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NVIDIAの百万トークン時代に対応するGPU「Rubin CPX」

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NVIDIAは2025年9月9日、新GPU「Rubin CPX」を発表しました。

NVIDIA Unveils Rubin CPX: A New Class of GPU Designed for Massive-Context Inference

膨大なコンテキストを扱うAI推論に特化したこの製品は、従来の枠組みを超えて百万トークン規模のコード処理や長時間動画の生成を可能にするものです。

AIモデルの高度化と生成AIの利用拡大に伴い、処理速度・効率・スケーラビリティへの要求が急速に高まっている状況があります。

今回の発表では、1ラックで8エクサフロップスの演算性能と100TBの高速メモリを搭載する「Vera Rubin NVL144 CPX」プラットフォームも合わせて公開されました。CursorやRunway、Magicなど先進的なAI企業が利用を検討しており、開発支援から映像生成、ソフトウェア自動化まで幅広い領域での応用が期待されています。

今回は、Rubin CPXの技術的特徴、業界インパクト、利用企業の展望、そして今後の可能性について取り上げます。

新GPU「Rubin CPX」の狙い

Rubin CPXは「マッシブ・コンテキスト推論」に特化して設計された初のCUDA GPUです。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「RTXがグラフィックスを変革したように、Rubin CPXはAIにおける大規模コンテキスト処理を根本から変える」と強調しました。

百万トークン規模のコードや動画解析をリアルタイムで扱える能力は、これまでのGPUが直面していた限界を突破するものです。生成AIの進展に伴い、長大なコードベースを理解し最適化する能力や、長編動画の生成・検索といったニーズが高まっており、Rubin CPXはそれに応える設計思想を持っています。

ハードウェアとアーキテクチャの革新

Vera Rubin NVL144 CPXプラットフォームは、1ラックで8エクサフロップスのAI性能と100TBのメモリ、1.7ペタバイト/秒のメモリ帯域を提供。これは従来機種GB300 NVL72比で7.5倍の性能です。

さらに、Rubin CPX単体でもNVFP4精度で最大30ペタフロップスの計算能力を発揮し、3倍高速なアテンション処理を可能にします。128GBのGDDR7メモリを搭載し、長大な文脈処理を高効率で実行できるよう設計されています。モノリシックダイ構造を採用した点もコスト効率性とエネルギー効率の両立に貢献しています。

応用分野とビジネスモデルの変化

Rubin CPXは、ソフトウェア開発や映像生成など多様な分野での利用が想定されています。Cursorはコードエディタ環境における生成AI支援を強化し、開発者の生産性向上を目指します。

Runwayは動画生成の高度化を図り、映画制作やクリエイティブ領域での新たな表現を可能にします。

Magicはソフトウェアエンジニアリングの自動化を進め、基盤モデルを活用したエージェント型AIを構築しています。経済的にも、100百万ドルの投資で50億ドルのトークン収益が可能とされ、AIインフラ投資の収益性に新たな指標を提示しています。

ソフトウェアとエコシステムの統合

Rubin CPXはNVIDIAの既存エコシステムと緊密に統合されるといいます。NVIDIA Dynamoプラットフォームにより推論のスケール効率が飛躍的に向上し、Nemotronモデル群を含むマルチモーダルAIの利用が可能です。

さらにAI EnterpriseやNIMマイクロサービス群を通じ、企業はクラウドやデータセンター、ワークステーションでの実装を容易に行えます。CUDA-Xライブラリや6百万以上の開発者コミュニティも活用できるため、開発者エコシステム全体での普及が加速すると見られます。

今後の展望

Rubin CPXの登場は、生成AIが抱える「コンテキストの壁」を突破する契機となることが期待されます。

ソフトウェア開発では、従来は分割処理が必要だった大規模コードベースを一括で理解し、設計から保守までを統合的に支援することが可能になります。映像分野では長時間コンテンツの解析・生成が進み、検索や制作プロセスに革新をもたらす可能性があります。さらに、Magicの事例が示すように、AIエージェントの自律性向上につながり、人とAIが協働する新たな働き方を後押ししていくことが予想されます。

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