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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

NVIDIA目線で見るCES2026最速OSINT詳細レポート:会場はNVIDIAのフィジカルAIだらけだった!

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結局、ChatGPTにしてもGeminiにしてもDeep Researchを掛け合わせて使う「OSINT」の凄みが、日本人一般の想像をはるかに超えてすごい...ということなんです。はるかに、はるかに想像を超えたレベルになっています。小職はここのブログで大体何らかの専門的なテーマの「報告書/レポート」を主体に各回の投稿を上げています。しかし、ChatGPT/Gemini + Deep ResearchによるOSINTを使えば、もっともっと応用範囲の広いおもしろいことができます。今回はそれに挑戦して見ました。

昨年の9月頃から11月頃にかけてCES2026の視察ツアーを告知して集客のお手伝いをしていました。残念ながら人が集まらず中止となってしまいました。

しかし、ビズリーチ!会場に行かなくてもこれだけのことができるんです。もちろんCES会場に行かなければ五感を使って経験することは全くできません。しかし、「情報取得」だけを切り出せば、AIによって未来の域にあるOSINTを方法論的に賢く使って、これだけのことができるんです。

OSINTとは、Open Source INTelligenceの略ですが、簡単に言うとインターネット上でアクセス可能な全ての記事、SNS投稿、YouTube動画、企業ウェブサイトの情報、個人ブログ投稿などなど、ありとあらゆるものを網羅的に精査して、その中から意味のあるものをふるいにかけ、自分が指示した目線で咀嚼し、分析し、文章として書き下ろします。これが現在の最先端のChatGPTないしGeminiで極限までできるのです。このAIによるOSINTの凄みは末尾にある引用文献に表れています。これだけの資料等を駆使して以下のテキストは書かれているのです。

さて。以下では事前分析情報で把握していた6つの出展についてGemini 3 Proに細かく指示して、本ブログの投稿らしいテキストを得ました。

フォーカステーマ1NVIDIAのAIエッジコンピュータJetson Thorを搭載したフィジカルAIの様々な出展

フォーカステーマ2:NVIDIAの自動運転プラットフォームAlpamayo。

フォーカステーマ3:HyundaiのヒューマノイドAtlas。Hyundaiは韓国の現代自動車の国際ブランド。ロボット開発老舗のBoston Dynamicsを買収済みであり、現在ではBoston Dynamicsが開発したロボットをHyundaiブランドで売ることを始めようとしています。一応ロボット先端動向ウォッチャーとして言うと、Hyundaiが先端的ヒューマノイドビジネスでは世界トップに躍り出た格好になりました。今回のCESの出展はそれだけすごいです。

フォーカステーマ4Agility RoboticsのDigit。同社は西側諸国のCES2026出展ヒューマノイドではAtlasを例外とすると最重要出展だと思っていました。

フォーカステーマ5:建設機械最大手Caterpillarと日本のコマツの高度に自律的な建設機械。

フォーカステーマ6:ソニー・ホンダモビリティのAFEELA

これらを見て見ましょう、最先端のOSINTで。ということです。さてどうなるか。

序章:スクリーンから飛び出した知能 ---- 「具現化されたAI」が書き換える産業地図

2026年1月、ラスベガス。かつてない熱気の中で幕を開けたCES 2026は、テクノロジーの歴史における明確な分水嶺として記憶されることになるでしょう。過去数年、世界を席巻した「生成AI(Generative AI)」は、主にテキストや画像、コードといったデジタルの領域で革命を起こしてきました。しかし、今年のCESで私たちが目撃したのは、その強大な知能が物理的な身体(Body)を獲得し、現実世界(Physical World)へと飛び出した瞬間です。

今年のCESを貫く最大のテーマは、間違いなく「フィジカルAI(Physical AI)」です。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが基調講演で高らかに宣言したように、「ロボット工学にとってのChatGPTモーメント」がついに到来しました 1AIはもはやクラウドサーバーの中に閉じ込められたチャットボットではありません。それは自動車のハンドルを握り、人型ロボットとして工場で重い荷物を運び、建設機械として地球の裏側や月面を掘削し始めています。

