テラファブ半導体工場は宇宙データセンターとSpaceXが合体したイーロン・マスクのテラワット級AIインフラ構想の一部
追記:
以下の巨大な規模の宇宙AIデータセンター展開では、日本の電機メーカーが製造販売するパワー半導体に巨大な勝機が来るのはほぼ確実です。
テラファブで製造される半導体「D3」については、どのような日本企業にどのようなチャンスがあるのか?まだ研究中です。
前職でアクセンチュアを調査対象としていた時、普通の調査手法ではなかなか取れない情報ということで、アクセンチュア日本法人のマネジングダイレクターのOB 3名にヒアリングをかけ、さらに追加で米国アクセンチュア本社のマネジングダイレクター経験者1名にもヒアリングをしました。
この時初めて「Inorganic Growth」という言葉があることを知りました。米人英語のヒアリングなので時々聞き取れない言葉があります。彼が何度も繰り返していた、カタカナで書くと「ンノーガニックグロース」という言葉。「オーガニックグロース」(Organic Growth、自然な成長)のことを言っているのだと思っていたのですが何度も録音を聞き返すとそうではない、「非連続的な成長が大事なんだよ」ということを言っていたのです。それが理解できました。「Inorganic Growth」とは尋常なやり方では達成できない、極めて特殊な経営手法によってのみ具現化できる、「頭抜けた成長」を指します。弊ブログのこれまでの投稿で言えば、「AIが生じさせる尋常ではない格差」でもって競合を突き放して成長するパランティアのオントロジー(組織スケールAI)を中核に据えた経営が「Inorganic Growth」「非連続的な成長」がそれにあたります。横並び経営が当たり前の日本企業にはなかなか刺激的な経営発想です。
パランティアが証明する「修復不可能な格差」の事例。日本企業も"AI持てる者"と"AI持たざる者"に二分される
このアクセンチュアの調査をやっていた時、「経営の方向感はどうなっているのか?」を知る必要も出てきました。当然です。AIがなかった時代、従来のメディアの記事等をGoogle検索で1本1本拾っていたのでは間に合いません。この時編み出した手法が「四半期決算の際に最大手経済紙や最大手投資銀行の常連担当者を集めて行われるEarnings Call」のCEO発言のトランスクリプトを8四半期〜12四半期分読み込んで分析すれば良いというものです。これはヒットしました。日本の経済メディアでは全く触れられていない、Wall Street JournalやFinancial Times記事でも見逃しているような重要な戦略、市場アプローチ、想定している新規市場などが、CEOのほんのちょっとした発言からわかるのです。
ということでCEOのトランスクリプト重要という前置きです。
イーロン・マスクの「テラファブお披露目YouTube動画」から取れたトランスクリプトの情報量の巨大さ
私は日本のメディアが報じない情報素材を色々なやり方で入手し、その一部はこのブログで投稿に仕立てて共有します。人と同じことをやっていてはそうしたネタは取れません。情報源にしているものはいくつかありますが、1つはYouTubeです。Tesla(Elon Musk)、SpaceX、フィジカルAI(ロボティクス)などなどは英語のYouTube動画をズラズラ見ながら「あ!」と思ったものを注視し、「これは!」と思ったものをGeminiに見させる、notebookLMにかけるなどして情報素材を揃えます。ここから第一次のAIにかける調査、第二次のAIによるDeep Researchによる深掘り調査に発展します。
イーロン・マスクが具体化に着手している次世代AI半導体製造工場「テラファブ(Terafab)」については日本のメディアでもさわり程度の報道はありますが、なかなか全体像がわかりづらいです。
ブルームバーグ:半導体、足りないなら自前で製造-マスク流炸裂の「テラファブ」とは(2026/4/15)
Seizo Trend:イーロン・マスク氏の「テラファブ」始動、東京エレクトロンや米アプライドなどに接触(2026/4/16)
日経:スペースX、AI半導体巨大工場「テラファブ」の計画判明 投資8兆円(2026/5/7)
そこで、イーロン・マスクの肉声のトランスクリプトということになる訳です。
このBusiness Insiderの記事で触れている
イーロン・マスクの「テラファブ」構想で、注目すべき4つのポイント
マスクは、テキサス州オースティンにある現在は稼働していないシーホルム発電所(Seaholm Power Plant)で講演し、「我々は銀河規模の文明を築き始めている」と語った。
の動画全編が以下です。Tesla公式YouTubeチャンネルで公開されています。この動画の中で、彼がテラファブの全体像について、以下のスライドに見るようにしっかりと説明しているのです。紛れもなくイーロン・マスク自身が語った一次情報。Wall Street Journalなど経済紙一般が報じている二次情報ではありません。
TERAFAB | The Largest Chip Manufacturing Facility Ever
イーロン・マスクが2026年3月22日にテキサス州オースティンで行ったテラファブ構想発表の英文トランスクリプト(テラファブに関する言及の冒頭)
So it's a very big thing by current human standards but but still small in the grand scheme um and uh but but very difficult for humans so to to accomplish this very difficult goal really requires a combination of efforts of SpaceX XAI and Tesla working together to create this epic uh terafab project. So and you know Tesla and XI and SpaceX have all done amazing things uh that people did not think would be done before uh so there's the the Giga Giga Texas fab here uh there's you know the the the Optimus robot that's being built there's a a global supercharging network um there's really quite a lot. And it wasn't that long ago when people thought electric cars wouldn't wouldn't amount to anything um and there were there were basically no electric cars for sale when uh when Tesla started um and people said it was impossible and now Tesla's making 2 million electric cars a year. Yeah and then XAI although it's a new company now part of SpaceX uh has also built the first gigawatt scale compute cluster which uh in record time uh Jensen Wong from Nvidia said he'd never seen anything built so fast in his life before so uh a great compliment from from Nvidia. And then SpaceX uh well I guess you can read it for yourself i you already know i mean the reusable rockets uh people said that reusable rockets weren't possible and even if you did do them they wouldn't be economically feasible so we did them and then we made them economically feasible. Um and now we've landed over 500 times uh and then we did the Falcon Heavy and now we're doing Starship and Starship is a is a critical piece of the puzzle because in order to scale uh compute and scale power you have to go to space which means that you need massive payload to space um and Starship will enable that.
