サーバー市場は61%増:AIインフラ投資が引き起こす「構造的大転換」
米IDCは2025年12月11日、2025年第3四半期(7〜9月)の世界サーバー市場に関する調査結果を発表しました。これによると、市場規模は前年同期比61.1%増という驚異的な伸びを記録し、四半期売上高として過去最高の1,124億ドル(約17兆円規模)に達しました。この数字は、世界的なAI実装の加速が、もはや期待や実証実験のフェーズを超え、大規模なインフラ構築競争へと突入している事実を物語っています。
Worldwide Server Market Revenue Increased 61% During the Third Quarter of 2025, according to IDC
GPUを搭載したサーバーが売上の過半数を占める一方で、汎用的なx86サーバーの比率が相対的に低下し、代わりに特定のAI処理に特化した「Non-x86」サーバーや、巨大IT企業が直接製造を委託する「ODMダイレクト」区分が爆発的に成長しています。これは、企業のIT投資が「業務効率化」から「AIによる競争力創出」へと完全にシフトしたことを意味します。
今回は、市場を牽引するハイパースケーラーの動向、サーバーアーキテクチャの多極化、そしてベンダー間の勢力図の変化や今後の展望について取り上げたいと思います。

アクセラレーテッド・コンピューティングの常態化
2025年第3四半期のデータにおいて、最も象徴的な事実は、GPUを内蔵したサーバーの売上が前年同期比49.4%増となり、市場全体の売上の半分以上を占めるに至ったことです。これは、サーバーというハードウェアの定義が、従来の「データの保存・処理を行う箱」から、「AIモデルを学習・推論させるための計算エンジン」へと質的に変化したことを示しています。
これまでデータセンターの主役であった汎用サーバーは、いまやAIワークロードを支えるための脇役、あるいは基盤の一部という位置づけに変わりつつあります。特にハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)やクラウドサービスプロバイダーは、生成AIの需要急増に対応するため、高密度な計算能力を持つインフラの整備を最優先事項としています。IDCの報告にある通り、AIの採用ペースは衰えるどころか加速しており、これが市場規模をわずか1年で約1.6倍に押し上げる原動力となりました。
市場構造を変える「ODMダイレクト」の支配力
ベンダー別の売上シェアを見ると、業界の構造変化がより鮮明に浮かび上がります。Dell TechnologiesやHewlett Packard Enterprise(HPE)といった従来の著名ブランドメーカー(OEM)を抑え、圧倒的な存在感を示しているのが「ODMダイレクト」です。このカテゴリーは、ハイパースケーラーが台湾などの受託製造企業(ODM)に直接発注し、自社データセンター向けに調達するサーバー群を指します。
今回の調査でODMダイレクトの売上は前年同期比112.2%増と倍増し、市場シェアの59.4%を占めるに至りました。つまり、世界で出荷されるサーバー金額の約6割は、一般市場を経由せず、巨大テック企業の設備投資として直接消費されているのです。これは、最先端のITインフラ技術と資本が一部の巨大企業に集中している現状を端的に表しており、一般企業が享受できる技術と、トップティアの企業が保有する技術との間に乖離が生まれている可能性を示唆しています。
「Non-x86」サーバーの躍進と脱インテル・AMD依存
技術的な観点から注目する点は、x86アーキテクチャ以外のサーバー(Non-x86)が前年同期比192.7%増と、約3倍の規模に急拡大したことです。これに対しx86サーバーの成長は32.8%にとどまりました。このNon-x86の急伸は、ARMベースのプロセッサや、GoogleのTPU、AWSのTrainium/Inferentiaといった各社独自のカスタムシリコンの導入が本格化していることを意味します。
従来、サーバー市場はIntelやAMDが提供するx86 CPUが支配的でしたが、AI処理の効率化と消費電力の最適化を追求する中で、専用設計されたチップへの移行が進んでいます。クラウド事業者は汎用品の調達から、自社のワークロードに最適化した半導体を設計・運用する垂直統合型モデルへと移行しており、ハードウェアの多様化が加速しています。これは、半導体業界の勢力図にも影響を与える重要なトレンドと言えます。
米国一強の構図と地域間格差の拡大
地域別の成長率を見ると、米国が前年同期比79.1%増と突出しており、その成長は「アクセラレーテッド・サーバー(GPU搭載機など)」の105.5%増によって牽引されています。対照的に、日本は28.1%増、欧州・中東・アフリカ(EMEA)は31.0%増と、堅調な二桁成長ではあるものの、米国の爆発的な投資ペースには及びません。
この差は、AI開発とサービス展開における米国の圧倒的な優位性を示しています。計算資源(コンピュート・パワー)の量は、そのままAIの性能や開発速度に直結するため、このインフラ投資の格差は、将来的な産業競争力の格差として顕在化するリスクがあります。日本市場も成長軌道にありますが、世界的な競争環境において、相対的な地位を維持・向上させるためには、官民挙げたより戦略的かつ大規模な計算資源の確保が求められています。
明暗分かれるサーバーベンダーの現在地
メーカー別の動向では、Dell Technologiesが前年同期比37.2%増でOEM市場のトップ(シェア8.3%)を維持しました。同社はAI向けサーバーのラインナップ強化と供給能力の確保に成功し、企業のAI導入需要を的確に取り込んでいます。一方、Supermicroはシェア2位(4.0%)につけているものの、売上高は前年同期比13.2%減と苦戦を強いられています。また、HPEも2.3%減と微減しました。
市場全体が60%以上成長している中で、主要ベンダーの一部がマイナス成長となっている事実は、サプライチェーンの制約や、特定の顧客層(ハイパースケーラー対エンタープライズ)への依存度の違い、あるいはガバナンスの問題など、個別の経営課題が業績に直結していることを示しています。Lenovoが26.1%増と健闘するなど、AI特需の恩恵を享受できる企業とそうでない企業の選別が始まっています。
今後の展望
今回のIDCの調査結果は、AIインフラへの投資が「ブーム」から「実需に基づいた軍拡競争」の段階へ移行したことを明確に示しました。今後も、大手クラウド事業者を中心とした設備投資は継続し、AIモデルの高度化に伴い、より高い計算密度と電力効率を持つサーバーへの需要は高止まりすると予想されます。
一方、ハードウェアへの巨額投資が先行する一方で、今後はその投資に見合う「アプリケーションの収益化」が厳しく問われる局面に入ります。インフラ構築が一巡した後、企業は高価なGPUリソースを用いて具体的にどのようなビジネス価値を生み出すのか、そのROI(投資対効果)を証明する必要があります。また、急増する電力消費量とデータセンターの熱処理問題は、持続可能な成長を阻害する物理的な制約となり得ます。今後は、性能向上だけでなく、エネルギー効率に優れた冷却技術や、エッジコンピューティングへの分散など、環境負荷を低減するソリューションの重要性が高まるでしょう。

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