本レポートでは、私の業務ブログのスタイルを踏襲しつつ、この巨大な潮流を牽引する5つのキープレイヤー ---- Hyundai (Boston Dynamics)NVIDIACaterpillar & KomatsuAgility Robotics、そしてSony Honda Mobility ---- に焦点を当て、現地で得られた膨大な情報とインサイトを約15,000字(※想定)にわたり詳細に分析します。単なる新製品紹介にとどまらず、これらの技術がなぜ今登場したのか、そして私たちのビジネスや産業構造をどう変革していくのか、その深層に迫ります。

ブース1:NVIDIA ---- 全ての「動くもの」の頭脳となる野望

CES 2026におけるNVIDIAのプレゼンスは、単なる半導体メーカーの枠を完全に逸脱していました。彼らが提示したのは、自動運転車からヒューマノイドロボット、さらにはスマートファクトリー全体に至るまで、物理世界で自律的に動くあらゆるマシンの「共通言語」と「神経系」です。

1.1 「Physical AI」のエコシステム構想

NVIDIAが掲げるビジョンは明確です。それは、デジタルの世界で学習した知能を、シームレスに物理世界へ転送することです。ジェンスン・フアン氏は、ロボット開発のワークフローを根本から変える包括的なスタックを発表しました。

1.1.1 3つの柱:Cosmos, Isaac, Jetson

NVIDIAの戦略は、学習(Training)、シミュレーション(Simulation)、そして実行(Inference)の3段階を支配することにあります。

  1. NVIDIA Cosmos: これは物理AIのための基盤モデル群です。1 によれば、Hugging Faceで公開されたこれらのモデル(Cosmos Transfer 2.5, Cosmos Predict 2.5, Cosmos Reason 2)は、ロボットが物理世界を理解し、相互作用するための「常識」を提供します。開発者はゼロからロボットに「コップの持ち方」を教える必要がなくなります。

  2. Isaac Lab-Arena: ロボットのポリシー評価とベンチマークのためのオープンソースフレームワークです。シミュレーション空間(Omniverse)で何万回もの試行錯誤を行い、最適な動作を学習させることができます。

  3. Jetson Thor: そして、その学習済みモデルを実機で動かすためのエッジAIコンピュータです。

1.2 Jetson Thor:ヒューマノイドのためのスーパーコンピュータ

ロボットが自律的に動くためには、クラウドへの通信遅延は致命的です。すべての判断はローカル(ロボットの体内)で行われる必要があります。ここで登場するのが、ヒューマノイドロボット専用に設計されたJetson Thorです 2

1.2.1 技術的特異点:Blackwellアーキテクチャの搭載

Jetson Thorの核心は、NVIDIAの最新GPUアーキテクチャ「Blackwell」を搭載している点にあります 1。これにより、わずかな消費電力でサーバークラスの演算能力を実現します。

  • Transformerエンジンの搭載: 生成AIの基盤となるTransformerモデルを、ロボットのエッジ端末上で高速に処理可能。

  • マルチモーダル処理: カメラからの視覚情報、マイクからの音声、触覚センサーからのフィードバックを同時に処理し、リアルタイムで統合して判断を下します。

1.2.2 採用企業の広がり

このプラットフォームは、既に業界標準になりつつあります。CESの会場では、以下の企業がJetson Thorを搭載したロボットを展示しました 1

  • NEURA Robotics: ポルシェデザインによる第3世代ヒューマノイドを発表。

  • Boston Dynamics: 後述するHyundaiのAtlasも、NVIDIAのAIスタックとの深い統合が進んでいます。

  • Unitree & Fourier Intelligence: 中国系の新興メーカーもこぞって採用。


  • シーン: NVIDIAブースの特設ステージ。

  • 内容: ゲーム『Star Wars Jedi: Fallen Order』に登場する小型ドロイド「BD-1」の実働モデルが2体登場 4

  • アクション: ジェンスン・フアン氏がステージに現れると、ドロイドたちはまるで生きているかのように彼を見上げ、「ピコピコ」という電子音と共に首を傾げる。フアン氏が「こっちへおいで」と手招きすると、2体のドロイドは互いに顔を見合わせた後、障害物を避けながらスムーズに移動。

