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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

日立エナジーのケーススタディ:AIデータセンター関連 世界の送電変電市場における事業機会をAIで特定する

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さて。最新版のAIを使って、AIデータセンター電力供給市場の事業機会を特定する、それも個別の企業に最適化された形で特定するという企画。その第三弾です。今回は日立エナジーを取り上げます。

日立エナジーは、ご存知の方はご存知、知る機会がなかった方は知らない、スイス・チューリッヒに本社を置く日立グループの企業です。日立製作所によるスイスの重電大手ABBのパワーグリッド事業買収によって2020年に設立されました。完全に海外市場に軸足がある会社です。

送電、変電、配電関連の機器やソリューションを包括的に取り扱う同社にとって、この1-2年で世界的に巨大な市場となったAIデータセンターへの電力供給市場ではどのような事業機会があるのでしょうか?現在世界に存在するどのような電力供給の専門家よりもはるかに多くの技術文書等を学習しており、かつ、周辺領域の事項をも人間の専門家の何十倍も学習している最先端のAIに、分析させ、特定させました。(なお、以下の内容の調査報告書を英語で、専門家向けに書かせることも十分にできます。)

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2026
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【世界のAI特需が生むビジネス機会】
AIデータセンター時代の
電力インフラ戦略
〜世界の事例から学ぶ発電・送電・電力供給の最新動向〜

AI特需の裏で進行する「電力争奪戦」。Grid Bypassやオンサイト発電など、米国テックジャイアントの動向から日本企業のビジネスチャンスを読み解きます。


講師:今泉 大輔(株式会社インフラコモンズ 代表)

主催:SSK 新社会システム総合研究所

日立エナジー:AIデータセンター送変電インフラ市場の把握と北米・欧州・中東における事業機会

1. グローバルにおけるAIデータセンターの拡大とエネルギー需要

AIブームによる需要急増: 近年の生成AIブームにより、データセンター需要は世界的にかつてない規模で拡大している。調査会社のColliers報告によれば、AIの導入拡大がデータセンター需要を160%も押し上げると推計されており、2024年にはこのセクターへの投資額が570億ドルに達する見込みであるhitachienergy.com。これらのAI需要はハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)による大規模データセンター建設ラッシュを牽引しており、例えば今後5年間で米国では25GWものAI専用データセンター容量が新規に稼働する計画で、総投資額は8,000億ドル超に及ぶeetimes.com。こうした投資にはOpenAIやNVIDIAによる大規模プロジェクト、Amazon Web Services (AWS)・Google・Meta等の既存ハイパースケーラーによる拡張が含まれているeetimes.com

「AIファクトリー」の時代: 従来の汎用クラウドから、巨大なAIモデルの訓練・推論に特化したデータセンターへのシフトが起きている。業界ではこれらを工場になぞらえ「AIファクトリー」とも呼び始めており、その規模はかつて巨大とされた100MW級からギガワット級へ拡大しているhitachienergy.com。実際、ある顧客対話ではもはや「データセンター」ではなく「AI工場」と表現され、5年前には100MWでも巨大だったものが、現在ではキャンパス全体で1GWを超える事例すら現れているhitachienergy.com。AI対応のため高性能GPUサーバーを大量に収容する必要があることが背景にあり、電力需要だけでなく消費パターンも変化している。AI処理のワークロードは従来型IT負荷に比べピーク時の消費が大きく変動しやすい点が特徴であり、計算負荷の高い局面で電力需要が急騰・断続的に発生するhitachienergy.com。このため、AI導入が今後のデータセンター電力需要増加の主要因となるだけでなく、負荷の不安定化により電力インフラへの新たな課題も生じている。

ソブリンAI(国家主導AIインフラ)の台頭: ハイパースケーラーと並行して、各国政府が自国主導のAI基盤(ソブリンAI)整備に乗り出している点も世界的な潮流である。例えば欧州連合(EU)では「デジタル主権」確保を掲げて国家的なAI/HPCインフラへの投資を拡大しており、フランスのMistral AIやドイツのLETIなど域内独自のクラウド・AI基盤構築が推進されているeetimes.com。中東諸国でも同様に、AIインフラを戦略資産と位置づける動きが加速している。NVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏が「ソブリンAIインフラの構築は"核開発よりも重要"」と語ったように、AI計算資源を自国で掌握することが国家競争力の鍵との認識が広まっているeetimes.comeetimes.com。米国・中国がこの分野で先行する一方、欧州や中東も大規模投資により追随し、**「AIインフラ=新たな国家基盤」**との見方が各国政府に共有されつつありますeetimes.comeetimes.com

