【中間管理職のAI活用】自民党総裁選候補が日本国家の成長戦略を論じるにはAIをどう使えばいいのか?
自民党総裁選が始まりました。TVに映った昨日の秋葉原の街頭演説会では、日本の成長戦略を論じている候補がいました。
【自民党総裁選】東京・秋葉原で候補者演説会 小泉進次郎氏【ノーカット】(2025年9月24日)
各候補の下でブレーンとして働き、政策を立案したり周辺の動向等を調査したりするスタッフも、今はてんてこまいなのではないかと推察します。
現在の優れたAIは、国家戦略や個別具体的な政策を立案する際にも、様々な形で、政治家本人やブレーンの方を支援します。以下はそうしたデモンストレーションとして書いた投稿です。
【前】自動車関税25%を回避するトランプ大統領交渉カード:日本が米ヒューマノイド産業に投資→雇用創出←部品供給は日本から
【後】自動車関税25%を回避するトランプ大統領交渉カード:米国で10万人の雇用を創出するヒューマノイド組立工場450億ドル投資の詳細
この時、ChatGPT 4oとDeep Researchを併用して作り上げたのは、米国に相当な金額の投資を行い、米国で雇用を創出し、もって自動車にかけられた25%の関税を回避するための方策として、具体的にどういうものがあるか?その一案として組み上げました。450億ドルの投資を必要とする内容で、当時は巨額な投資だと思いました。今年4月の話です。
果たして、4ヶ月後の8月、最終的には日本から5,500億ドルもの投融資を行うことで決着しました。仮に、最も早期に450億ドルでカードを切っていたなら、5,500億ドルもの巨額にならなかったのではないか?と愚考します。AIを使って早期に立案していれば、有利なタイミングで日本政府がカードを切れた可能性があります。そのように迅速性を競う場面でもAIは有用です。これは戦時でも同様です。
現在のChatGPT 5はより賢くなっており、政策を詰める際にも様々なアプローチが可能です。
ChatGPT 5に高度なプロンプトを考えさせるための原理原則
以下ではケーススタディとして、自民党総裁戦候補のブレーンの方が、ChatGPT 5(有料版)を駆使して、日本の成長戦略(ドラフト)を得るにはどうすればいいのか?をやってみます。
ここでも、最も的確なプロンプトを得るには、ChatGPT 5そのものに考えさせるアプローチを取ります。もはやプロンプトは人間が考えて組み立てるものではありません。優秀な頭脳を持つChatGPT 5に理想的なプロンプトを組むように、的確に指示をすればいいのです。
以下の投稿でもそうしたやり方について触れています。
関連投稿:
【中間管理職のAI活用】日本のメディアが報じる前にマイクロソフトのAIデータセンター速報を詳しく分析する
【中間管理職のAI活用】中国で高まる反日感情をChatGPTリサーチで"リスクスナップショット化"する
【中間管理職のAI活用】総合商社編:中東の物流インフラ案件を瞬足&高精度で発掘するやり方
ChatGPT 5にプロンプトを考えさせる時の原理原則は以下です。
- 自分はどういう立場に置かれており、何をしなければいけないか?明確にChatGPT 5に伝える。(自分に関する情報開示が多ければ多い方が良い。それによりChatGPT 5はより正確にあなたを理解することができ、出力内容もあなたに最適化された内容になる)
- 自分は誰に対してレポート等の提出義務があるか?また提出相手の知的レベル、理解度、背景などはどういうものか?(端的には社長か?事業部長か?コンシューマーか?はたまた総理大臣か?)をChatGPT 5に誤解のないように明確に伝える。
- 成果物をChatGPT 5が生成する際に、インプットを質量とも十分に与える。(ここは自分でよく考えて下さい。どういうインプットを与えれば成果物の精度が高くなるか?)