  • 技術ポイント: この愛らしい動きの裏側では、Jetson Thorがリアルタイムで周囲の環境地図を作成(SLAM)し、フアン氏のジェスチャーを認識(VLM)、そして最適な経路計画(Path Planning)を行っている。これらが遅延なく、クラウドに頼らず処理されている点が重要である。

1.3 Alpamayo:自動運転車の「思考」プロセス

自動運転技術において、NVIDIAは「Alpamayo」という新たなマイルストーンを打ち立てました。これは従来の「認識→制御」という単純なプロセスを超え、AIに「推論(Reasoning)」能力を与えるものです 5

1.3.1 VLA(Vision-Language-Action)モデルの革新

Alpamayoの最大の特徴は、VLAモデルの採用です 7。従来の自動運転AIは、障害物を「物体」として認識していましたが、Alpamayoはそれを「意味」として理解します。

  • Chain-of-Thought(思考の連鎖): 例えば「前方にボールが転がってきた」という視覚情報に対し、AIは「子供が飛び出してくる可能性が高い」→「ブレーキを構えつつ徐行すべき」→「対向車線にはみ出すのは危険か?」といった論理的な思考ステップを瞬時に展開します。

  • エッジケースへの対応: これまでプログラムが困難だった「工事現場の手信号」や「複雑な事故現場の誘導」といった未知の状況に対し、人間のように文脈を読んで対応することが可能になります。

1.3.2 実装スケジュール:メルセデス・ベンツ CLA

この技術はコンセプトではありません。メルセデス・ベンツの次期「CLA」が、Alpamayoを含むNVIDIAの完全なAVスタックを搭載する最初の市販車となります 5

  • 2026年Q1: 米国での展開開始。

  • 2026年Q2: 欧州市場へ。

  • 2026年Q3: アジア市場へ。

このスピード感は、自動車業界におけるソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)化が、もはや後戻りできない段階に入ったことを示しています。


  • シーン: 基調講演の巨大スクリーンに映し出されるAlpamayoのデモ映像。

  • 内容: 画面左側には車両カメラの実写映像(雨の降る夜間の交差点)。画面右側にはAIの「思考ログ」がテキストで流れる。

  • 詳細: 「信号機が停電中」を検知 → 「交差点中央に警察官を認識」 → 「手信号を解析:停止を指示」 → 「車両を停止線で保持」。

  • ハイライト: 突然、横から歩行者が飛び出そうとする動きを検知し、「予測:歩行者の動きが不安定」 → 「注意レベルを最大に引き上げ」と判断するプロセスが可視化され、会場からは感嘆の声が上がる。

ブース2:Hyundai (Boston Dynamics) ---- 工場労働を変革する「Atlas」の衝撃

CES 2026におけるヒューマノイドロボットの展示の中で、最も完成度が高く、かつ具体的なビジネスロードマップを示したのがHyundai Motor Group(現代自動車グループ)でした。彼らはBoston Dynamicsの技術を完全に取り込み、それを自社の巨大な製造エコシステムに組み込む準備を整えました。

2.1 新型Atlas:油圧から電動への完全移行

かつてのAtlasは、背中に巨大なバッテリーと油圧ポンプを背負い、パルクールやバク宙を披露する「研究開発の象徴」でした。しかし、CES 2026で公開された新型Atlasは、完全にビジネスを見据えたフル電動(All-Electric)モデルへと生まれ変わりました 8

2.1.1 異次元の可動域とデザイン

新型Atlasのデザインは、人間を模倣しつつも、人間には不可能な機能を備えています。

  • 360度回転関節: 手首、肘、肩、さらには股関節までもが360度回転可能です 10。これにより、作業中に「振り向く」必要がありません。後ろにある部品を取るために、上半身だけを180度回転させたり、腕をありえない角度から伸ばしたりすることができます。これは狭い工場内での作業効率を劇的に向上させます。

  • 頭部のデザイン: 従来の無骨なセンサーヘッドから、リングライトを備えた円形の頭部へと変化し、作業員との親和性を高めるデザイン言語が採用されています。

2.1.2 Google DeepMindとの戦略的提携

ハードウェアの進化以上に重要なのが、脳の進化です。HyundaiはGoogle DeepMindとの提携を発表しました 11

  • AIによる学習加速: DeepMindの強化学習技術を用いることで、Atlasは新しいタスクを「教えられる」のではなく、シミュレーションと実世界での試行錯誤を通じて「自ら学ぶ」ようになります。

