2014年クラウド展望(6)クラウドサービス事業者の二番手争い
クラウド市場の中で、IaaSレイヤで圧倒的に市場をリードしているのがAWS(Amazon Web Service)です。
AWSは圧倒的なマーケットリーダに
調査会社の米ガートナーが2013年8月21日に発表したパブリッククラウド事業者を対象とするリポート:「The 2013 Cloud IaaS Magic Quadrant」によると、AWSは「リーダー」のポジションに位置付けられており、クラウドビジネスの市場を牽引するとともに、年々他のプレイヤーとの差を広げています。
クラウドビジネスの今後の占う上で、重要になるのが、AWSの次にくる事業者です。
まずは、グローバルマーケットのシェアからみてみましょう。
米調査会社のSynergy Research Groupの調査によると、セールスフォース・ドットコム、マイクロソフト、IBM、Googleの売上の合計よりもAWS単体の方が規模が大きく、引き続き突出したマーケットリーダーであるとしています(関連記事)。
多くの調査データをみても、AWSがグローバルマーケットでシェアNO.1となっているのはほぼ間違いないと思われます。
SoftLayerも注目
一方、「Where the world’s top 100,000 websites are hosted」の記事によると、最もアクセスを集める10万サイトのうち、最も利用されているサーバはIBMが買収したSoftLayerで、2位がAWSとなっています。国内事業者としては、さくらインターネットが唯一ランクインされており、14位と健闘しています。
本調査では、SoftLayerが1位となっていることから、SoftLayerのグローバルマーケットのプレゼンスは高く、IBM買収による日本市場へのマーケティング強化により、今後の日本市場でのシェアの行方が注目されるところです。
国内市場に目を向けてみましょう。
AWSは、「AWS Summit Tokyo 2013」などで国内市場での利用ユーザーはすでに20000社を超えているということを明らかにしています。国内においても圧倒的なシェアを誇っているように見受けられまますが、国内市場においての次に出てくる二番手のクラウド事業者の行方が注目されます。
国内のクラウド市場は?
調査会社のMM総研は2013年8月30日、「国内クラウドサービス需要動向」の動向を発表しました(関連記事)。国内クラウド市場は2015年度に1兆円、2017年度に2兆円に達すると見込んでいます。
本調査資料では、ユーザーが利用・検討するクラウドサービス事業者では、
プライベートクラウド(n=1,147)では「NTTコミュニケーションズ」(13.0%)が最も多く、「富士通」、「AWS」、「NTTデータ」、「Microsoft」と続いています。
パブリッククラウド(n=752)では、「AWS」(19.1%)が最も多く、「Google」、「NTTコミュニケーションズ」、「Microsoft」、「富士通」と続いています。
MM総研ではプライベートクラウド市場のほうがマーケット規模は大きいという数値を出していることから、本調査から推測する場合は、国内市場ではプライベートクラウドを含めると、クラウド市場において、NTTコミュニケーションズのシェアが最も高いといえそうです。
ITRが「ITR Market View:クラウド・コンピューティング市場2012」で発表した調査では、2011年度のベンダーシェアでは、2010年度に続いてNTTコミュニケーションズがトップを堅持していると発表しています(2013年の調査は公開しているもののWebではシェアは未公開)。
NTTコミュニケーションズでは、グローバルクラウドビジョンの中で、2015年には、クラウド・データセンター事業で2000億円超を目指すという目標を掲げています(関連記事)。また、2013年5月に発表した2012年度(第14期)決算では、プライベートクラウドのユーザは2013年度の着地見込みとして2300ユーザ、パブリッククラウドの着地見込みは4200ユーザと予想しています。
一方、調査会社の富士キメラ総研では、IIJのクラウドサービスが国内パブリッククラウド市場において、大手企業を中心に既に1000社を超えるユーザに利用されており、2年連続でナンバーワンシェアを獲得していると発表しています。2013年度の市場規模予測は全体で595.5億円となっており、IIJは100億円(同16.8%)でNO.1になると見込んでいます(ニュースリリース)。
国内事業者で、シェア上位にいると予想されるのがニフティクラウドです。ニフティクラウドは2013年1月現在で、提供開始以来2,000件を超えるお客様に採用されているこをと発表し、BaaSやデータベースなどサービス機能拡充を図っていることから、ユーザ数を拡大していくでしょう。
そのほかでは、「Where the world’s top 100,000 websites are hosted」で唯一国内事業者ではランクインされていたさくらインターネットで、2011年9月から提供開始した「さくらのクラウド」は、サービス機能の拡充と豊富な価格体系から、シェアを伸ばしいていくことが予想されます。
国内市場で注目されるのが、マイクロソフトが提供する「Windows Azure」のサービス展開です。グローバルマーケットではAWSに次ぎ、シェア争いをしている事業者でもあり、クラウドOS戦略や国内のデータセンターでの提供開始も明らかにしていることから、シェアを拡大していくでしょう。
調査資料の算出根拠と各社によって公開している数値が異なることから一概にはいえませんが、これまでとりあげたクラウド事業者が、上位の多くを占め、熾烈なシェア争いを繰り広げ、2014年はAWSに続く事業者として優劣がつく年になるかもしれません。
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