2008年版就職人気企業ランキング --低迷するIT企業
MicrosoftのYahoo! 買収提案発表のニュースは衝撃的でした。これまで何度か買収の話は浮上しましたが、今回はGoogle対抗という共通意識から買収は実現するのではないかと予想しています。
最近は、IT関連で新聞のニュースのトップを飾るのも、アップルのiPhoneやGoogleとの提携、そしてMicrosoftやYahoo! 等の海外のIT企業の話題ばかりで、日本のIT企業関連の話題を見かけることは少なくなってきたような気がしています。
週間ダイヤモンド(2008.2.9)に「2008年版就職人気企業ランキング」の特集が組まれていました。米国等ではグーグルやアップル等のIT企業は就職においても超人気企業なのですが、日本のIT企業の人気はどうなのでしょうか?
2008年の就職人気ランキングの傾向
文系男子は、総合商社や金融機関が上位を占め、文系向けにも力をいれてきている松下やソニーそしてシャープ等の電機メーカの上位へのランクインが目につきます。
文系女子は、東京海上日動や三菱東京UFJ等の金融機関、総合商社、そして化学・化粧、食品等の上位が目立ちます。
そして、理系男子は、日立や松下やソニー、そしてシャープ等の上位5社のうち4社が、電機メーカが占め、トヨタやホンダも順位を上げてメーカ人気復活の兆しが顕著に見えます。
上位にランクインされる業界を少し取り上げてみましたが、取り上げられなかったIT業界(情報通信業界を中心に・・)はどうなっているのでしょうか? NTT東日本は採用ゼロの時代に100位圏内から姿を消しましたが、ここ3年間着実に順位をあげてきています。
しかしながら、その他のIT企業の人気のなさが目立ちます。NTTドコモはDoCoMo2.0やグーグルとの提携そしてiPhoneの販売交渉等、話題を提供したのにも関わらず、昨年の20位から80位と大幅にランクを下げています。そしてKDDIやソフトバンクやNTTコミュニケーション等、以前100位以内が常連だった企業を目にすることはできませんでした。学生の多くは携帯電話やインターネットを使い、身近に感じる企業にも関わらず、人気がないのは深刻です。楽天等のウェブサービス系の企業も顔をだしていないのも残念です。
その他、企業向けにシステムソリューションを提供する企業も多くはランクインされない等、IT企業の不人気、そして理系においてもITエンジニアの不人気が目立っています。
テレビでYouTubeが見られるようになり、情報家電のネットワーク化が進んでいます。また、WiiやニンテンドーDSそしてPSP等のゲームもネットにつなぐ時代なりました。そして、携帯電話でワンセグやGPS搭載が当たり前の時代になり、カスタマイズド携帯と呼ばれるように、Web2.0の潮流が携帯電話にシフトしてきています。WiMAXが普及すれば、ワイヤレス・ブロードバンドも享受できる時代になり、2008年はモバイル分野が大きく進化していくことが予想されます。
10年以上前は、インターネットやパソコンを使える人はすごい人(もしくはオタク)と思われ、IT企業で働くことは人より先進的な仕事をするという意味で人気がありました。「「合コンをしたいと思う職業ランキング」からわかるネットとリアルのつながり」でも以前紹介しましたが、上位から医師、弁護士、芸能人、パイロット、そしてIT企業関連も5位に食い込んでおり、30代前後にはまだまだ人気が残っているのかもしれません。
一方、携帯電話やインターネットは生活になくてはならない存在なのですが、誰もが当たり前のように使える身近な存在になりすぎて、先進的な仕事をしているという意味合いはもはやなくなってきていると言えるでしょう。
また、学生が利用しているネットサービスは、mixiやモバゲー等のSNSやブログ、そしてYahooメールやGmail等のWebメール、どれも昔からの日本の大手IT企業が提供しているものではなく、ITは身近になっても、大手IT企業は逆に身近ではなくなってきているという捉え方もできるのではないでしょうか。
IT企業へのネガティブなイメージ
さらに、携帯電話に関しては、ガラパゴス化や情報鎖国の象徴として呼ばれることがあり、ソフトウエアの開発は、インドなどでのオフショアリング等、国際競争という観点からネガティブなイメージをもたれているのかもしれません。
そして、インターネットに関しては、「インターネットに関するネガティブな意見が増えてきた」等でも述べさせていただきましたが、学校裏サイトや出会いサイト等の有害サイトや格差社会を助長、そして、セキュリティの脅威等のネガティブな意見も増えてきています。このことが企業へのマイナスイメージを与えることも否定はできないでしょう。
さらに、新3Kと呼ばれるようにエンジニアは過酷な労働を強いられるというマイナスイメージも否めません。
少し不思議に思うのが、Wii fitやニンテンドーDS等のヒット商品を出している任天堂が何故、文系男子の100位や理系男子の50位等すべてのカテゴリにランクインしていない点です。子どもたちはDSのゲームで遊び、大人たちはWii fit等で健康管理し、DSで脳トレ等幅広い層に人気です。私が今大学生だったら、第一志望に任天堂にしようと思うぐらいです。学生にとっては、子どもの頃のゲームを引退し、まだまだサラリーマンのような健康管理や脳トレも必要ないと考えると学生はゲーム世代の空白期間なのかもしれないと自分では解釈しています。
IT業界の不人気ぶりを自分なりに分析しましたが、先ほど上位にあげた企業は安泰なのでしょうか? 人気の高い金融機関はサブプライムローンの影響で大きな損害を出すところも出てきています。商社は石油価格の高騰や中国産の毒餃子問題、そして、輸入にあたって中国やロシア等のライバル国も増えてきており必ずしも楽ではありません。
メーカもサムソンやアップル等の外資の攻勢等で、ますます国際的なシェア争いは激しくなるものと思われます。食品メーカも上位に顔を出していますが、今回の毒餃子や食品偽造等で、一度信頼を失えばJT(日本たばこ)のような大企業でもブランド回復には時間を要すかもしれないというリスクを覚悟しておく必要があるのかもしれません。
そして放送等のマスコミもNHKのインサイダー取引の問題、そして通信と放送の融合による地上デジタルの再送信や情報通信法によるソフト(番組)とハードの分離等必ずしも追い風ではありません。出版社も再生紙の偽装問題やインターネットの普及に伴う影響で、大きく上昇することは考えにくいでしょう。
ちょっとあえてネガティブな例をあげさせていただきましたが、現在の経済動向や将来の市場を読み、人気に惑わされず、リスクも考えらながら、自分なりの適正や適職を考えていく必要があるのではと考えています。
私が文系出身でIT企業(情報通信系)に仕事をしているからなのかもしれませんが、自分の学生時代の頃と比べて人気低迷が顕著なのをすごく感じています。人気を気にして仕事をしているわけではありませんが、人気が下がれば、必然的に業界の活性化にも結びつかないでしょう。IT企業は、企業のシステムやサービスにおいて大きな位置づけを占めているので、IT業界の人気が復活するよう業界全体でがんばってほしい(自分も含む)と思っています。