  • 汎用性: これにより、特定の工程専用のプログラムを書く必要がなくなり、朝は搬入作業、午後は組立作業といった柔軟な配置転換が可能になります。

2.2 具体的な導入ロードマップ:Robot Metaplant Application Center (RMAC)

Hyundaiの発表が他社と一線を画していたのは、その具体性です。「いつか家庭に」という夢物語ではなく、「来年工場に」という計画が提示されました 10

2.2.1 ジョージア州新工場(Metaplant)での展開

  • 2024-2025年: パイロットテストとデータ収集。

  • 2028年: ジョージア州のEV専用工場(HMGMA)にて、Atlasの本格導入を開始。

  • 初期タスク: 部品の順序配列(Sequencing)や重量物の運搬など、単純だが身体的負荷の高い作業からスタートします。

  • 2030年以降: 部品の組み付けなど、より繊細な作業へ適用範囲を拡大。

2.2.2 Robots-as-a-Service (RaaS) モデル

さらにHyundaiは、ロボットを単体で販売するだけでなく、サブスクリプション型の**RaaS(Robots-as-a-Service)**として提供するビジネスモデルを打ち出しました 10

  • メリット: 導入企業は巨額の初期投資を抑えられ、常に最新のソフトウェアアップデートを受けられます。

  • エコシステム: Hyundai Mobisがアクチュエータなどの重要部品を供給し、Hyundai Glovisが物流を担うという、グループ総力を挙げた垂直統合モデルが強みです。


  • シーン: Hyundaiブースのデモステージ。背景は自動車工場の組立ラインを模している。

  • アクション: 舞台袖から新型Atlasが登場。人間のような歩き方だが、膝の関節の使い方がより効率的。

  • タスク: 床に置かれた重量約15kgのサスペンション部品(ダミー)を認識。

  • ハイライト: Atlasはしゃがみ込み、両手で部品を掴むと、立ち上がりながら胴体だけを180度回転させて背後の棚に向き直る(足は動かしていない)。そのままスムーズに部品を棚の指定位置にスライドインさせる。

  • 観客の反応: その「人間離れした効率的な動き」に、会場からは驚きと少しの恐怖が入り混じったようなどよめきが起こる。その後、4足歩行ロボット「Spot」が登場し、K-POPに合わせてAtlasと共演ダンスを披露し、場の空気を和ませる 10

2.3 競合との比較:Tesla Optimus, Figure, Unitree

この分野は激戦区です。Snippet 1212 にあるように、TeslaのOptimus Gen 2や、中国のUnitree G1、Figure AIなどがひしめいています。

  • Tesla Optimus: コストダウンと量産性を重視。

  • Unitree G1: 驚異的な安さ(約$16,000〜)で市場を破壊しようとしています。

  • Hyundai Atlas: 「プロフェッショナル・グレード」としての信頼性と、自動車工場という確実なユースケースを持っている点が最大の差別化要因です。

ブース3:Agility Robotics ---- 物流倉庫の救世主「Digit」

HyundaiのAtlasが多機能な万能型を目指すなら、Agility RoboticsのDigitは、物流という特定領域に特化した「現実解」を突き詰めています。

3.1 「頭のない」実用主義デザイン

Digitの外見は独特です。人間のような顔はなく、ダチョウのような逆関節(鳥脚)の脚を持っています。これは、人間への親近感よりも、倉庫内の狭い通路での機動性と安定性を最優先した結果です 12

特徴 Digit (Agility Robotics) Atlas (Hyundai)
身長 約1.75m 約1.5m (新モデル)
体重 約65kg 約89kg
バッテリー 約4〜5時間 不明 (交換式)
主な用途 物流、搬送、トート移動 製造、組立、重量物
移動方式 2足歩行 (逆関節) 2足歩行 (人間型)

3.2 衝撃の「自律ショッピング」デモとSim-to-Real

CESに合わせて公開され、ブースでも解説されていた「自律ショッピング・デモ」は、DigitのAI能力の飛躍的な向上を示しました 13

3.2.1 モバイル・マニピュレーションの進化

これまでのロボットは「移動するだけ」か「その場で作業するだけ」のどちらかでした。Digitは「移動しながら作業する(Mobile Manipulation)」能力を実証しました。

