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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

「サービスサイエンス」はIBMと米国の未来を担うかも

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「サービスサイエンス」。何のことだかわかりますか?恥ずかしながら私もつい先ほどまで、この言葉が何を指し示しているのかまったくわかりませんでした。先日掲げたこの図shiba氏がつけたタイトルも実は謎だったです^^;。

米国が次代の国力を高めるために、日本の諮問委員会式の議論を有識者にしてもらってまとめたレポート「Innovative America」(2004年7月)については、玉田俊平太氏がわかりやすく紹介しています
このレポートの中で"Service Science"についての言及が1箇所だけあります。引用符付きの"Service Science"なので、この言葉自体が2004年7月時点でまだ新しかったことをうかがわせます。

そこの記述を意訳してみます。
「イノベーションを活性化させるためには、これからイノベーションに取り組もうとする主体に対して、かなり学際的な内容を持ったカリキュラムと教授法で臨まなければならない。
そうした新しい知識習得手法を開発する試みはすでに始まっており、一例が『サービスサイエンス』である。
われわれは現在、コンピュータサイエンスが発達したことで、どの業種においてもITシステムによる効率向上の恩恵が受けられる。
サービスは、ITシステムが提供するのではなく、人間が提供するものである。
その人間によるサービスの提供において、個人の能力がよりよく引き出され、効率が高まり、さらには組織レベルの生産性向上が実現されるためには、どうしても『サービスについての科学』が不可欠となってくる」

平たく言えば、米国の将来はイノベーションにかかっており、これを担う人材をサービスサイエンスという新しい学問領域でもって強力に養成していこうということです。ものすごい野望が秘められています。

もう少しかっちりした理解を得るために、もう1つだけ関連の記述を挙げてみます。

同じくCouncil on Competitivenessのサイトから。「『サービスサイエンス』とはある種の教育体系である。そこでは、個人が個々の業種の複雑な課題に向き合った際に、技術をどのように用いれば解決できるかを学ぶことができなければならない」。なかなか深いです。

ここで言われているサービスについては、ここにあるスライドの8枚目が明確に定義しています。いわく、「サービスでは生産と消費が同時に起こる/サービスは蓄えておくことができない/サービスは無形である/サービスは誰が、誰に、いつ、どこで提供するかで内容が変わってくる」とのことです。いいですね。

このサービスサイエンスにものすごく積極的に取り組んでいるのがIBMであり、色々見てみると例の「On Demand」の中核にある考え方のようです。ちなみに上述のレポート「Innovative America」執筆集団の座長がIBM CEOのサミュエル・パルミザーノ。IBMは完璧に「サービスサイエンス」に自社の未来を見ている可能性があります。(記事が1本書けそう)

ぼんやりしたアタマで考えても、第三次産業という意味で言うサービスは先進諸国のGDPのかなりの割合を占めているわけで、そこにおいて今まで科学的なアプローチがあまりなされていなかったことを思うと、経済的なポテンシャルは莫大です。例えば医療。日本だけでも軽く○千億円の効率化余地があります。
個人的には、Web 2.0がブレイクするのは実体経済の何かと結びついた時だと考えており、サービスサイエンスがその答えである可能性が高いと思います。

Googleで引いてもこの"Service Science"の意味で使っているページはまだまだ少なく、先端中の先端動向ということになるでしょう。
IBMが開設しているウェブサイトが非常に目立ちます。ここを見ると、"Service Science"の正式名称は"Services Sciences, Management and Engineering"のようですが、われわれの通り名はshiba氏にならって「サービスサイエンス」でよいでしょう。
IBMはこのテーマでカンファランスを開催しており、なんと、日本でも昨年9月にシンポジウムが開かれていたんですね

そしてさらになんと、日本語のページが存在しています。上でリンクしたPDFファイルはそこに掲出されていた一橋大学の藤川佳則氏のもの。ここにリンクされているその他の資料も眺めてみると、コンテキストがもっとはっきりしてくると思います。

shiba blogを色々見ていると、shiba氏と澤田氏のService Scienceに関するコメントのやりとりがたくさんあります。おそらく日本でもっとも密度の高い情報交換がなされているのがここではないかと思います。

というわけでService Scienceの現況に少し追いつきました。

追記。

おぉ、さすがITMediaさん。すでに記事がありましたね。知らぬは私ばかりだったか。

“サービスを科学する”新しい学問、IBMが開拓中

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0410/12/news027.html

サービスに科学を導入する、サービス・サイエンス最前線

http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0509/09/news122.html

ひょっとしたらインターネット上では日本語のドキュメントの方が多かったりして。

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