電力需要と環境目標への影響: データセンター全体の電力消費量も急拡大している。国際エネルギー機関(IEA)によれば、2024年時点で全世界のデータセンターが約4.15億MWh(415TWh)を消費しており、世界全電力消費の約1.5%に相当するiea.org。今後は年平均15%の成長率で2030年には約2倍の945TWh(全体の3%弱)に達するベースシナリオが示されているiea.org。特にAI向けのアクセラレータ搭載サーバの電力は年30%のペースで伸びる見通しであり、2030年までのデータセンター電力需要増加の約半分をAI用途サーバーが占めると分析されていますiea.org。地域別に見ると米国と中国で世界の80%近い増加分を占める見込みで、米国では2024年比+130%(約2,400億kWh増)、欧州でも+70%(約450億kWh増)の伸びが予想されていますiea.org。米国では2030年に国内電力需要の約12%をデータセンターが占めるとも推計されeesi.org、持続可能なエネルギー確保と排出削減の観点からもデータセンター業界は大きな影響力を持つようになります。

以上のように、AI時代のデータセンター市場はハイパースケーラーによる前例のない設備投資各国政府の戦略的関与によって急成長しており、それに伴い巨大的かつ変動性の高い電力需要が生まれています。この需要拡大を支えるエネルギーインフラの整備は喫緊の課題であり、特に送電・変電(送変電)分野における技術と投資がボトルネックとなりつつあります。

2. AIデータセンターを支える送変電インフラの重要性と課題

データセンター=電力網の新たな主役: データセンターはもはや電力需要の"脇役"ではなく、"主役"として電力網計画の中心に据えられつつありますhitachienergy.com。従来は比較的予測可能な大規模負荷でしたが、AI時代のデータセンターは需要変動が激しい動的な負荷へと変貌していますhitachienergy.comギガワット級の接続容量を要求するデータセンターキャンパスが登場し、電力会社・規制当局・インフラ企業はこれまでにない規模と複雑さに直面していますhitachienergy.com。例えばAIワークロードは従来になく急激で予測困難な負荷変動を引き起こしhitachienergy.com、電力網側は周波数・電圧を安定させるため瞬時に対応しなければなりません。このように電力品質安定供給の面で新たな課題が顕在化しており、送変電インフラには従来以上の柔軟性と信頼性が求められています。

グリッド接続の遅れと柔軟性不足: 実際に多くの主要データセンター市場では、「必要なタイミングで十分な系統接続が確保できない」という問題が顕在化していますhitachienergy.com。資金や用地、IT機器調達の目途が立っても、地域の送電網に新施設を繋ぐ許可・設備増強に時間がかかり、計画遅延を招くケースが増えていますhitachienergy.com。米国でも送電網のボトルネックや許認可の遅れがデータセンター展開のタイムラインを脅かす要因となっておりeetimes.com、欧州でもアイルランドなどでは電力不足からデータセンター新規稼働を一時停止する措置が取られた例があります(※電力事業者EirGrid社によるダブリン地域の接続保留など)。このため**「柔軟性」こそが鍵であり、電力網側・データセンター側の双方で需給調整能力を高めることが必須となっていますhitachienergy.comhitachienergy.com。データセンター事業者は従来想定外だった蓄電池併設自家発電(太陽光・風力・水素対応ガス発電機等)の導入、さらには需要応答への参加なども視野に入れ、ピーク緩和や非常時供給に協力し始めていますhitachienergy.comhitachienergy.com。これにより大規模データセンター自らが「電力網を支える存在」**へと役割転換しつつあり、エネルギー供給に柔軟性と余裕を持たせる取り組みが各地で進展しています。

