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米国データセンター投資が過去最高に

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Bank of America Institute は2025年9月9日、米国のデータセンター建設支出が6月に年率換算で400億ドルと過去最高を記録したと発表しました。

Data center spending hits a new high

米国国勢調査局(US Census Bureau)の統計に基づくこの報告によると、前年同月比で約30%増加し、2024年に50%増と急拡大した勢いが続いていることが明らかになりました。

背景には、生成AIやクラウドサービスの需要急増に伴うハイパースケーラーの投資拡大があります。同時に電気自動車(EV)の普及、産業のリショアリング、建物の電化など社会全体の電力需要増加が重なり、電力供給網に大きな負荷を与えつつあります。

企業にとっては、ITインフラ投資が成長の機会である一方、電力制約や環境政策との調整が経営課題となる局面が迫っています。今回は、急拡大するデータセンター支出の実態、電力需要との関係、そしてビジネス戦略への含意について取り上げたいと思います。

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出典:Bank of America Institute 2025.9

データセンター建設の急拡大

今回の統計では、2025年6月のデータセンター建設支出が季節調整済み年率ベースで400億ドルに達したことが報告されました。これは前年比約30%の増加であり、2024年の50%増に続く高水準の伸びとなっています。こうした急成長の中心にあるのは、クラウド事業者や生成AI需要を背景に拡張を急ぐハイパースケーラーです。

AWS、Microsoft、Googleといった大手に加え、オラクルやメタなどの企業も相次いでデータセンター建設を進めており、AI用GPUサーバーの需要が投資を後押ししています。また、冷却技術や電力効率を重視した新規設計が増えていることも特徴であり、従来型のデータセンターから次世代型へのシフトが進んでいるといえます。

一方で、この成長は米国内の建設コストや資材需要を押し上げる要因ともなり、労働力不足との兼ね合いでプロジェクトの遅延リスクも増大しています。投資の勢いが電力・人材・資材の制約と衝突する点が、今後の課題となりそうです。

電力需要とのせめぎ合い

レポートが示した重要な論点は、データセンター需要が電力消費を大幅に押し上げる一方で、それだけが電力需要増加の原因ではないという点です。Bank of America Institute の分析によれば、今後2030年までの米国電力需要の大半は、EV普及、産業リショアリング、住宅や商業施設の電化による増加が見込まれています。

つまり、デジタル産業の急拡大と社会全体の電化の流れが同時進行しています。データセンター単独ではなく、複数の要因が重層的に電力インフラへ圧力をかけており、電力網の強靱化と再生可能エネルギーの導入加速が求められています。

特にAIを活用するデータセンターは常時大量の電力を消費するため、ピーク時の電力逼迫リスクを高める可能性があります。企業にとっては、電力価格変動や供給制約が新たなコスト要因となる点に注意が必要です。

ビジネス戦略への影響

データセンター投資は、クラウド利用や生成AIサービスを活用する企業にとってインフラ基盤を支えるポジティブな要素です。その一方で、企業のサステナビリティ戦略やESG対応に直接的な影響を与える領域でもあります。

例えば、投資先や取引先のデータセンターが再生可能エネルギー由来の電力を使用しているかは、サプライチェーン全体の環境評価に関わる問題です。また、電力供給不足が深刻化すれば、クラウドサービスやAI基盤の利用コストが上昇する可能性もあります。

さらに、データセンター建設の集中は特定地域の電力網を圧迫し、地域経済や規制対応の面でも企業に影響を及ぼします。特に電力多消費産業とIT産業が同じ地域で拡張する場合、公共政策や料金体系を巡る調整が一層複雑化する可能性があります。

今後の展望

今後、米国のデータセンター投資はAIインフラ需要を背景に拡大を続けるとみられますが、電力網との調整が成長を左右する最大の鍵となります。再生可能エネルギーと蓄電技術の導入、送電網の強化、電力市場の柔軟化が同時に求められています。

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