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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

日本企業はIT投資がヘタなのか?(IT投資問題-その1)

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先日、必要があって日本のCIOを取り巻く状況とIT投資に関係した問題点について調べる機会がありました。Googれば出てくる資料ばかりですが(実のところそうでない資料は出せない…)、非常に興味深いものもあるので、あまり長くならないように、何回かに分けて紹介したいと思います。

日本のCIO像については、CIO Magazine、アイ・ティ・アール、ドイツ証券が継続的に「国内CIO実態調査」を行っており、直近の2005年9月のデータがここにあります(CIO Magazine 2006年5月号に掲載)。

目に付く傾向には以下があります。
・専任のCIOは10%を切る。
・兼任のCIOを合わせてもCIO設置企業は4割弱
・就任前の担当業務では、専任CIOの77%がIT部門出身。兼任CIOの56%が経営・業務管理部門出身。

同じくCIO Magazineとアイ・ティ・アールによる「国内IT投資動向調査2005」によると、専任CIOは大企業ではやや増える傾向にあるものの、それでも全体の10.8%と、決して多いとは言えません。

そのほか、同種の調査およびそれに類するものでは、
経産省「平成16年情報処理実態調査結果
総務省次世代IPインフラ研究会セキュリティWG第4回資料として作成された
ICT人材育成に向けた総務省の取組について」(ただしCIO関連データはやや古い)
日経BPが媒体資料的な位置づけで作っている
日経LAP あなたの会社にCIOはいますか?
があります。

どれも専任CIOを置いている企業は1~2割程度、兼任を合わせても半分程度という結果です。

結局、「Chief Information Officer」は1990年代になって初めて日本に移入された概念であって(確かITバブルのさなか)、それまではCIOに近い役職として置かれていたのは情報システム部長だけ。花王やセブン-イレブンのようにIT戦略が本業と不可分な企業においてのみ情報システム担当役員がいるという具合だったのではないでしょうか?(そう言えば1996年頃に「CIOとは何か?」をテーマにした原稿を書いた記憶がうっすらと…)
まだまだ「CIO」という概念もその職責もこなれていないというのが実状だと思います。

ただ、CIOの職責がこなれていないとしても、日本企業を取り巻く状況がそれを急いで”こなして”、先に進むことを求めているのは明らかです。世界がフラット化しており、目に見えない競争が自己組織化的にひしと迫ってきているからです。

個人的には、「日経ビジネス」2006年5月29日号の特集「商品の寿命は3週間」で報じられているような消費者向け製品の極端な短命化などは、フラット化する世界で、なにげなくベキ法則が働いているがゆえの現象だと思っています。(ハブに相当する商品の力が異様に強く、他の商品はロングテール化する)

こういう状況で戦っていくには、智恵を使わなければならないのはもちろんのこととして、相応のIT武装は必要であり、それを、”勝てるメカニズム”をよくわかって、適正な陣容を整えないといけません。次回、紹介する資料で少しみたいと思いますが、日本企業はそのへんの「戦えるIT」の準備がまだほとんどできていません。こんなんで本当にいいのか?5年後は大丈夫か?と思っていしまいます。

受身、あるいは右習え式のIT投資ではなく、自分の頭でよく考えて、自社に合ったIT武装をしないと、この先まずいです。

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