Google系の自動運転「Waymo」を徹底的に調べ上げてわかったこと
Waymo Driverの技術スタック
Waymo Driverとは、Waymoの自動運転システム全体(ハードウェア・ソフトウェア)を指す名称で、「世界で最も経験豊富なドライバー(The World's Most Experienced Driver)」と称されています。waymo.com
Waymo Driverは自動運転に必要なセンサー群、AI・機械学習モデル、ソフトウェア、地図データ、車両制御システムなどを統合した技術スタックです。本章では、Waymo Driverを構成する主要技術要素(センサー、AI・ソフトウェア、マップ・システム、冗長設計など)について詳述します。
2.1 センサー構成とハードウェア
複数種センサーによる全方位検知: Waymo車両には、ライダー(LiDAR)、レーダー、カメラ、そして外部音響センサーまで、多様なセンサーが搭載されています。それらを組み合わせることで全天候・全方位の環境認識を実現しています。5世代目のWaymo Driverを搭載したJaguar I-PACE車両の場合、上部に360度回転型ライダー1基と車体周囲に4基の近距離ライダー、合計5台のLiDAR、6台の高解像度レーダー、29台のカメラ、さらに外部音響受信機(マイク)を備えていました。indrorobotics.ca
これらにより、自車周囲の全方向を死角なくカバーし、約300メートル先の物体まで検知可能な三次元地図をリアルタイムに構築します。
例えば、WaymoのLiDARは最大300m先の物体まで捉える性能があり、暗夜でも稼働し、Velodyne社やLuminar社の最先端モデルよりも遠距離を高解像度で検知できると報告されています。theverge.com
カメラも高ダイナミックレンジ・高分解能で、500m先の標識や歩行者を視認でき、重複する視野を持たせることで物体の識別精度を高めています。
レーダーはミリ波により物体の相対速度を即座に把握し、雨天や霧など視界不良時にも安定した検出を可能にします。waymo.com
また外部音響受信機(External Audio Receivers, EARs)は救急車などのサイレンを検知し、その方向を推定することで緊急車両に道を譲る判断に用いられています。 indrorobotics.ca
こうした多センサーのデータは相互に冗長性(Redundancy)を持たせています。各センサーの視野や検出能力が重複するよう配置されており、あるセンサーが捉えにくい状況(例えば強い逆光でカメラが不利な場合など)でも他のセンサーが補完する設計です。waymo.com
センサー融合により環境を「見る(Sense)」能力を最大化し、安全性向上に寄与しています。さらに、Waymoは自社でセンサーをカスタム開発しており、世代を重ねるごとに性能向上とコスト低減を両立してきました。
2020年に発表された第5世代ハードウェアでは、前世代比でセンサーコストを半減させつつ性能向上を達成したとされます。
そして2024年には第6世代ハードウェアが発表され、センサー数を「13台のカメラ、4基のLiDAR、6基のレーダー」に絞り込む一方で有効範囲を500mまで拡大し、悪天候耐性を高めることに成功しています。waymo.com
第6世代ではセンサー点数削減によるコスト大幅低減が図られ、寒冷地向けのセンサー洗浄機構など運用環境に応じたモジュール交換も可能になる柔軟性を備えています。これらハード面の改良は、Waymoがサービスを拡大する上で課題だったセンサーコストや天候制約の克服に直結しており、ビジネス展開を後押しするものです。
コンピューティングプラットフォーム: センサーから得た大量のデータを処理し、自動運転の判断をリアルタイムで下すため、車載コンピュータも高度に設計されています。Waymo車両の「脳」に当たるオンボードコンピュータには最新世代のCPU・GPUサーバーが搭載され、waymo.com 数十台ものセンサー出力を並列に処理します。具体的なハード構成は非公開ながら、高性能な演算ユニットと専用アクセラレータを組み合わせた独自設計基板を使用していると考えられます。その計算能力により、走行中に360度周囲の数百~数千の物体を同時追跡し、瞬時に経路計画を更新することが可能です。indrorobotics.ca
さらに、安全性を確保するため、コンピュータ自体も冗長化されています。Waymo車両にはメインの運転用コンピュータとは別に、バックアップ用のセーフティコンピュータが常時稼働しており、メインに不具合が生じた際には車両を安全に停止させる役割を担います。waymo.com
加えて、独立した緊急ブレーキシステムやステアリング用の冗長アクチュエータ(別系統のモーターと電源による操舵)が備わり、万一メイン系統が応答しない場合でも自動で減速・停止できるフェイルセーフ設計になっています。waymo.com
このような多層的バックアップはレベル4自動運転システムの安全要件を満たすものであり、「万が一」に対する徹底した備えが講じられています。
以下、Waymoの自動運転技術の全体像は、以下の報告書で無料でお読みいただけます。
後半、無人タクシー事業の部分は有料とさせていただいております。