HVDC(高圧直流送電)の役割: 広域の電力輸送大容量連系を可能にするHVDC技術は、AIデータセンター時代において戦略的に重要です。再生可能エネルギー源はしばしば需要地から遠隔地に位置するため、遠距離・大容量を低損失で送電できるHVDCが重宝されています。例えば中東のネオン(NEOM)スマートシティ計画では、総容量9GWのHVDC Light®システム(三系統×3GW)を構築し、約650km離れた他地域からクリーン電力を送ることで、NEOM内の大規模なAIデータセンター群や都市需要を100%再生可能エネルギーで賄おうとしていますhitachienergy.comhitachienergy.com。このHVDCプロジェクトはOxagon(NEOM内の開発地区)とヤンブー地域を結ぶ世界初の525kV, 3GW級VSC-HVDCリンクであり、2027年の完成を目指していますhitachienergy.comhitachienergy.com。HVDCはまた、系統間連系にも不可欠で、中東~北アフリカ~欧州間など国際間での電力融通にも活用が広がっています(例:サウジアラビア~エジプト間の初のHVDC連系プロジェクトsaudigulfprojects.com)。このようにHVDCは大容量データセンターに安定電力を届ける動脈として、そして広域で再エネ電力を融通するインフラとして、その重要性を増しています。

グリッド接続ソリューションと課題解決: 急増する需要に応えるためには、送変電インフラ側でもイノベーションが求められています。モジュール化・標準化による建設迅速化がその一つです。例えば欧州でもっとも系統容量が逼迫している地域の一つであるアイルランド・ダブリン近郊では、コンパクトなモジュール型変電所を採用することで、限られた土地でも短工期でハイパースケール・キャンパスへの接続を実現したケースがありますhitachienergy.com(Castlebagot変電所プロジェクト)。このプロジェクトは従来の送電網設計の常識を覆す取り組みであり、ガス絶縁開閉装置(GIS)や変圧器を統合したプレハブ変電モジュールによって土地面積を極小化し、かつ設置の迅速化を可能にしましたhitachienergy.com。このようなモジュール型・工場組立済みの変電ソリューションは、都市部や従来工事が困難な地域での適用が進みつつあり、米国・欧州・アジア各地のプロジェクトで展開されていますhitachienergy.com。加えて、デジタル技術の活用もインフラの柔軟性向上に寄与しています。スマート変圧器やデジタル連系保護装置、予知保全システムといったデジタル監視・制御技術により、リアルタイムで需要変動に対応し、最適な電力フローを維持することが可能となりますhitachienergy.com。エネルギーとITを統合し需給を賢く調整するデジタルグリッドこそ、AI時代のレジリエントな送変電インフラの鍵と言えますhitachienergy.comhitachienergy.com

総じて、AIデータセンターの成長を支えるには送変電インフラの強化・革新が不可欠です。**大容量送電(HVDC等)**で電力を遠隔地から融通し、モジュール型変電設備で迅速に接続容量を提供、デジタル技術で変動負荷に柔軟対応し、需要側も蓄電池等で協調するといった包括的アプローチが求められますhitachienergy.comhitachienergy.com。この分野に豊富な技術・実績を持つ企業には、新たな市場機会が広がっています。次章では、北米・欧州・中東それぞれの地域における市場動向と、日立エナジーとして取り得る具体的な機会を分析します。

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3. 地域別市場機会の分析

3.1 北米市場 - 政策支援によるハイパースケール拡大と競争環境

政策動向: 北米(特に米国)はハイパースケーラー主導のAIデータセンター拡大で世界をリードしており、政府の産業政策もこれを後押ししています。2022年成立のCHIPS法インフレ削減法(IRA)によって、AI関連半導体の国内生産やデータインフラ投資に多額の補助が投入され、「次世代AI計算資源を米国内に確保する」戦略が明確に打ち出されていますeetimes.com。これに伴い、ハイパースケーラー各社と電力会社・自治体の協調投資も促進されていますeetimes.com。例えばテキサス州やバージニア州ではデータセンター誘致に積極的で、税控除や電力インフラ整備支援策が取られています。また州レベルで再生エネ電力とのマッチング(Renewable Portfolio Standardの強化等)も進み、ハイパースケーラーが100%再エネ電力利用を公約できる環境整備が図られています。もっとも、急増する需要に対し送電インフラ整備が追いつかず、送電網の渋滞や許認可の遅れが課題となっていますeetimes.com。米国エネルギー省も送電網近代化プログラムを展開し、許可手続の迅速化や系統強化への補助を行っていますが、大規模データセンター集積地(例:バージニア州「データセンター・アレイ」地域など)では数年単位の接続待ちも現状起きています。このため高速に接続可能なモジュール変電設備需要応答契約など、新しい方策への関心が高まっています。

