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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

優秀な頭脳の上澄みだけでも毎年数万人(ベキ法則下の企業活動-その7)

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米国からインドにアウトソーシングされるのがコールセンター業務であるのは理解しやすいとして、次のような仕事もインドで処理されていることを知ると、少し驚きます。

・中小企業の税金還付手続きはこれまで米国の会計士が担ってきた世界だが、90年代末にインドで設立された企業がインターネット上に設けた”受付窓口”を経由して、インドの会計士に依頼できるようになった。インドでは毎年7万人の会計学士が生まれている。彼らがインドで会計事務所に就職すると初任給は月100ドル。単純な税金還付処理はすでに米国の会計士が関与できない状況になっている。(大企業対象の同じ業務はこれより前に米国外に流れている)

・ロイターでは、バンガロールに事務所を設けて当初(2001年頃)6名で業績発表の速報の作成を任せた。次いで基本的なニュース、小規模企業の業績ニュースなどもバンガロールで作成することになり、現在ではジャーナリスティックな付加価値の付く情報作成にも及んでいる。バンガロール拠点の規模は2004年に300名、その後500名規模まで拡大される。

・米国の証券会社では従来、投資信託業務と証券取引業務の垣根が低く、高給のアナリストの給与を投資信託業務の収益から回すことができた。しかし、一部で投資信託販売の不正が明るみに出たことで双方の分離が必要になり、アナリストの給与負担は証券取引業務だけから捻出しなければならない状況が生まれた。これがためコスト削減の必要が生じ、基礎的な市場調査業務はバンガロールに回るようになった。ニューヨークのアナリストの給与年8万ドル、バンガロールでは年1.5万ドル。

・米国企業のエグゼクティブがプレゼンで使う資料(パワポ)の作成を、インドで受託するサービスが存在している。顧客は投資銀行や金融機関など。内容はIPOや企業合併に関するファクトの取りまとめ。一人のエグゼクティブに一人のインド人アシスタントが付く。米国でビジネスアワーが終了する頃にインターネット経由でインドに依頼すると、インド側ではちょうどビジネスアワーが始まる時間であり、数時間で作成して米国に送る。エグゼクティブが翌朝会社に出てくると、きちんとしたパワポのファイルができあがっている。これにかかるフィーは月1,500~2,000ドル。

以上はすべて「The World Is Flat」より。同書によるとインドの大学卒業者は年250万人。MBA取得者は8万9,000人。欧米資本はこうした膨大な人材のプールからいわばクリームの部分をすくい取って採用することができているそうです。すげーですな。

現時点では、インドに流れている欧米企業の頭脳労働はまだ単純な部分に留まっているとのことですが、ここにもクリステンセンが述べていた破壊的イノベーションのメカニズムは働くようで、徐々に付加価値が高い領域に進出していくのは理の当然であります。

-Quote-
"We will do the lower-end work, and they will do the things that require critical judgement and experience, close to the market". The more projects his team of remote executive assistants engages in, the more knowledge they build up. They are full of ambition to do their higher problem solving as well, said Kullkarni. "The idea is to constantly learn. You are always taking an examination. There is no end to learning... There is no real end to what can be done by whom."
"The World Is Flat", One - While I Was Sleeping" (p32)
-Unquote-

-今泉お手軽訳-
「われわれはいわゆるローエンドの作業をやっているわけで、あちら様が市場に近いところにいて、クリティカルな判断や経験が必要な仕事をしていただければよいわけです」。ただ、彼の下にいる経営者アシスタントたちが多くの経験を積むようになれば、それだけ知識も増していくだろう。皆モチベーションが高く、より高度な課題解決の領域に入り込んでいくのも自然な流れだとカルカルニが言う。「詰まるところ、絶え間なき勉強ということです。常時試験に臨んでいるようなもの。勉強に終わりはなく…。誰がどの仕事をこなすかという流れにも、終わりはないのでしょうね」
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本日はこれまで。
(気長に続く)

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