- 何度も使い回しが効く汎用的なプロンプトを得るのが良いのか?今回限り有効な都度プロンプトがいいのか、ChatGPT 5に明確に伝える。
- 外国語文献等を参照する必要がある場合は、プロンプトも英語で作成した方が、成果物の精度が上がります。
生成されたストラクチャード・プロンプト
さて、次のような、プロンプトを生成するためのプロンプトを作って、ChatGPT 5に与えました。
ある、総裁選の候補のブレーンの一人が、ChatGPT 5をフルに使って、日本国家の成長戦略を描くための手がかりを得る。そのためのプロンプトを作って下さい。 また、生成された各戦略、戦術、政策について、優先順位をつけるための方法を示して下さい。
出てきたストラクチャード・プロンプトは以下です。
① 国家成長戦略を描くためのメタ・プロンプト(日本語)
あなたは、日本の国家成長戦略を設計する経済ブレーンです。対象は自民党総裁選の候補者に示す戦略案です。
タスク:
1. 日本を「再び豊かな国」にするための国家成長戦略を描く。
2. 成長戦略を「戦略 → 戦術 → 政策」の3階層に分けて提示する。
3. 戦略は長期的方向性(10〜20年スパン)、戦術は中期的施策(3〜7年)、政策は短期的実行策(1〜3年)とする。
4. 各階層で、根拠(なぜ必要か)、期待される効果、想定されるリスクを付ける。
フォーカス分野:
- 技術革新(AI、半導体、量子、バイオ)
- エネルギー転換(GX、水素、再エネ)
- 産業構造転換(製造業の高度化、サービス産業の生産性)
- グローバル展開(貿易・供給網、安全保障)
- 人材育成・教育(リスキリング、外国人材活用)
- 地方創生・社会インフラ
出力フォーマット:
【戦略】
- 名称
- 目的
- 根拠
【戦術】
- 名称
- 実行方針
- 期待効果
【政策】
- 名称
- 実施内容
- 実施期間
- 成功指標(KPI)
以上が第一セグメント。以下は第二セグメントです。
② 優先順位をつけるための方法
上記で生成した成長戦略・戦術・政策を、優先順位付けしてください。
評価基準は以下の4つ:
1. インパクト(国家成長に与える規模効果の大きさ)
2. 実現可能性(財政・政治的ハードル、技術的制約を含む)
3. 緊急性(今すぐ着手しないと失われる機会コストの大きさ)
4. 国際的整合性(米国・EU・アジア諸国との協調や摩擦リスク)
手順:
- 各政策を4基準で5点満点評価
- 合計点を算出
- 合計点の高い順に「優先度高/中/低」に分類
- 各分類について簡潔に理由をつける
プロンプトを新しいスレッドに入れた結果
以上の第一セグメントのプロンプトを、ChatGPT 5の新しいスレッドに入れて下さい。以下のような成果物が出てくると思います。(成果物の内容は都度、色々な要素が複合しているため、異なります。それがLLMというものです。)
了解しました。総裁選候補者向けの「日本を再び豊かな国にするための国家成長戦略」を、戦略 → 戦術 → 政策の3階層に整理しました。各階層ごとに目的・根拠・期待効果・リスクを加えています。
国家成長戦略提案:日本を再び豊かな国へ
【戦略】(10〜20年の方向性)
1. 技術立国 2.0 ― フィジカルAI・量子・半導体・バイオによる再興
-
目的: 科学技術を国家成長の基盤とし、世界のイノベーション拠点へ返り咲く。
-
根拠: 米中の技術覇権競争の中、日本は基礎科学力を持ちながら商業化・事業化で遅れ。AI・量子・半導体・バイオで産業優位を確立する必要がある。
2. グリーントランスフォーメーション(GX)によるエネルギー独立
-
目的: 水素・再エネ・原子力の組合せで安定かつ低炭素のエネルギー体制を構築。
-
根拠: エネルギー自給率が低く、地政学リスクに脆弱。産業競争力と安保を両立するための基盤が必要。
3. 生産性大国への転換
-
目的: 製造業の高度化+サービス業の効率化を通じて、低成長構造を打破。
-
根拠: GDPの7割を占めるサービス業の生産性がOECD平均を下回る。AI・自動化導入で潜在成長率を底上げ可能。
4. グローバル・リスク分散型経済
-
目的: 供給網強靱化と新興国との市場開拓。
-
根拠: 米中対立・トランプ関税など保護主義の高まり。多元的サプライチェーンが国家安定の条件。
5. 人材再武装 ― 教育・外国人材・地方活性
-
目的: 労働人口減少に対し、人的資本の最大化と多様化。
-
根拠: 生産年齢人口の減少。AIリスキリングと高スキル外国人の受け入れが不可欠。
【戦術】(3〜7年の施策)
A. フィジカルAI・量子・半導体の国家重点投資
-
実行方針: 研究開発費のGDP比1.5%→2.5%へ。国家主導の「日本版CHIPS法」整備。
-
期待効果: 国内製造業・スタートアップの国際競争力強化。
-
リスク: 投資効率が低いと「官製プロジェクト化」の懸念。
B. GX産業クラスター形成
-
実行方針: 北海道・九州を水素・再エネ拠点に指定。電池・アンモニア燃料技術の商業化支援。
-
期待効果: エネルギー安全保障と新産業の育成。
-
リスク: 技術コスト高と国際規格争いに遅れるリスク。
C. サービス業生産性革命
-
実行方針: 医療・観光・物流にAI・ロボティクスを導入する税制優遇。
-
期待効果: GDP底上げと人手不足解消。
-
リスク: 現場抵抗・デジタル人材不足。
D. インド・中東との供給網同盟
-