主要プレイヤーと競争状況: 北米市場の中心プレイヤーは、需要側ではハイパースケーラー企業(AWS、Microsoft、Google、Meta等)です。彼らはAI需要を満たすべく自前の大規模データセンター建設を加速させており、自社キャンパス内に数百MW級の増設を繰り返しています。これらIT大手に加え、データセンター専業のコロケーション事業者(Equinix、Digital Realty等)もハイパースケール案件やAI専用設備に投資を拡大しています。一方、供給側(送変電インフラ)での競合はグローバル重電メーカーおよびエンジニアリング企業です。日立エナジー(旧ABB)は北米市場で大規模変圧器・開閉器・HVDC技術に強みを持ちますが、主要な競合としてSiemens Energy(独)やGE Grid Solutions(米)、さらに変電工事全般でのEPCプレイヤー(例えばBurns & McDonnell、Black & Veatchなど)が挙げられます。特にSiemensは米国内の製造拠点拡充を図っており、GEも地元企業として電力会社等との関係が深いです。また新興の競合要素として、配電インフラ分野のIT化を進める企業群(Schneider ElectricやEaton等)がデータセンター向け電源ソリューションで存在感を示しています。ただし超高圧送変電やHVDCといった領域では、依然として日立エナジーが市場リーダーであり、北米の超高圧設備増強ニーズに応えうる限られた企業の一つですhitachienergy.com。北米では国産志向もあり、現地生産能力やサービス網の有無が競争上重要です。

日立エナジーが提供可能な価値: 北米市場で日立エナジーは技術力・実績・現地展開の面で多くの強みを活かせます。まず技術面では、HVDC伝送大容量変圧器における世界最先端のポートフォリオを持ち、例えば米国初の幹線系統級HVDCプロジェクトや洋上風力連系プロジェクト等で豊富な実績があります。また電力品質ソリューション(アクティブフィルタ等)により、AIデータセンター特有の高調波・瞬時電圧低下対策を提供できる点も付加価値です。日立エナジーは世界最大の変圧器・高電圧機器メーカーでありhitachienergy.com、同社の製品は多くの北米電力会社で標準採用されてきた信頼があります。さらに直近では、NVIDIA社と協業して次世代800V直流電源アーキテクチャを開発するなどhitachienergy.comデータセンター内部の電力供給効率化にも貢献する先進的取り組みを行っています。これはラックレベルまで直流高電圧を導入し損失を削減するもので、AIファクトリーの大電流ニーズに応える革新的ソリューションですhitachienergy.com。経営戦略面では、日立エナジーは米国電力網の将来需要に備えて総額10億ドル規模の現地生産投資を行うと発表しておりhitachienergy.com、バージニア州に大型変圧器工場を新設する計画などが進行中です(州政府の誘致案件governor.virginia.gov)。これら投資により現地製造比率を高め、納期短縮と政策適合を図っています。さらに2025年にはBlackstone系ファンドとの戦略提携で北米の電力設備サービス会社Shermco社に出資参画し、データセンター含むインフラの保守サービス体制も強化していますhitachi.comhitachi.com。以上のように、日立エナジーは北米において最先端技術・大規模供給能力・現地密着サービスを備えており、AIデータセンター需要に包括的価値を提供できる立場にあります。特に迅速なグリッド接続ソリューション(モジュール変電所など)や信頼性重視のHVDC連系は、北米各地の大型プロジェクトで有望な商機となるでしょう。

3.2 欧州市場 - デジタル主権の追求と持続可能性ニーズ

政策動向: 欧州では「デジタル主権(データ主権)の確立」がAIインフラ政策のキーワードです。EUは米中に対抗し、自前のクラウド・AI基盤を育成するためGAIA-Xプロジェクトなどを推進し、域内企業によるデータセンター建設やオープンクラウド標準化を支援しています。また環境面での規制も欧州は先行しており、EUグリーンディールや各国の気候目標に沿ってデータセンターにも高い省エネ・カーボンフリー基準が求められます。例えばデンマークやスウェーデンでは廃熱利用義務や再生可能エネルギー電力の直接調達が推進され、アイルランドでは新規データセンターのグリッド接続に厳しい許可要件(需要家側でバックアップ電源を持つこと等)が課されました。EUはデータセンター気候中立パクトを産業界と策定し、2030年までにカーボンニュートラル運営を達成するよう誘導しています。一方で、欧州の課題は投資規模の小ささと市場の分散ですeetimes.com。多額の公共資金投入が米中ほど容易でなく、各国間で電力網・規制が異なることから、マルチGW級の統一的プロジェクトは進みづらい状況ですeetimes.com。そのためフランスやポルトガル、英国などが個別にギガワット級キャンパス計画を発表していますが(例:フランスMGX&Mistralキャンパス1.4GW、ポルトガルSINES 1.2GW、英国AI Growth Zone約1.1GWなどeetimes.com)、総和でも北米に遠く及ばない規模ですeetimes.com。EUレベルでは**AI法(Artificial Intelligence Act)**による生成AI規制など、むしろ倫理・法規面の枠組み作りを先行しており、これが産業推進には両刃の剣となっていますeetimes.com(規制遵守コストが増大し不確実性要因となる一方、倫理面のリーダーシップ確立には寄与)。