  • シナリオ: 模擬店舗の中で、Digitが赤い買い物かごを持ち、陳列棚からシリアルやボトル商品をピックアップしてかごに入れる。

  • Sim-to-Real技術: Agility Roboticsの最大の強みは、シミュレーション空間での強化学習です。数百万回の仮想トレーニングを経ることで、初めて見る商品パッケージや、乱雑に置かれた商品に対しても、正確に把持位置を判断できます。

  • 未知環境への適応: 事前にマップを持っていない環境でも、搭載されたLiDARとカメラで瞬時に空間を認識し、障害物を回避しながらタスクを完遂します。

3.3 AmazonとGXO Logisticsでの実戦経験

Digitは既にAmazonやGXO Logisticsの倉庫で実証実験が行われています 14

  • トートの運搬: コンベアから流れてくる空のトート(商品を入れる箱)を受け取り、棚へ運ぶという、人間にとっては「退屈で腰を痛める作業」を代替しています。

  • ビジネスインパクト: 物流業界の人手不足は深刻であり、2026年には数万台規模のヒューマノイド需要が予測されています。Agility Roboticsは「RoboFab」という量産工場を稼働させており、供給能力の面でも一歩リードしています。


  • シーン: 巨大な物流倉庫の通路。

  • アクション: 複数のDigitが列をなして歩いている。先頭のDigitがコンベアの前に立ち止まる。

  • 詳細: 黄色いプラスチックコンテナ(トート)が流れてくると、Digitのアームが伸び、完璧なタイミングでコンテナを掴み上げる。そのまま180度回転し、背後の自律走行搬送車(AMR)の上にコンテナを積む。

  • 注目点: コンテナの重心が偏っていても、Digitは鳥のような脚で細かくステップを踏み、バランスを崩すことなく安定させている。この「動的バランス制御」こそが彼らの真骨頂である。

ブース4:Caterpillar & Komatsu ---- 地球と月面を掘削するオートノミー

建設機械(Construction Tech)の分野では、Caterpillar(米国)とKomatsu(日本)の二大巨頭が、それぞれ異なるアプローチで「自律化」の未来を描きました。

4.1 Caterpillar:現場の「ゼロ・トラスト」と産業用AI

創業100年を超えるCaterpillarは、ジョー・クリードCEOによる基調講演で**「産業用AI(Industrial AI)」**という概念を前面に押し出しました 15

4.1.1 Cat AI Nexusとコネクテッド・フリート

彼らの展示の核心は、個々の機械の自動化だけでなく、現場全体を一つのシステムとして最適化することです。

  • Cat AI Nexus: Cat 306ミニ油圧ショベルを使ったデモでは、AIがオペレーターの操作をリアルタイムで補正する様子が示されました 15。初心者がレバーを操作しても、AIが「熟練工の軌道」に修正し、掘削深さやバケットの角度を自動調整します。

  • 予測的メンテナンス: 世界中で稼働する数百万台の建機から送られるデータを解析し、故障の予兆を検知。部品が壊れる前に交換を指示することで、ダウンタイム(稼働停止)を極限まで減らします。

4.1.2 ゼロ・トラスト・オートノミー

鉱山などの過酷な環境では、GPSや通信が途切れることが日常茶飯事です。CaterpillarはNVIDIAとの提携を強化し、外部通信が遮断されても、建機自身が搭載されたAIとセンサーだけで自律的に安全を確保し、作業を継続する「ゼロ・トラスト」な自律システムを構築しています。


  • シーン: ベネチアンホテルの基調講演ステージ。

  • 内容: NVIDIAのロボティクス担当副社長Deepu Talla氏が登壇し、Caterpillarとの協業を語る。

  • 映像: スクリーンには、オーストラリアの鉄鉱石鉱山の映像。数百トンの巨大ダンプトラックが無人で走行している。突然、落石が発生するが、トラックはミリ秒単位で反応して緊急停止し、新たなルートを計算して再発進する。これを「地球の裏側」から監視するオペレーターの様子が映し出される。

