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箱根駅伝 黒田選手のガッツポーズと監督の声かけの関係

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2026年の箱根駅伝は青山学院の3連覇という結果で幕を閉じた。5区での逆転劇は箱根駅伝史上、語り継がれるレースになるだろう。

大会終了後、5区を走った黒田選手のガッツポースが話題になった。「相手に失礼だ」という声もあれば「極限状況でお互いの関係性の中で自然と出た行為」という解釈もある。

大会後に黒田選手は「なんかテンションがあがって、ちょっとノリでやってしまった」と語っていた。

私は普段、選手には「常にボールの位置を確認。ガッツポーズをしてる暇はない」と言っているが、この黒田選手のガッツポーズには意味があり、失礼な行為だとは思わない。

この場面を思い出してほしい。黒田選手が先行している工藤選手を追走。早大の花田監督が「下りで離せる。離れてる。黒田も苦しい」という声かけ。

この声はスピーカーを通して、当然黒田選手の耳にも届いている。これを聞いた黒田選手の心情はいかがなものだったろう。自分が黒田選手なら「自分が苦しいとか、余計な事言わないでくれIMG_2225.jpg。なめんなよ」と思う。これを聞いてさらにスイッチが入ったのだろう。

覚えている人も多いだろう。山の神、東洋大柏原選手が5区で先行する選手を追い抜いたときにガッツポーズがでた。後にその理由を訊かれた柏原選手は「柏原は速くないよ」って言われたので、(誰に言われたかは明らかにしていない。おそらく同じ区を走った選手だろう)

と応えていた。両者に共通するのが「なにくそ」というメンタリティー。

黒田選手は中央の監督車、國學院の監督車を追い越した時はガッツポーズは見せていない。そもそも普段からガッツポーズをする選手ではない。それがなぜ早大の監督車に対してだけガッツポーズをしたのか。工藤選手に、ではなく。

それらを考えると自然と答えは出てくる。「俺は苦しくてももっと走れるよ」のガッツポーズだったと解釈する。

あの声掛けがなかったらガッツポーズもなかったろう。

監督の声掛けは何のためなのか、それは自校の選手への励ましやアドバイスが本来的な意味。タイム差など伝えるのは大事だが、「相手がどうしたこうした」は言うべきことではない。早大の花田監督は聡明な指導者。ふだんはそのようなことは言わないだろう。それが優勝を目の前にした時に黒田選手の想定外の走りに焦ってしまったのか。

この場面はスポーツ選手の心理や指導者の心理を学ぶ上で貴重な教材にもなる。このガッツポーズを失礼かどうかと表面的にとらえるのではなく、なぜそうなったのかと深く考えたい。

「声掛け」ということに関しては、原監督の声掛けの内容やタイミング、短文繰り返しの話法はすごい。

箱根駅伝から学ぶことはとても多い。この一文を黒田選手、原監督に見ていただけたら嬉しく思う。青山学院大の皆さん、三連覇おめでとうございます。参加したすべてのランナーの皆さん、お疲れさまでした。最後まで全力で走り抜いたことが本当に素晴らしく、フェアプレーの真髄を見せていただきました。

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