主要プレイヤーと競争状況: 欧州のAIデータセンター市場は、需要側では米国系ハイパースケーラー(AWS, Google, Microsoft等)の欧州リージョン展開が圧倒的ですが、それに加え欧州独自プレイヤーも登場しています。例えばOVHcloud(仏)やDeutsche Telekom(独)などが主導するクラウド、あるいは欧州のHPCプロジェクト(例:EuroHPCによるスーパーコンピュータ)は「ソブリン」色が強いです。また近年、UAE系ファンドのMGXがフランスでMistral AIと提携してキャンパス建設を計画するなどeetimes.com、中東資本の進出も見られます。供給側では、欧州にはSiemens Energyボッシュシュナイダーエレクトリックといった強力な電力・設備メーカーが存在し、データセンター向け電源ソリューションでも実績があります。特にドイツ勢は欧州域内のHV機器市場で大きなシェアを占め、地理的近さも武器に各国プロジェクトへ参画しています。一方、日立エナジー(旧ABB)の欧州プレゼンスも高く、ABB時代からの納入実績(多くの欧州主要系統の変電所・HVDC連系に参画)により高い信頼を得ています。競争環境として特徴的なのは、欧州では環境性能規格適合性が発注要件で重視される点です。たとえば開閉器のSF6ガス排出規制が強まっており、SF6フリー機器を持たないメーカーは参入が難しくなりつつあります(EUでは今後数年で高電圧機器からのSF6全廃を目指す動き)。また送配電網事業者(TSO/DSO)との協調も不可欠で、各国の系統運用者(フランスRTE、ドイツTenneT等)が入札者と長期連携する形でプロジェクトが進む傾向があります。このため欧州では地場に根付いた関係性環境適合技術が競争上の重要ポイントです。

日立エナジーが提供可能な価値: 欧州市場において日立エナジーは技術革新力実績で多くの付加価値を提供できます。まずHVDC技術では、欧州初の商用HVDCリンクを手掛けて以来、北海沿岸の洋上風力連系(北欧-中欧間のNordLinkやBritNed、SudLink計画など)に深く関与してきました。これは大量の再エネ電力を需要地へ送る点でデータセンター電源にも直結する意義があります。AIデータセンターが増える欧州主要国(アイルランド、スウェーデン、デンマーク等)は再エネ潜在力が高い地域とも重なるため、HVDCによるグリーン電力供給で日立エナジーは貢献できます。また環境技術では、日立エナジーのEconiQ®シリーズ(SF6フリー開閉装置等)は欧州の厳格な規制をクリアするソリューションです。例えば72~170kVクラスのガス絶縁開閉装置についてSF6を用いない製品を既に実用化しており、これは環境規制を順守しつつ信頼性を確保したいデータセンター事業者にとって魅力的です。さらにエネルギー効率の観点では、送変電設備のデジタル制御や高度な設計で損失低減・効率向上を実現できます。欧州のデータセンター運営者はPUE(電力使用効率)の改善に敏感であり、高効率変圧器や配電網最適化によるPUE向上支援も提供価値となります。実績面でも、先述のアイルランドの例のように土地制約下でのモジュール変電所設置を成し遂げた経験hitachienergy.comは欧州他地域でも横展開可能です。例えばロンドン近郊やフランクフルト郊外など、用地が限られつつ需要が逼迫するエリアで同様のソリューションが有効でしょう。加えて、日立エナジーは欧州各国の送電事業者との長年の協業関係が強みです。多数の欧州拠点・人員を配置し、現地企業とのコンソーシアムも組みやすい体制にあります。これは入札要件でローカル調達が重視される場面で有利に働きます。総じて日立エナジーは、欧州市場で環境性能×信頼性×実装スピードを備えたソリューションプロバイダーとして差別化でき、ハイパースケーラーや地元事業者との協働を通じ市場機会を捉えることが可能です。