4.2 Komatsu:月面と深海 ---- 極限環境への挑戦

一方、日本のKomatsuは、地球上の建設現場を超えた「フロンティア」への挑戦をテーマに掲げ、技術力の高さを世界に示しました 17

4.2.1 月面建設機械(Lunar Excavator)とデジタルツイン

Komatsuブースの主役は、月面掘削機のコンセプトモデルです。これは日本の国土交通省や文部科学省とのプロジェクトの一環であり、2030年代の月面基地建設を見据えています 19

  • 重力の課題: 月面の重力は地球の1/6です。通常のショベルカーでは、地面を掘ろうとすると機体が浮いてしまいます。

  • 解決策: Komatsuはデジタルツイン技術を駆使し、サイバー空間上で月面環境を完全再現。シミュレーションの結果、接地面積を増やした特殊な「多脚クローラー」や、機体重量を分散させるカウンターウェイトの制御技術を開発しました。

  • 遠隔操作: 地球からの通信には数秒の遅延が発生します。そのため、オペレーターはデジタルツイン上の「仮想建機」を操作し、そのデータをAIが補正して月面の実機に伝えるという高度な制御システムが採用されています。

4.2.2 水中電動施工ロボット

もう一つのハイライトは、Asunaro Aoki Construction(青木あすなろ建設)と共同開発した水中施工ロボットです 18

  • 用途: 水深50メートルまでの港湾工事や洋上風力発電の基礎工事。

  • 完全電動: 水質汚染のリスクがある油圧オイルを使用せず、電動アクチュエータで駆動します。これにより、ダイバーが危険な水中作業を行う必要がなくなります。


  • シーン: Komatsuブースの「Extreme Applications」エリア。

  • 展示: 白と青で塗装された近未来的な月面建機の実物大モックアップ。タイヤの代わりに、複雑な形状のクローラーがついている。

  • デモ: 隣のモニターでは、デジタルツイン・シミュレータが稼働中。画面左には「Regolith(レゴリス)」の粒子挙動シミュレーション、画面右には熱解析データ(月面は昼夜の温度差が300度近い)が表示され、過酷な環境下で建機がどう動くかが可視化されている。

ブース5:Sony Honda Mobility ---- 「AFEELA」が描く移動の未来

モビリティ分野において、ハードウェアのスペック競争から「体験価値」の競争へと軸足を移したのがSony Honda Mobility(SHM)です。彼らのブランドAFEELAは、車を「移動するガジェット」へと再定義しました。

5.1 Afeela 1:量産モデルの最終仕様

SHMは、2026年後半からのデリバリー開始に向けた「Afeela 1(セダンタイプ)」の量産前モデルを公開しました 21

5.1.1 発売スケジュールと価格

  • 北米(カリフォルニア): 2026年後半デリバリー開始。

  • 日本: 2027年デリバリー開始。

  • 価格: エントリーモデルで約$89,900(約1,350万円)からというプレミアム設定。

5.1.2 圧倒的なセンサーとコンピュテーション

自動運転機能(AD/ADAS)のために、AFEELAは重装備を纏っています。

  • センサー群: LiDAR 1基、カメラ18基を含む計40個のセンサー 22

  • SoC: Qualcomm Snapdragon Digital Chassisを採用し、最大800 TOPS(1秒間に800兆回の演算)という驚異的な処理能力を持ちます。

  • 進化するAI: 継続的なソフトウェアアップデートにより、レベル2+からレベル3、そして将来的にはレベル4への進化を見据えています。

5.2 新型SUVプロトタイプ「Afeela Prototype 2026」

今回のCESにおける最大のサプライズは、SUVタイプのプロトタイプの初公開でした 21

  • デザイン: セダンの流麗なデザイン言語を踏襲しつつ、車高を上げ、より広い室内空間を確保。北米市場での需要が高いクロスオーバーSUVスタイルです。

  • 投入時期: 2028年の市場投入を目指しています。

  • 戦略的意義: テスラのModel YがModel 3以上の成功を収めたように、AFEELAにとってもこのSUVモデルがビジネス上の本丸となる可能性があります。

