ベキ法則下の企業活動-その2
昨日の公文俊平先生の引用が中途半端なところで終わっていたので、補足します。彼は、社会のひとつのまとまりにおいて、ものすごく優秀な人が一握りいる一方で、そうではない人が大多数という感じで存在する現象を、ベキ法則の現れとして捉えています。
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そのころ、グローコムで同僚だった西山健一さん(現埼玉大学)から“80対20の法則”のことを教えていただきました。アリやハチの集団では、全個体の二割が食べ物や蜜の八割を集めてくるというのです。とくに興味深かったのは、勤勉な二割の個体だけを取り出して集団を作らせると、そこにもやっぱり“80対20の法則”が出現するという点でした。
そして昨年、バラバシという若い物理学者が書いたLinked(「新ネットワーク思考」)という本を読む機会があったのですが、そこで私は遅まきながら、この“80対20の法則”は社会学者のパレートが発見した“パレートの法則”の別名にほかならないこと、そしてその背後には物理学の世界ではよく知られている“ベキ法則 (Power-law)”があることを知りました。
「ベキ法則と民主主義」公文俊平
-Unquote-
ロングテール現象も詰まるところ、WWW空間がスケールフリーネットワークとして形成されていることからくるベキ法則の現れと見ることができます。
ちなみに、インターネット空間は、ひとつのスケールフリーネットワークと見るべきではなく、いくつものスケールフリーネットワークが重層的に存在しており、かつ、ある部分では相互に複合している空間と捉えるべきです。「新ネットワーク思考」のなかでも、95年以前の一般に浸透する前のインターネットをひとつのスケールフリーネットワークの例として説明しつつ、World Wide Webのウェブページの増殖については別なスケールフリーネットワークとして説明しています。個人的には「インターネット」を一把ひとからげにしないこの姿勢がひどく新鮮に思えました。
サーチエンジンの検索においてロングテール現象が出現するのは、厳密に考えれば、①WWW空間がスケールフリーネットワークとして形成されている、②WWW空間における言葉の使用頻度にもスケールフリーネットワークの特性が反映される=ウェブページの作成主体であるわれわれが集団的に見るならばスケールフリーネットワークとしての特性を示す、③インターネットユーザーを集団的に見るならば、WWWの検索行動においても、スケールフリーネットワークとしての特性を示す、という3つのスケールフリーネットワークが複合しているからかも知れません。
ここでは、何らかの現象にいくつのスケールフリーネットワークが関わっているかを解明することにさほどの意味はなく(重箱の隅をほじくらないということで)、スケールフリーネットワークは往々にしてフラクタルな構造を持っている、ぐらいでラフに認識しておくとよいと考えます。
従って、インターネットに接続された個々の事物と主体、そしてそれらから成るインターネットという非常に捉えどころのない関係性の束は、ルーターのようなハードウェアに着目してもスケールネットワークであるし、ウェブページというTCP/IPの上の階層に乗っかっているWWWアプリケーションのコンテンツに着目してみてもスケールネットワークであるし、そこに対して検索をかける行動の主体であるわれわれに着目してもスケールネットワーク的な振る舞いを示しているし、ということで、どこを切り口にしても、金太郎飴のようにスケールフリーネットワークが顔を出す、という現実があると捉えられます。
スケールフリーネットワークがあるところ、ベキ法則が働くということで、公文先生が素朴な感想として示しておられる現象がいろんな状況において現れていると考えられます。そのへんを壮大なスケールで示しているのが、Thomas Friedmanが精力的な取材でネタを集めて書き著した「The World Is Flat」です。(気長に続く)