3.3 中東市場 - オイルマネーによるAIインフラ投資とグリッド需要

政策動向: 中東(特に湾岸産油国)は、オイルマネーをAIインフラへ転用する世界有数の積極投資地域となっていますeetimes.com。サウジアラビアとUAEは政府系ファンドの潤沢な資金を背景に、自国を**「デジタル時代のエネルギー輸出国」に変貌させる構想を掲げていますeetimes.com。各国の国家ビジョン(サウジ「Vision 2030」、UAE「デジタル経済戦略」等)においてAI・データセンターは重点分野に位置づけられ、国家主導での大規模プロジェクトが乱立しています。例としてサウジの公共投資基金(PIF)はDataVoltHumainといったプログラムの下、2034年までに累計6.6GWのコンピュート容量を構築し世界のAI計算リソースの6%を担う計画ですeetimes.com。UAEではムバダラ投資公社傘下のG42/MGXが主導し、BlackRock・Microsoft・NVIDIAとの提携により米国Aligned社のデータセンター事業(5GW超の容量)を約400億ドルで買収するなど、グローバル展開も視野に入れた戦略投資が行われましたeetimes.com。各国政府はAIを国家の権力基盤と位置づけており、AIモデルの開発・データ利用を自国で完結できる「ソブリンAI」体制確立に向けた法整備(データ主権法等)や人材育成にも注力していますglobaldatacenterhub.com。総じて中東では2025年上期だけで750億ドル以上のAI・データセンター投資コミットメントが表明され、もはや「フロンティア市場」ではなく主戦場の一角を占めていますglobaldatacenterhub.com。各国のナショナルAI戦略**(サウジのSDAIA、UAEの国家AI計画など)が明確にインフラ整備目標を掲げ、政府・民間を挙げて突き進む勢いが特徴です。

主要プレイヤーと競争状況: 中東のAIデータセンター市場のプレイヤー構成は他地域とやや異なり、政府・政府系ファンドが圧倒的な推進役です。サウジではPIF傘下企業が国内データセンターパークを展開し、UAEではG42(アブダビのAI企業)が中心となっていますeetimes.com。このほかカタール投資庁(QIA)やクウェート投資庁なども域内外の関連企業に投資していますintrol.com。他方でグローバルIT企業もこの市場に深く関与し始めました。MicrosoftやOracleはUAEやサウジにリージョンクラウドを開設し、NVIDIAやAMDは各国政府とAIハードウェア供給・人材育成で提携関係を築いていますeetimes.com。こうした官民連携により、例えばG42-マイクロソフトのJVによる政府向け「ソブリンクラウド」の構築introl.comや、サウジPIFとNVIDIAの協業による国内GPU供給網整備などが進展していますeetimes.com。競争状況を見ると、中東では需要が巨大かつ政策的に後押しされているため、競争というよりは協調による市場創造が起きている段階です。世界のクラウド大手も中東資本との連携を模索し、逆に中東側も欧米の先端技術企業への投資(上述のAligned買収など)で影響力を強めていますeetimes.com。インフラ供給側では、メガプロジェクトゆえに複数社協業が一般的で、電力では日立エナジー・Siemens等、土木建設ではBechtel・Aramco系施工会社等が参加し、大プロジェクトを分担するケースが目立ちます。中国勢については、中東諸国は技術面では依存度を下げたい思惑があり、米国の輸出規制の影響もあって最先端AIチップや電力機器は米欧日企業に依存しているのが実態ですeetimes.com(例えばHuaweiは通信やクラウドサービスで中東進出していますが、AI半導体ではNVIDIAに依存)。とはいえ、中東各国は将来的な自給も視野に入れており、長期的には競争環境が流動化する可能性もあります。

