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「IT業界は夢を可視化する義務がある」への意見

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ITmediaオルタナティブ・ブログのブロガー向け定例会が月に1回開催されます。私自身、都合がつけば必ず参加するようにしています。理由の一つに諸先輩方からたくさんの知見を吸収できるからです。ブロガーの皆さんが集まって議論をすると、多くの方はIT業界のこれからの夢の話をします。これから立ち上げるITサービスの話。自社が提供しているITサービスの現状と今後。これからの伸びるIT市場の話。など、驚くほどに皆さんは夢を語ってくれます。

IT業界にプライドを持ち業界を引っ張っている方々と話すと、まだまだIT業界の未来は明るいのではないかと思うこともあります。

しかし、IT業界の人気は学生にとっては思わしくありません。今年の2月に「2008年版就職人気企業ランキング --低迷するIT企業」という記事を書きましたが、今も1日に結構なアクセスがあり、低迷するIT企業の行方に関心が高い方が多いことがわかります。

最近になって、IPAの討論会でのIT業界を目指す学生に対して「泥のように働け」という意見は、大きな反響を呼びました。IPAの取材記事を書いた@ITも「もう「IT業界」とは言えない」とIT業界の定義のあいまいさの中、十把一絡げにして取り上げて議論してしまうことに反省していると書かれています。

ITProでは「未完の記事「IT業界は夢を可視化する義務がある」へのご意見を求めます」という記事が書かれていました。10年、20年前と比較するとITの恩恵を受け社会は大きく進化してきました。にもかかわらず、現場で働く人に加えて、学生の人気も低下し、その理由の一つに、ソフトは見えない仕事なのでやりがいがないという意見があるという点を指摘しています。最後のコメントの中では、

見えないソリューションを懸命に提案し、全力で開発する宿命から、IT業界が逃れることはできないだろう。

であれば、何とかしてITソリューションの力を可視化するしかないのではないか。よくITは経営の可視化に不可欠だという。知恵を尽くせば、ITの持つ夢も必ず可視化できるはずだ。

そして、

なぜITに夢があると言える人が減っているのか、少なくとも夢を語れない人が増えているのか、理由が知りたいのである。

と書かれて、読者から「ITの夢、教えてください」というテーマでアンケートを実施しています。

 

私自身の視点で「ITの夢」の意見を述べていきたいと思います。

(業界の魅力)

今年の2月に「就職するなら情報通信業界を薦める5つの理由」という記事を書かせていただきました。5つの理由とは、

  • 新しいことに触れて挑戦できる
  • 景気等に左右されにくい
  • 仕事と日常生活が一致しやすい
  • ブロードバンド・ユビキタス時代への期待
  • ネットワークからつながりを感じる

をあげさせていただきました。情報通信業界はIT業界の中の一部ですべてがIT業界の夢にはつながりませんが、新しいことへの挑戦や日常生活との融合など様々な魅力があると考えています。

(採用の考え方)

グーグルの採用基準」の記事も書かせていただきましたが、採用基準の4つのポイントは、

  • 地頭がいいこと
  • 何かを達成した実績があること
  • コミュニケーション能力
  • 「グーグリネス」あるかどうか

です。「グーグリネス」とは、人に協力することを楽しむ性格、上下関係を意識しない態度、親しみやすさなどからなるとしています。

グーグルの採用の多くは、エンジニアですが、採用基準にエンジニアの資質というよりも人間性に重点を置いています。ここに何かヒントがあるのではないかと思います。

(業界のイメージ)

先日、「IT業界をICT業界と呼んでみたらどうだろうか?」という記事を書かせていただきました。IT業界は既にネガティブなイメージがつきまとっており、情報通信業界等が主に使っているICT(Information and Communication Technology)業界という業界名にしたらどうかという提案をさせていただきました。IT業界と比べると、Communicationという単語が含まれており、つながりを感じる業界でイメージ向上になるのではないかという考え方もあるのではないかと思っています。

(就職と転職の意識の違い)

IT業界への就職と転職の意識の違い」の中では、IT業界に就職する学生と転職する人との意識が違うことを指摘させていただきました。社会人となってみて、IT業界に転職人気は、就職人気よりも高く、社会人を経験した人にとっては、IT業界に魅力的に見えるのかもしれません。

(創意工夫の余地を作る)

ITプロレタリアートは多機能工化で生まれ変わる」の中に書かれていたように、アジャイル手法の活用によって、作業者(エンジニア)の視野を広めることで創意工夫の余地を作る必要性は重要です。エンジニアは3K等と呼ばれるように作業者という発想がありますが、新しい技術を生み出すクリエーターという発想の転換が必要になってきているのかもしれません。

 

では、IT業界の夢とは何なのでしょうか?

ここまでは、自分の過去のブログや知り合いの方のブログを取り上げながら、IT業界の人気の現状を分析してきました。では、ITの夢とは何なのでしょうか?

アップルやグーグルに日本企業は何故勝てないのか?」で書かせていただきましたが、日本企業が勝てない理由の一つに、佐々木 俊尚 (著)の「ウェブ国産力 日の丸ITが世界を制す 」に書かれていた“要素技術の研究が大企業主導型になってしまい、その結果、要素技術が消費者向けのサービスに結びつかない構造にできあがってしまっている点”があると考えています。

しかし、要素技術とベンチャー企業のフロンティア精神を融合させれば、まだまだ世界でも通用するサービスを提供することも不可能ではありません。世界の市場に挑戦していくために、日本のIT業界が企業の規模に関係なく力をあわせる時期がきているのです。

また、「グーグルの創造的破壊とマイクロソフトの挑戦」で書かせていただいたように、グーグルは創造的破壊をしています。グーグルの採用基準にあったように、グーグルは地頭がいいなどの創造性の高い人を採用しています。そういった企業だからこそ、創造性の高いビジネスの展開ができるのです。

IT業界の夢とは、個々の創造力を高め、要素技術とフロンティア精神を融合し、社会に創造的破壊をすることによって世界をリードする新たなイノベーションを生み出していくこと、そんなことが実現できる業界ではないかと感じているところです。


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