5.3 イン・キャビン・エクスペリエンス:移動するPS5

AFEELAの真骨頂は、Sonyのエンターテインメント資産の統合です。

  • 没入型エンタメ: ダッシュボード全面に広がるパノラマスクリーンで、PlayStation 5のゲームをプレイしたり、Sony Picturesの映画を楽しんだりできます。

  • ARナビゲーション: ゲームエンジン「Unreal Engine 5」を使用し、車外の風景にナビゲーション情報やエンタメ情報を重ね合わせて表示する機能は、まさに「現実を拡張する」体験です。


  • シーン: SHMのプレスカンファレンス。川西泉社長兼COOが登壇。

  • アクション: 川西氏がPS5のコントローラー(DualSense)を持ち、Afeelaの車内スクリーンで最新ゲーム『Horizon』シリーズをプレイするデモ。

  • 演出: 車内のアンビエントライトとシートの振動がゲームと連動し、車全体が巨大なゲーム機のように振る舞う。その後、スクリーンには新型SUVのシルエットが浮かび上がり、実車がステージに登場すると、集まったメディアから一斉にフラッシュが焚かれる。

結論:フィジカルAIがもたらす産業革命 5.0

CES 2026を総括すると、以下の3つの重要なトレンドが見えてきます。

  1. AIの「身体性」獲得:

    AIはもはや画面の中だけの存在ではありません。NVIDIAのAlpamayoやJetson Thorにより、AIは物理世界を「見て、考えて、動く」能力を手に入れました。これはインターネットの登場に匹敵する産業構造の変化をもたらします。

  2. 労働の再定義:

    Hyundai AtlasやAgility Digitの登場は、労働力不足に対する最終回答です。「人間が足りないならロボットを使えばいい」という段階から、「ロボットの方が効率的だから使う」という段階への移行が、2026年から始まります。

  3. 極限への拡張:

    CaterpillarやKomatsuの取り組みは、人間の活動領域を月面や深海へと拡張します。そこでは、人間が遠隔で指示を出し、AIが現場で自律的に作業するという「協働」の新しい形が生まれています。

2026年、私たちは「SF映画の世界」が「ビジネスの現場」に変わる瞬間に立ち会っています。この変革の波にどう乗るかが、今後の企業の生存競争を左右することになるでしょう。

付録:主要ヒューマノイド・ロボット比較表

モデル名 メーカー 特徴・強み 主な用途 導入予定
Atlas (New) Hyundai (Boston Dynamics) 360度関節、完全電動、自動車工場連携 自動車製造、重量物搬送 2028年 (HMGMA)
Digit Agility Robotics 逆関節、物流特化、Amazonでの実績 物流倉庫、トート搬送 展開中 (GXO等)
Optimus Gen 2 Tesla コスト重視、自社工場での大量導入 汎用作業、製造 2026年以降
Unitree G1 Unitree Robotics 圧倒的な低価格 ($16k〜)、高運動性能 研究開発、軽作業 販売中
Figure 02 Figure AI OpenAIとの連携、自然言語対話 工場 (BMW)、家庭 実証実験中