日立エナジーが提供可能な価値: 中東市場で日立エナジーは大規模プロジェクト対応力先進技術で大きな価値を発揮できます。まず実績面では、前述のサウジNEOM向けHVDC 9GWプロジェクトを手掛けておりhitachienergy.com、これにより中東地域でのHVDC導入パイオニアとしての地位を確立しています。さらにサウジ電力会社(SEC)とはHVDC技術開発で包括的提携のMOUを締結しておりsaudigulfprojects.com、国策プロジェクトに深くコミットしています。実際に日立エナジーはサウジ~エジプト間のHVDC連系やGCC湾岸電力網の増強にも参画しておりsaudigulfprojects.com域内送電インフラの要所を支えています。こうした実績は、中東諸国が目指す**「グリーンエネルギー回廊」構想(太陽光発電からデータセンターへの直接供給、あるいは国際連系)において、日立エナジーが引き続き中核を担えることを意味しますglobaldatacenterhub.com。技術面でも、日立エナジーのHVDC Light®や高効率変圧器は高温多塵な中東環境でも信頼性高く稼働するよう設計されています。砂漠地帯の過酷な条件下では冷却や絶縁に工夫が必要ですが、同社は中東各国で変電所設備の納入実績を重ねており、50℃超の高温環境対応設計や塩害対策**などノウハウを有しますintrol.com(中東特有の気候リスクに対処する専門知識)。また中東諸国は再エネ(太陽光・風力)大規模導入を進めており、電力安定化装置(FACTS)や大型蓄電システムの需要も増えます。日立エナジーはSTATCOMやグリッドバッファ(大容量BESS)のソリューションを持ち、再エネとデータセンターを繋ぐグリッド安定化に寄与できます。加えてビジネスモデル面では、官民パートナーシップ(PPP)が盛んな中東で、柔軟に協業体制を構築できることも強みです。例えば政府案件では地場大手建設会社や欧米ゼネコンとコンソーシアムを組み入札しますが、日立エナジーは既にNEOM案件での経験を積んでいます。さらにUAEなどでは地元企業(G42系列等)とMOUを結び、共同でデータセンター用電力ソリューションを開発する余地もあります。総合すると、日立エナジーは中東において「国家的メガプロジェクトの信頼できるパートナー」として、HVDCを筆頭に世界最大級規模の電力ソリューションを提供できる立場にあり、これ自体が他社には真似できない差別化ポイントです。

4. パートナーシップ・JV・政府連携の可能性

AIデータセンターと送変電インフラの分野では、一社単独ではなく複数のステークホルダーが連携するビジネスモデルが成功の鍵となりますhitachienergy.com。日立エナジーにとっても、以下のようなパートナーシップ戦略が有効と考えられます。

  • ハイパースケーラーとの協業: 電力インフラ企業がデータセンター計画の初期段階から参画し、共同で最適設計を行うことでWin-Winが可能です。例えば主要ハイパースケーラーとはグローバル協定を結び、各社の新設データセンターに日立エナジーの標準モジュール変電所や電力管理システムを導入してもらう枠組みが考えられます。既に一部では、データセンター事業者が電力会社・機器メーカーとトリプレット協議を行い、グリッド接続を迅速化する試みが始まっていますhitachienergy.com。日立エナジーは各社との実績を重ね、**「電力インフラ相談役」**として信頼を築くことで優先的な受注機会を得られるでしょう。

  • 地場企業とのジョイントベンチャー(JV): 特に中東・アジアなど新興市場では、現地有力企業とのJV設立が有効です。政府系ファンドや国営企業が主導する案件では、JVを通じ現地調達や技術移転の姿勢を示すことが受注に繋がりますintrol.com。例えばサウジでは送配電網大手のSECとのMOU締結saudigulfprojects.comを足掛かりに、現地製造・組立拠点の共同運営を検討しても良いでしょう。UAEでもMubadalaやG42との協業で、湾岸市場向けのデータセンター電力ソリューションJVを立ち上げれば、地域内の需要を広く取り込める可能性があります。

  • 政府・公共機関との連携: 欧州ではEUや各国政府の産業助成金プログラムへの参画、中東では政府直轄プロジェクトへの技術顧問参加など、公的セクターとの太いパイプが重要です。日立エナジーはCOPなど国際会議でエネルギー転換へのコミットを発信しており、各国の気候基金やインフラ基金と協働する道も拓けます。例えば欧州の欧州復興基金からデータセンター周辺の電力強化予算を引き出す際、日立エナジーがコンソーシアムリーダーとして申請する、といったスキームも考えられます。また規制策定にも積極的に関与し、自社の知見を政策提言に生かすことで、標準策定にリードタイムを持つことも可能です。

