例えば音源を開放する
よく言われるところの消費者との価値の共創。企業は潜在価値があると信じるものを消費者に提供し、消費者の側がそれを”揉む”なかで、あたかも新しい価値が創発するように生まれてくる。そうしたパターンがこれから重要になることは必至です。
昔から思っていたのは、レコード会社が高品質な音源をインターネットで公開して、あとはネットユーザーのDJが適宜ミックスして、それをネットで公開するというパターンができれば、非常によい価値の循環ができあがるのではということです。それも旬なアーティストであればあるほどよいです。最近は周知のように、個々のアーティストにアテンションを引き付けることが難しいわけで、かなりのPR費用を使わないと、誰にも聴かれないまま日が経ってしまうということになりかねません。
音源の公開という手法が陳腐にならないうちに(つまり今)、思い切ってやると、DJごころがあるリスナーは喜んで色々ミックスしてみると思うわけです。それによって、あちらのブログにミックス後の楽曲があがり、こちらのブログでそのプロセスが報告され、ということになるはずです。OOPS!などの音楽コミュニティでも大いに話題になるでしょう。渋めのハウスあり、サイバートランスあり、ボサノバあり、ジャジーな雰囲気もありと、そのへんあれこれが可能なような音源をケチらずに出してあげると、まったく新しい動きが起こります。
このような価値の共創。すなわち、企業にとってこれまではなかなか外部に出すことができなかった、非常に価値の高いものを、あえてネットのコミュニティに送り出してあげることで生まれる、まったく新しい価値の共同生成行為。こうしたものが、たぶんこれからの企業価値の向上に重要になると思います。
先ほどYouTubeで見つけたBMWのショートフィルム(2001年頃のもの)を、ちょっとだまされたと思ってみてください。この本気度、このカネのかけかた、この超スーパースターの仕事受諾の態度の柔軟さ。そうした非常に価値の高いものがインターネット空間にぽんと放り出されることで、何が起こったか? おそらくは、BMWに対する熱狂的な支持以外の何物でもなかったと思います。(本家本元のショートムービーはすでに削除されており、現在YouTubuに上がっているのは著作権的にまずいバージョンであることは承知しておりますが→しかしこれを今、初めて観た人が受ける衝撃の大きさを思えば…。彼らの試みは延々効果を生み続けているわけです)。 それまでは考えもつかないような、価値の大きなものをポンとネットに放り出すことの意味。そのへんを色々考えてみると、おもしろいです。
BMW Shortfilm "Hire: Star" (監督はガイ・リッチー。主演女優はえ?という感じです)
BMWのショートフィルムは当時作られたものが何本かあり、YouTubeにアップされている今は実見するよいチャンスです。色々探してみてください。どれも英語がわからなくても十分楽しめる内容になっています。
追記。
先日、iTMSで買ったm-floの何曲かの1~2曲が、Lisaのアカペラのみという中身でした。無音の時間が延々と続いて、時々ぽつりとLisaがあるパートだけを歌うという、そういう音になってます。これはたぶんミックス用に開放しているのではないかと思いました。