2014年クラウド展望(8)クラウドエコシステムの展開力
クラウドビジネスを展開するにあたって、サービスとしての価格競争力を維持し、事業を拡大していくには、自社による直販モデルだけでなく、パートナー戦略によるエコシステムの形成が重要な鍵になります。
「2014年クラウド展望(4)事業者やサービスの優劣と淘汰が始まる年に?」というブログでも紹介をさせていただきましたが、今年は事業者の優劣が顕著になり淘汰が進んでいくと予想され、ユーザ数のさらなる拡大と事業の継続に向けて、ユーザやパートナーとの接点を増やしていくことが、重要となっています。
クラウドサービスの採用は、開発者やWebサイトやECサイト、ソーシャルゲームなどから利用が広がり、近年ではエンタープライズの企業の基幹システムや金融機関、公共分野での利用も拡大しています。2013年はビッグデータやオープンデータの活用基盤でも採用が始まり、グローバルへの対応、中長期的にはIOTやM2M、スマートマシンの分野などでも利用が広がっていくことが見込まれています。
これらのクラウド利用の潜在的利用の高いユーザに対して、直接販売するルートがなければ、その業界や分野に強い事業者との連携することが重要となります。
IaaSレイヤのサービスはコモディティ化が進み、差別化しにくい状況となりつつあります。ユーザの選択肢を増やし、付加価値をつけていくには、自社のサービスだけでなく、セキュリティや運用保守など、さまざまな事業者と連携による付加価値をつけたエコシステムの形成が、事業拡大において重要な鍵になると考えています。
「エコシステムで勝てない国産クラウドは人海戦術に頼るのか?(2014.1.9)アスキー」の記事では、クラウド分野におけるエコシステムの構築は外資系ベンダーの十八番で、日本のクラウド事業者は、自前の販売にこだわりすぎ、エコシステムが弱点であるという指摘がされています。
日本の事業者の多くは、SIやハードウェア、ネットワークなど自社の強みとなるソリューションやサービスを提案できる強みはありますが、クラウドに関しては、従来の提案や構築ノウハウが通用しない場合があります。クラウドの場合は多くは案件の経験値が少なく、一つの案件規模が小さく、営業のモチベーションがあがりにくいというジレンマもあり、自前による販売のみでは、市場の成長以上に収益を伸ばしていくことは難しいでしょう。
アスキーの記事で指摘されているように、クラウドサービスの提案の場合は、人海戦術と自前主義を中心とした対応では、コスト構造も高くなり、エコシステムを展開しユーザの拡大を展開する事業者との差は大きく拡がっていくでしょう。
パートナー戦略において重要になるのは、コミュニティ戦略です。AWSではAWSユーザ会など、全国各地でコミュニティが活発化しています。コミュニティを通じて事業者の連携が生まれる土台となっています。
クラウドインテグレータを増やしていくことも重要となります。特にエンタープライズの分野においては、お客様へのコンサルができるインテグレータの役割は大きいでしょう。また、ECやソーシャルゲームやビッグデータ、そして運用監視など、分野ごとに強い事業者と連携を強めWin-Winの関係をつくっていくことも必要です。
また、クラウド業界の開発コミュニティやビジネス団体などにも積極的に参加し、活動への貢献度を高め、常日頃からエンジニアやビジネスとしてのリレーションを構築し、事業の展開にあわせて連携を進めていくといったアプローチも必要となるでしょう。
クラウドビジネスの成功の鍵は、パートナーとの連携によるWin-Win関係を構築し、エコシステムを形成し、事業領域を拡大していくモデルを構築していかなければ、事業から撤退を余儀なくされる可能性もあります。2014年は、各クラウド事業者のクラウドエコシステムの展開力が、大きな分かれ道となる年になるかもしれません。
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