  • 技術パートナーシップ: NVIDIAとの協業のように、IT領域のリーダー企業と組んで新技術を市場開拓する戦略も有効ですhitachienergy.com。例えばマイクロソフトとはマイクログリッド制御で提携し、GoogleとはデータセンターAIによる電力需給予測で共同研究するといった具合に、異業種連携で革新的サービスを創出できます。加えて、データセンターのバックアップ電源をディーゼルから燃料電池・水素発電に転換する分野では、水素サプライヤーや燃料電池メーカーとのパートナーシップが考えられます。これにより脱炭素型の非常用電源ソリューションを提供し、環境志向の顧客ニーズを取り込むことができますhitachienergy.com

このように多面的な連携を通じて、日立エナジーは単なる機器サプライヤーに留まらずエコシステムの一角として価値を提供できます。他セクターとの境界を越えたパートナー戦略により、市場機会を最大化できるでしょう。

5. 今後の事業戦略に向けた提言

最後に、以上の分析を踏まえ日立エナジーが送変電分野でAIデータセンター市場の機会を捉えるための戦略提言をまとめます。

  1. 「柔軟性ファースト」のインフラ戦略: 柔軟で拡張可能なインフラ構築を最優先方針とします。具体的には、モジュール型変電所や蓄電池併設ソリューションを標準提案とし、計画段階からデータセンター需要の変動に即応できる設計を提案します。柔軟性を組み込んだ戦略は**「後悔のない戦略(no-regrets strategy)」**であり、将来需要が不確実でも適応できるからですhitachienergy.comhitachienergy.com。この方針を全社の製品・サービス開発に浸透させ、柔軟性=日立エナジーのブランド価値として打ち出します。

  2. 地域別アプローチの深化: 北米・欧州・中東それぞれの事情に合わせたローカライズ戦略を徹底します。北米では現地生産投資を継続し、Buy America規制等に対応しつつ、ハイパースケーラー本社への営業を強化します。欧州では環境規制を味方につけ、EconiQ®などグリーン製品による差別化を図ります。中東では政府案件の上流工程から関与できるよう、政府系ファンドや王族層とのネットワークを活用したトップ営業を展開します。それぞれの市場で最も重視される価値提案(北米=信頼性と迅速供給、欧州=持続可能性と効率、中東=大規模実行力と最新技術)を磨き上げることが重要です。

  3. 製品・サービス提供モデルの拡張: 単に機器を販売するだけでなく、ソリューション提供型ビジネスへの転換を進めます。例えば「データセンター電力インフラ一括提供サービス」として、設計・機器・施工・保守まで含めた包括契約モデルを提案します。さらに需要家側に立って電力需給をマネジメントするエネルギー・アズ・ア・サービス(EaaS)モデルも検討します。日立エナジーとブラックストーンとの提携で強化されたサービス部門hitachi.comhitachi.comを活用し、データセンター運営者に予防保全やエネルギー最適化の付加サービスを販売することで、長期的な収益源を確保します。

  4. パートナー戦略の推進: 第4章で述べたパートナーシップの機会を具体的施策に落とし込みます。優先順位として、まず主要ハイパースケーラーとのグローバル提携を目指します(既存のつながりを持つ日立製作所本体のIT部門等とも連携)。次に中東・アジアなど成長市場で旗艦プロジェクトを共に創るローカルパートナーを見極め、JVや合弁による拠点設置を検討します。また大学・研究機関とも協働し、AI時代の電力課題(例:パワーエレクトロニクス技術や電力インフラのAI制御)に関する共同研究を行い、技術リーダーシップを発揮します。

  5. 実績の可視化と発信: 最後に、各地域での成功事例を積極的にマーケティング活用します。NEOMでのHVDCプロジェクトや欧州のモジュール変電所導入事例、北米でのNVIDIA協業による効率化事例など、ストーリー性ある実績を情報発信し、日立エナジーの存在感を高めます。特に経営層や政策立案者に響くメッセージとして「日立エナジーは持続可能なデジタル社会の実現を電力面から支えるパートナーである」ことを訴求し、ブランドイメージ向上と案件獲得の好循環を作ります。

以上、AIデータセンター(ハイパースケーラー及びソブリンAIインフラ)に関連する送変電分野での日立エナジーの海外市場機会について、グローバル動向、技術課題、地域別の状況分析、協業可能性、そして戦略提言を取りまとめました。エネルギーとデジタルが交錯する転換期において、日立エナジーはその独自技術とグローバルネットワークをテコに、新たな価値創造と社会貢献を実現できるポジションにあります。本報告が経営戦略立案の一助となれば幸いです。

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