の表現を追求する領域に入っていきます。勝ち負けはもういいので、自分の思うところをやり切ってみたいと。理念を形にしてみたいと。そのように思うわけであります。
本日めでたくミッドタウン1Fのトシ・ヨロイヅカの小品を試してみることができました。イチゴが乗った、見た目ショートケーキに見えていて、下半分はピスタチオのクリームになっているお菓子です。いけました。やられてしまいました。
白いクリームは淡雪であり、消えゆく甘さに確信犯的な狙いが感じられます。表面的にはイチゴのショートケーキなのですが、底まですくうとピスタチオのクリームが登場して「あぁ」とか思い、口に入れるとピスタチオ農家の歓待を受けているようで楽しいです。トシ・ヨロイヅカの資料ではたぶんこれに近いと思います。
すぐそばの2名が別な小品を試しています。白いドーム型のなんとかいうやつ。そして黒いドーム型のおそらくはこれ。
一口ずつ試食させてもらいましたが、うーん。一言で言うなら、「これぞ日本人」という印象です。日本人による日本人のための世界で勝負することも可能なケーキという感じです。路線は、あえて言うなら伊藤深水。
結局のところ、トシ・ヨロイヅカが行っているのは、普通に言えばケーキと呼ばれるジャンルのものを作りならが、味覚と視覚と質感でもって、まったく新たな経験を定義しようとしているということなのだと思います。何かを”経験させる”のではなく、”経験を定義している”のです。両者にはタコとメタほどの違いがあります。ぜひ試してみてください。価格設定がそんなに高いというわけではありません。