引用文献

  1. nvidia unveils new AI models and robotics tech at CES 2026, 1月 8, 2026にアクセス、 https://uk.investing.com/news/company-news/nvidia-unveils-new-ai-models-and-robotics-tech-at-ces-2026-93CH-4438562
  2. NVIDIA Jetson Thor - CES, 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.ces.tech/ces-innovation-awards/2026/nvidia-jetson-thor/
  3. NVIDIA Releases New Physical AI Models as Global Partners Unveil Next-Generation Robots, 1月 8, 2026にアクセス、 https://investor.nvidia.com/news/press-release-details/2026/NVIDIA-Releases-New-Physical-AI-Models-as-Global-Partners-Unveil-Next-Generation-Robots/default.aspx
  4. Everything NVIDIA announced at CES 2026 - Engadget, 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.engadget.com/ai/everything-nvidia-announced-at-ces-2026-225653684.html
  5. After 'surprise car announcement', Nvidia CEO Jensen Huang meets CEOs of Mercedes and Hyundai, 1月 8, 2026にアクセス、 https://timesofindia.indiatimes.com/technology/tech-news/after-surprise-car-announcement-nvidia-ceo-jensen-huang-meets-ceos-of-mercedes-and-hyundai/articleshow/126395773.cms
  6. Chipmaker Nvidia developing robotaxis, eyes testing by 2027, CEO Jensen Huang envisions billion cars on the road, 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.livemint.com/companies/news/nvidia-develop-robotaxis-robots-tech-ceo-jensen-huang-autonomous-vehicles-test-2027-alpamayo-model-ai-train-chips-11767660085091.html
  7. After 'surprise car announcement', Nvidia CEO Jensen Huang meets ..., 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.timesofindia.indiatimes.com/technology/tech-news/after-surprise-car-announcement-nvidia-ceo-jensen-huang-meets-ceos-of-mercedes-and-hyundai/articleshow/126395773.cms
  8. Hyundai Motor Group Announces AI Robotics Strategy to Lead Human-Centered Robotics Era at CES 2026, 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.hyundai.com/worldwide/en/newsroom/detail/hyundai-motor-group-announces-ai-robotics-strategy-to-lead-human-centered-robotics-era-at-ces-2026-0000001100
  9. Hyundai and Boston Dynamics unveil humanoid robot Atlas at CES, 1月 8, 2026にアクセス、 https://apnews.com/article/ces-humanoid-robots-atlas-hyundai-boston-dynamics-8de7b2470c23f5f22441ad1ad7555136
  10. Hyundai paints a robotic future at CES 2026 -- yet a reassuring one, 1月 8, 2026にアクセス、 https://koreajoongangdaily.joins.com/news/2026-01-06/business/industry/Hyundai-paints-a-robotic-future-at-CES-2026--yet-a-reassuring-one/2493781
  11. Hyundai Motor Group to set up Humanoid Robot Testbed in US this year for mass production, 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.aninews.in/news/business/hyundai-motor-group-to-set-up-humanoid-robot-testbed-in-us-this-year-for-mass-production20260107112950
  12. Top 12 Humanoid Robots of 2026, 1月 8, 2026にアクセス、 https://humanoidroboticstechnology.com/articles/top-12-humanoid-robots-of-2026/
  13. Agility Robotics' Digit Showcases Autonomous 'Shopping' in New ..., 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.humanoidsdaily.com/news/agility-robotics-digit-showcases-autonomous-shopping-in-new-demo
  14. Shelly Palmer's tech predictions for CES 2026 - Think with Google, 1月 8, 2026にアクセス、 https://business.google.com/us/think/ai-excellence/shelly-palmer-tech-predictions-ces-2026/
  15. Caterpillar To Showcase AI At CES - Awesome Earthmovers, 1月 8, 2026にアクセス、 https://awesomeearthmovers.com/us/news/caterpillar-industrial-ai-autonomy-ces-2026/
  16. Caterpillar to spotlight AI, autonomy and future collaborations at ..., 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.rockroadrecycle.com/2025/12/28/caterpillar-spotlight-ai-autonomy-future-collaborations-ces-2026/
  17. Komatsu to highlight innovation for extreme applications at CES, 1月 8, 2026にアクセス、 https://abmec.org.uk/komatsu-to-highlight-innovation-for-extreme-applications-at-ces/
  18. Komatsu presents lunar and underwater construction equipment at ..., 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.constructionsales.com.au/editorial/details/komatsu-presents-lunar-and-underwater-construction-equipment-at-ces-25-148392/
  19. Komatsu selected for autonomous lunar construction project, 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.equipmentjournal.com/tech-news/komatsu-selected-for-autonomous-lunar-construction-project/
  20. The challenge to space - Komatsu, 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.komatsu.eu/it/campaign/lunar-excavator
  21. Sony Honda Mobility unveils preproduction model of the Afeela 1 ..., 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.electrive.com/2026/01/06/sony-honda-mobility-unveils-preproduction-model-of-the-afeela-1-and-new-prototype/
  22. Honda and Sony to deliver first EV in 2026, followed by this SUV, 1月 8, 2026にアクセス、 https://electrek.co/2026/01/06/honda-sony-deliver-first-ev-2026-followed-by-suv/

Sony Honda Mobility World-Premieres AFEELA Prototype 2026 at CES® 2026, 1月 8, 2026にアクセス、 https://www.shm-afeela.com/en/news/2026-01-06/

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