実行方針: インド、UAE、サウジとのFTA・技術協力強化。
-
期待効果: 米中摩擦に左右されない市場アクセス確保。
-
リスク: 外交リスク・契約遵守リスク。
E. リスキリング国民運動
-
実行方針: 年間100万人規模の社会人AI教育。大学と企業の「越境教育」モデル導入。
-
期待効果: 労働生産性向上と中高年層の活躍継続。
-
リスク: 教育プログラムの質のばらつき。
【政策】(1〜3年の即効策)
1. 「日本版CHIPS法」創設
-
実施内容: 国内半導体製造に年間1兆円規模の補助金。
-
実施期間: 2026年開始〜2030年目途。
-
KPI: 国内半導体シェア5%→15%。
2. グリーン水素商業化プロジェクト
-
実施内容: 水素サプライチェーン構築、港湾・発電所で実証。
-
実施期間: 2026〜2028年。
-
KPI: 水素発電比率3%。
3. AI導入減税(サービス業向け)
-
実施内容: 中小企業のAI・ロボ導入に即時償却+補助。
-
実施期間: 2026〜2029年。
-
KPI: サービス業労働生産性+15%。
4. サプライチェーン・レジリエンス基金
-
実施内容: 重要部品の二重調達化を支援。
-
実施期間: 2026〜2028年。
-
KPI: 調達依存度を特定国50%→30%以下。
5. 国家リスキリング資格制度
-
実施内容: IT・AI分野で国家認定資格を創設し、就職・昇進と連動。
-
実施期間: 2026〜2027年。
-
KPI: 年間資格取得者10万人。
以上の国家成長戦略のどれをどのように扱うのか?上で出てきた優先順位をつけるための方法も実施して、ご自身で考えてみて下さい。
また、個々の戦略について、工夫すると、かなり詳細な複数年度にまたがるロードマップを作ることもできます。また、具体的な施策について、かなり突っ込んだ報告書も作成できます。ChatGPT 5は、ある意味、政策秘書としては無限の能力を持っています。また霞ヶ関の官僚に依頼するよりも、はるかに精度の高い、細部にわたって抜け漏れのない政策を作ることもできます。既存の政策や法律との整合性ついてもかなり綿密に考え抜くことを命じることもできます。この辺は人間の労働力では人数と時間がいくらあっても足りない所です。ChatGPT 5なら「すぐ」できます。
【セミナー告知】
SSKセミナー - 新社会システム総合研究所
AI を活用した海外市場調査と情報収集ノウハウ
〜ニッチ市場から規制・地政学リスクまでを迅速に把握する最新手法〜
2025年11月 5日(水) 10:00~11:30
講師:株式会社インフラコモンズ 代表取締役 今泉 大輔
会 場 : 会場受講はなしでライブ配信、および、アーカイブ配信(2週間、何度でもご視聴可)
開催日:2025年11月 5日(水) 10:00~11:30
受講料:1名につき 27,500円(税込)
申込と詳細はSSKセミナーのページをご参照下さい。
https://www.ssk21.co.jp/S0000103.php?gpage=25519
講義内容
企業が海外事業を展開するうえで、信頼性の高い市場調査や規制情報の把握は欠かせません。しかし、従来の有料データベースや専門調査会社への依存はコスト・時間の両面で大きな負担となってきました。
本セミナーでは、生成AI を用いた新しい海外市場調査のアプローチを紹介します。具体的には、ニッチ市場の流通構造の把握、金融レポートや調査資料の要点抽出、現地語による情報収集と翻訳要約、M&A候補企業や投資動向の探索、EU 規制の要点整理、業界や国ごとのトレンドモニタリング、さらに防衛・地政学リスクの動向把握など、多岐にわたるユースケースを取り上げます。
各テーマごとに情報源の選定、生成AI を活用した効率的な調査手順、出典確認の方法を具体的に解説し、参加者は終了後すぐに自らの業務へ応用できる知見を得ることができます。経営企画・海外事業・新規事業・調査部門など、日常的に海外情報を扱う方に最適の内容です。
1.イントロダクション
・海外市場調査における生成AI 活用の可能性
・無料版ChatGPT・Gemini の特徴と制約
2.ユースケース別の活用法
・ニッチ市場調査(インドの豆腐流通状況)
・海外金融市場レポートの調査(ドイツ証取の自動車セクター値動き)
・現地語による情報収集と翻訳要約(台湾華語によるTSMC 給与水準)
・M&A 候補企業の探索(ドイツのロボティクス企業買収候補)
・EU 規制の要点把握(EU サイバーレジリエンス法の概要)
・各国・各業界の動向トラッキング(特定国特定業界の情報収集)
・防衛・戦争リスクに関する情報収集(例:ドローン戦術米中比較)
3.まとめと留意点
・情報の信頼性・出典確認の重要性
・無料版AI でできること/できないこと
・実務への応用と今後の展望
4.質疑応答
従来、調査会社に発注すると100万円〜500万円かかっていた海外市場調査を、必要な時に、必要とする人が、直接手を動かして調査する事ができるようになるノウハウを伝授します。
調査のコスト削減ができる意味も大きいですが、業務の現場で必要が出てきた都度、フレッシュな海外情報を手元に入手できること。また、追加の情報ニーズがあればそれもすぐに入手できるという俊敏性が、過去には得られなかったものです。
これにより海外事業に関する意思決定が飛躍的に精度の高いものになります。
ふるってご参加下さい。