当事者は「空気」なのだから、責任を負わせられない(IT投資問題-その6)
IT投資とその関連事項にまつわる問題を、「情報化の現状と未来」の幡鎌さんが触れていたのでリンクしておきます。なかで触れられている日経BP谷島氏による「『IT産業の非常識』を語った日本ユニシス社長」も非常にずしんとくる指摘でした。
このような指摘が正しいのは言うまでもないこととして、問題は、誰が解決できるかということになると、誰も答えを出しにくい位置にいるということです。問題はあるのだが、その問題のオーナーとなって、解決に立ち回れる人がどこを見渡してもいそうにないという状況があります。
繰り返しになりますが、個人的に、この状況は、(山本七平言うところの)「空気」が醸成されて何となく意思決定がなされ、投資の責任が集団のなかに分散してしまって最終的には集団的無責任に近い状況が生まる、そうした「構造」から生まれるものだと思っています。このままでは、この問題を解決するインセンティブが誰にもありません。
たぶん、問題の本源は、顧客(発注者、企業では言うまでもなくユーザー部門)の側にあります。IT投資からリターンがもたらされなくともよいと、明示的には考えないにせよ、それに近い発想を行っているのは、顧客です。そこから、ベンダー側やIT部門側における多大な非効率が派生しています。
従って、この状況を改善するには、顧客の側に、新しい「空気」を醸成するような働きかけをするということと、その「空気」がうまく活性化するインセンティブを顧客の側にもたせるということが必要になると思います。
歴史的に見て、日本の社会が旧弊を捨ててよりよい行動パターンに移行するのは、どんな時か?ここでは、そういう思考がたぶん、必要なのではないかと思っています。僭越と言えば僭越なのですが、事は、そこまで踏み込まないといかんともしがたいです。