2014年クラウド展望(12)ERPのクラウド化
企業の情報システム部門においてERPのクラウド化が大きなテーマとなる年になりそうです。
「SIガラパゴス」を育んだIT部門の罪(2014.1.23)の記事では、オンプレミスでのERPに膨大なカスタマイズ費用が膨大になっている点が指摘されています(関連記事)。
ERPにしても、SIerに依頼してカスタマイズしまくったシステムは今、多くのユーザー企業で金食い虫の「ERPレガシー」に化けた。ERPがバージョンアップするたびに、カスタマイズした部分の保守が必要になる
特に日本では、IT部門のカスタマイズ要求が多く、その結果、膨大なコストがかさみ、記事書かれているように、
ERPのために仕事をしているようなものだ
と嘆く大手ユーザー企業の経営者もいるのが現状のようです。
こういった背景の中、ERPパッケージの大手の独SAPは2013年1月21日、、統合基幹業務システム(ERP)のクラウド化を進め、現状の3倍に相当するクラウドサービスの売上高を2017年に最大35億ユーロ(約4900億円)にする目標を発表しています(関連記事)。
SAPジャパン社長の安斎氏はITmedia エンタープライズの新春インタビュー記事の中で
5年後にはすべてがクラウド
になると発言しており、オンプレミスの既存顧客を重要視しつつも、クラウド化への対応を急いでいます。通常、オンプレミスの場合は4億円台のコストがかかると言われている一方、クラウドでの利用の場合は10分の1の金額規模に加えて、会計や人事などその他の業務プロセスなどもカバーできるというメリットもあります(関連記事)。
日本企業でもERPのクラウドの採用が始まる
日本の大手企業においても、グローバルビジネスへの展開に伴い、グローバルERPのニーズが高まってきており、クラウド採用の動きも進んでいます。
HOYAは、グローバルの基幹システムをNTTコミュニケーションズが提供するクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」を採用しています(関連記事)が、ASPの部分はAWSで構築しています(事例記事)。HOYAの導入事例などSAP on AWSに関するセミナーも2014年2月14日に開催予定です(イベント情報)。ケンコーコムなどAWSでSAP環境を構築するケースは今後も増えていくでしょう。
国内の事業者もクラウドサービス提供を強化
国内でもERPのクラウド化の進展に伴い、SI事業者からクラウド事業者、通信事業者までERPのクラウドサービスや関連ソリューションの展開を強化しています。
TISは2014年1月9日、中国・ASEANで事業展開する日本の製造業企業向けに、MicrosoftのERPパッケージ「Dynamics AX 2012」をクラウド型サービスとして提供する「Microsoft DynamicsAX2012 グローバル導入サービス」を2014年2月から開始すると発表しています(関連記事)。
NECとSAPジャパンは2014年1月9日、クラウド型ERPサービスに関する協業契約の締結を発表し、「NEC Global Localization Package for SAP Business ByDesign」をグローバル展開を発表しています(関連記事)。
IIJとSAPジャパンは2014年1月9日、中堅向けクラウドソリューションで協業することを発表し、2014年度は20件、2015年度50件の受注を含め、2016年度までの3年間で35億円の売上を目指しています(関連記事)。
パソナグループとSAPジャパンは2014年1月15日、SAPの認定クラウドに関するBPOパートナーとして人事クラウド分野で協業することを発表しています(関連記事)。
日本HPは2014年1月24日、SAPアプリケーション向けのクラウドサービス「HP Enterprise Cloud Services for SAP Applications」(HP ECS for SAP Applications)を発表しています(関連記事)。
その他にも、電通国際情報サービスが提供する「SAPクラウドサービス BusinessACXEL for SAP ERP」やクラウド事業者ではNTTコミュニケーションズが2013年10月に「SAP認定ホスティングサービスプロバイダー」および「SAP認定クラウドサービスプロバイダー」の認定取得を発表しています(報道発表資料)。
2014年は、ERPのクラウド化の進展に伴い、コスト削減と効率が進み、IT部門のあり方にも一石を投じる一年になるでしょう。
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