イーロン・マスク「宇宙(軌道上)データセンター」と
「次世代半導体工場テラファブ」の全体像
【AIインフラの概念を根底から覆す「垂直統合」の正体】
もはや一企業の枠を超え、国家級のAIインフラ構築を加速させるマスク氏。地球規模の「テラファブ」から、電力と冷却の問題を解決する「軌道上データセンター」まで、その誇大妄想ではない現実的なロードマップを最新英文資料に基づいて徹底解説します。
NVIDIAが支配するAIデータセンター市場に、マスク氏がいかに「計算資源の供給網」で挑もうとしているのか。製造・エネルギー・通信の枠組みを超える次世代産業構造の全貌に迫ります。
講師:今泉 大輔(株式会社インフラコモンズ 代表)
主催:一般社団法人企業研究会
このイーロン・マスクのテラファブお披露目講演のトランスクリプトの中身は濃密であり巨大です。どれだけ巨大かと言うと、アメリカ合衆国全体の経済の向こう20年分の成長を全部織り込んでいるぐらい巨大です。
巨大なAI半導体製造事業であり(現在のNVIDIAのサイズを軽く凌駕する規模)、
巨大なAIデータセンター事業であり(現在存在している超大型AIデータセンター1GW級の1,000倍であるテラワット級です。原子力発電所1,000基分です)、
巨大な宇宙ロケット運搬事業です(現在のSpaceXの巨大なロケットStarshipが運搬できるペイロードは100トン。イーロン・マスクが構想している宇宙データセンターを実現するには年間1,000万トンのペイロード運搬が必要)。
ということでこの巨大な情報量があるイーロン・マスクのトランスクリプトを手っ取り早くnotebookLMに読ませてスライド化しました。便利な世の中になりました。
そのうち何枚かを共有します。
↑文字化けがあるのはご容赦下さい。AIは9,999の良いところをとって、1の瑕疵には目をつぶらないといけません。
イーロン・マスクはテラファブお披露目講演でまず宇宙の話をしています。宇宙がどれだけ巨大であるか?
↑必要とされるAIデータセンターの規模感が、われわれ日本にいてAIデータセンターに直接的間接的に関わっている人の規模感が最大1GWであるところ、イーロン・マスクはその1,000倍で思考しています。それだけの規模のAIが必要になるという未来の需要から語っています。
↑結局、AIデータセンターの超巨大なものを実現するには、地上で建設していたのでは変圧器、発電所等々が間に合わない。だから宇宙へという発想です。AI半導体製造サプライチェーン(TSMC等)も現在のは小さすぎる。だから自分で作っちゃえという発想です。
こうした発想が「Inorganic Growth」の源流なんだろうと思います。
↑現在のAI半導体は、NVIDIAが設計してTSMCが製造しています。設計はカリフォルニア、製造は台湾です。これを1つの敷地内で行い、毎日毎日改善を繰り返すIterationが不可欠であるとイーロン・マスクは考えています。
実はこのやり方でテスラの自動運転FSD v14.3は実現しています。SpaceXのどでかいロケットの垂直着陸もこうした細かなIterationを高速で繰り返す中で実現しています。中には当然数百万回〜数千万回のシミュレーションが組み込まれます。(人間の積み上げ式の技術改善では追いつくことができない改善手法です)
↑運搬用のヴィークルStarshipをすでに持っており、1年間で100回規模の打ち上げを成功させている実績があることが、なかなか他の企業では敵わない所です。日本ではStarshipの凄さがほとんど報道されていません。
テラファブ構想の全体が見えると、イーロン・マスクがNVIDIA CEOジェンセン・フアンとは全く別な『頭』で、AIデータセンターの未来を構想しており、その規模感はNVIDIAを軽く凌駕するものであることがわかってきます。テラワット級のさらに上のペタワット級まで見据えています。
NVIDIAの次世代AI半導体Vera Rubinはまだ地上のAIデータセンターを想定しており、冷却に新基軸の「45度の温水」を活用して、排熱も使う形で、エネルギー効率を最大化する工夫がなされています。その先のFeynmanもまだ地上を想定しているはず(NVIDIAが軌道AIデータセンターの技術を発表し始めたことと、Feynmanが地上AI DCを想定したものであることとは、話が別。)。
などなどあって、話は尽きません。