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リサーチのプロとして長いこと歩んできた今泉大輔です。ChatGPT出現以降、Facebookで「ChatGPTとMidjourneyのビジネス活用を探って行く勉強会」を立ち上げ、「ビジネスパーソンにとってのAI」の観点で米国情報を収集して来ました。知的アウトプットの質と量を向上させるプロンプトの開発にも取り組んでいます。

先端半導体を生産するTSMCが台湾にあるから中国軍の台湾侵攻はないと結論づける報告書【ChatGPTディープリサーチ】

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「世界最大の半導体製造受託会社TSMCが台湾にある」という地政学的な事実が、中国軍の台湾侵攻を防ぐ強力な安全保障装置となっている...ということが、ChatGPTやGrokを何度か使って調べていくうちにわかってきました。

簡単に言えば、テンセント、アリババ、シャオミ、BYD、JDドットコムなどのいわゆる「セブン・タイタンズ」はNVIDIAのAI半導体を含む各種の先端半導体を必要としており、それが生産できるのは台湾にあるTSMCだけ。実質的にはそうなのです。

そのTSMCがある台湾を中国人民解放軍が攻め込めば、半導体の供給は全面的にストップしてしまい、中国株式市場で最大の存在感がある「セブン・タイタンズ」は即お手上げ。おそらく中国株式市場に激震が走り、かつ、経済活動にも大きな衝撃が走って、中国政府はどうにも対応できない事態に陥ります。

それについて優れた調査執筆性能を誇るChatGPTディープリサーチに、中国台湾に関する英語文献で調べさせた...というのが以下の報告書です。

(リサーチのプロの目線から見るとチェックしに行っている文献は比較的ありきたりのものであり、中国語文献には全く当たっていないので、物足りない感じはあります。しかし、中国の最大手テック企業が台湾からの半導体供給に全面的に依存している事実はわかるので、この報告書の結論も依然として説得力があります。上場企業の経営者の観点からは、このようなスナップショット的な報告書があれば十分なので、ChatGPTディープリサーチはそれなりにいい仕事をしているということになります)

ChatGPTのディープリサーチ機能は、このような地政学的な報告書を書かせる用途でも使えるのです。先日投稿した以下のブログの中に含まれる報告書(英文の方)も、かなり本格的な地政学系の報告書になっています。残念ながらこれを作成した時には長い英文の報告書を日本語にするテクニックがまだなくて、日本語の報告書の方はディテールを丸めた読み応えのないものになってしまいました。

トランプ・ゼレンスキー首脳会談決裂が日本の株式市場や世界の主要市場に与える影響【ChatGPTディープリサーチ】

中国台湾侵攻シナリオの現実味に関する報告書:エグゼクティブサマリー

  • 中国はAIや電気自動車(EV)分野の発展を台湾製半導体に大きく依存しており、台湾侵攻は自国のデジタル産業を直撃する経済的リスクが極めて高い。
  • AIチップ依存: テンセントやアリババ、百度、華為など中国IT大手は最先端AI半導体の製造をTSMC(台湾積体電路製造)に委託しており​、供給が途絶すれば中国のクラウドやAI産業は麻痺する。世界最先端チップの90%前後は台湾で製造され​、中国は代替調達が困難。
  • EVチップ依存: BYD、NIO(蔚来)、Xpeng(小鵬)など中国EVメーカーも自動運転や電池管理向けの高度な半導体を台湾から調達している。中国は自動車用半導体の約95%を海外(主に台湾や米欧)に依存しており​、戦乱による供給寸断はEV産業を直撃する。
  • 軍事的懸念: 台湾への大規模上陸作戦は極めて複雑で難易度が高く​、台湾の防衛力に加え日米の介入抑止も考慮すると、中国にとって軍事的成功の確率は低い。
  • 経済的自滅の恐れ: 武力侵攻は台湾の半導体供給網を破壊し、中国自身の経済に甚大な被害をもたらす。台湾のチップ喪失は「中国産業を崩壊させる」ほどの打撃となり得る​。その経済的損失はロシアのウクライナ侵攻を遥かに上回り、世界経済にも数兆ドル規模の混乱を招きかねない​。
  • 結論: 台湾の半導体産業という戦略的要衝への依存度を鑑みれば、中国が台湾を武力で統一しようとするシナリオは経済合理性を欠き、現実的ではない。日本企業は過度な懸念よりもデータに基づくリスク評価を行うべきである。

中国台湾侵攻シナリオの現実味に関する報告書:結論

本報告で詳述したように、中国のAI産業やEV産業を支える半導体の供給源として台湾は欠かせない存在であり、中国は台湾の平和と安定から大きな利益を得ています。仮に中国が台湾への武力侵攻に踏み切れば、最先端半導体の供給網を自ら破壊し、中国経済の屋台骨を崩しかねません。そのため、台湾の半導体産業という戦略的な重要性が 中国自身への抑止力(シリコンの盾) として機能しており、総合的に見て中国による台湾侵攻の可能性は低いと評価できます。

後略

中国台湾侵攻シナリオの現実味に関する報告書現物へのリンク

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