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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

イーロン・マスクが数十億体の普及を想定するTesla Optimusをロボット工学的に読み解く

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Teslaが開発するヒューマノイドロボット「Optimus」は、同社のAIおよび自動運転技術を基盤に、製造業や家庭内での作業を自動化することを目的としています。その設計と機能は、ロボット工学の最新技術を結集したものとなっています。

1. ハードウェア仕様と設計

1.1 サイズと重量

  • 身長約173cm(5フィート8インチ)

  • 重量約73kg(160ポンド)

  • 最大速度約8km/h(5mph)

  • 最大積載重量約20kg(45ポンド)

  • 最大デッドリフト約68kg(150ポンド)

1.2 関節自由度(DoF)

  • 合計40DoF

    • 各6DoF×2

    • 各6DoF×2(合計12DoF)

    • 各6DoF×2

    • 胴体:2DoF

    • :2DoF

1.3 アクチュエータとセンサー

  • アクチュエータTesla独自設計のアクチュエータを使用し、精密な動作制御を実現しています。(今泉注:アクチュエーターについては末尾に詳細情報)

  • センサー手指には11の自由度を持つ新設計のハンドと、精密な物体操作を可能にする触覚センサーが搭載されています。

2. ソフトウェアとAI統合

2.1 制御システム

  • AIチップTeslaの自動運転技術を応用したAIチップとニューラルネットワークを搭載し、視覚認識や環境ナビゲーションを行います。

  • 学習能力強化学習と模倣学習を組み合わせ、複雑なタスクを少ない人間の介入で習得します。

2.2 トレーニングインフラ

  • Dojoスーパーコンピュータ高精度なシミュレーションと実世界のデータを活用し、TeslaのDojoスーパーコンピュータでトレーニングされています。

3. センサーと知覚システム

  • 視覚センサー深度カメラや高解像度の長距離LiDARを統合し、複雑な環境下での操作能力を向上させています。

  • 触覚センサー手指には11の自由度を持つ新設計のハンドと、精密な物体操作を可能にする触覚センサーが搭載されています。

4. 応用展開と今後の展望

  • 製造業での活用Optimusは、危険または反復的な作業を自動化することで、労働力不足や技能ギャップの解消に貢献することが期待されています。

  • 家庭内での活用掃除、料理、洗濯などの家事を自律的に行う能力が開発されており、家庭内での実用化も視野に入れられています。

  • 将来的な展望Elon Musk氏は、Optimusが将来的に人間の生活を支援するパートナーとして広く普及することを目指しており、価格帯は2万ドルから3万ドルを想定しています。

5. 参考文献

Wevolver: Tesla Bot a.k.a Optimus - Technical Specifications
ROBOTS: Your Guide to the World of Robotics - Optimus (Tesla Bot)
Not a Tesla App: Tesla Unveils Optimus Robot Gen 2
Wikipedia: Tesla Dojo
Business Insider: Elon Musk dreams of thousands of robots working in factories


付録:Tesla独自設計のアクチュエーターについて

◎アクチュエータの種類と配置

Optimusには、主に以下の2種類のアクチュエータが搭載されています:

  1. 回転型アクチュエータ(Rotary Actuators)

    • 肩や骨盤など、広い可動域が求められる関節に配置されています。

  2. 直線型アクチュエータ(Linear Actuators)

    • 膝、肘、足首など、主に一方向の動きが求められる関節に配置されています。

これらのアクチュエータは、ロボットの各部位に最適な配置がされており、効率的な動作を可能にしています。

◎直線型アクチュエータの技術的特徴

Optimusの直線型アクチュエータには、以下のような技術的特徴があります:

  • インバーテッド・プラネタリーローラースクリュー機構
    モーターの回転を直線運動に変換するために、静止したスクリューと回転するナットを使用した構造で、高い耐荷重性と長寿命を実現しています。

  • 高出力・短ストローク設計
    約2インチ(約5cm)のストロークで最大500kgの荷重を持ち上げる能力があり、レバー比を活用することで、実際の動作範囲を拡大しています。

  • 自己保持機能
    スクリュー伝達機構の設計により、動作停止時に姿勢を固定できる自己保持機能を備えており、エネルギー消費を抑えつつ安定した姿勢保持が可能です。

  • 力覚センサーの統合
    アクチュエータには力覚センサーが統合されており、スクリューの負荷を直接検出することで、精密な力制御を実現しています。

◎回転型アクチュエータの技術的特徴

回転型アクチュエータは、以下のような特徴を持っています:

  • 高トルク・高効率設計
    肩や骨盤などの関節において、高トルクを必要とする動作を効率的に実現しています。

  • コンパクトな構造
    限られたスペース内での配置を可能にするため、コンパクトな設計が施されています。

◎アクチュエータ設計の全体的な特徴

TeslaのOptimusにおけるアクチュエータ設計は、以下のような全体的な特徴を持っています:

  • モジュール化設計
    アクチュエータはモジュール化されており、メンテナンス性と量産性を高めています。

  • 軽量素材の採用
    アクチュエータの構造部材には軽量で高強度な素材が使用されており、全体の重量を抑えつつ、必要な強度を確保しています。

  • 高効率な電動モーター
    ブラシレスDCモーターを採用し、高効率で長寿命な駆動を実現しています。

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