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なぜデータセンターはここまで電力を使うのか?

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Gartnerは2025年11月17日、データセンターの電力需要に関する最新予測を発表しました。世界のデータセンター電力消費は2025年の448TWhから2030年に980TWhへと拡大し、わずか5年間で2倍に達する見通しです。背景には生成AIの普及やモデルの大規模化に伴うAI最適化サーバーの急速な増加があり、2025年時点で21%を占める電力比率は2030年には44%へ上昇するとされています。

Gartner Says Electricity Demand for Data Centers to Grow 16% in 2025 and Double by 2030

この発表は、各国の電力システムや産業政策に対し、データセンターがもはや単なるICTインフラではなく、地域経済・エネルギー政策の中核へと移行している現状を示しています。米国と中国がAIインフラ整備を主導する一方で、クリーン電源への移行は依然として道半ばです。電力逼迫と脱炭素の両立という課題が加速する中、企業や政府はエネルギーの持続可能性と成長戦略をどのように結び付けるかが問われています。

今回は、電力消費拡大の要因、主要地域の動向、新しい電源選択肢、そして今後の展望について取り上げたいと思います。

AIインフラの急拡大がもたらす電力消費の構造変化

Gartnerの予測によれば、データセンター電力消費の拡大を牽引する最大の要因はAI最適化サーバーの普及です。2025年には93TWhだった電力消費は2030年に432TWhへとほぼ5倍に増加し、データセンター全体の増加分の64%を占める見込みです。従来のサーバーに比べて推論処理や大規模分散学習に対応するためのGPU・専用アクセラレータが大量の電力を消費する構造があり、生成AI需要が高まるほど電力負荷は指数関数的に増加します。

企業がAI活用を進めるほど、モデル精度向上やリアルタイム処理が求められ、必要な演算能力は跳ね上がります。こうした需要に対応するため、事業者はラック密度の高い施設や液浸冷却の導入を進めていますが、それでも電力需要の増加を完全に抑えることは難しい状況です。また、AIサーバーが占める電力比率が上昇することで、事業者は従来以上に電力調達戦略と供給安定性を重視する必要が高まっています。

電力消費の構造が大きく変化する中、企業のAI戦略は技術開発だけでなくエネルギー使用の最適化と強く結び付く段階へと移行しつつあります。

米国・中国が主導するインフラ競争と地域間格差の拡大

電力需要の拡大は世界共通の現象ですが、その中心に位置するのは米国と中国です。Gartnerは、両国が2030年までに世界のデータセンター電力消費の3分の2以上を占めると指摘しています。特に中国は、より高い省電力性能を持つサーバー使用比率やインフラ計画の整備度で優位性があると評価されています。

米国はAI需要の爆発的な増加により、データセンターの電力消費が地域電力供給の4%から7.8%へと拡大する予測です。電力逼迫の懸念が高まる一方、巨大ハイパースケーラーによる投資は継続しており、地域電力網の増強や再エネ導入の議論が加速しています。欧州も2.7%から5%への上昇が見込まれ、電力価格高騰や規制強化との両立が課題となっています。

アジア太平洋地域は成長率こそ緩やかですが、インドや東南アジアのクラウド需要拡大などにより、今後の投資拡大が期待されています。国・地域ごとの電力供給力、再エネ比率、規制環境によって成長速度に格差が生まれ、AIインフラは新たな地政学的競争領域となりつつあります。

クリーン電源への転換に向けた技術選択肢と制約

急増する電力需要に対して、データセンターが依存してきた化石燃料中心の電源構成は持続可能ではありません。Gartnerは、2030年に向けてグリーン水素、地熱、小型モジュール炉(SMR)といった新しい電力選択肢が現実性を帯びると指摘しています。これらは自家発電型のマイクログリッドとして活用できる可能性があり、電力網への負荷分散や脱炭素への貢献が期待されています。

ただし、各技術には課題もあります。地熱は安定電源として魅力がありますが、初期投資と許認可のハードルが高く、大規模普及には時間を要します。SMRは技術面の成熟と規制面の整備が不可欠で、安全性確保が最優先になります。一方、短中期で最も現実的なのは天然ガスによる分散電源であり、今後3~5年ではバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の導入が急速に進むと見られます。

再エネの変動を補い、ピーク負荷を滑らかにするBESSはAIデータセンターに適した機能を持ち、運用最適化の鍵となります。電源多様化は避けられないテーマであり、技術選択の巧拙が事業者の競争力に大きく影響します。

電力逼迫と脱炭素の両立がもたらす経営上の新たな論点

電力需要の増大は、企業の経営戦略にも直接的な影響を与えます。まず、AI導入が進むほど電力使用量が増え、コスト構造が変化します。特に高密度ラックを前提としたデータセンターでは、電力料金の変動が経営リスクとして顕在化しやすく、長期的な電力調達契約やPPA(電力購入契約)の重要性が高まります。

また、サステナビリティ目標を掲げる企業にとって、AI活用の拡大と電力消費の増加が矛盾する可能性があります。そのため、効率的なAIモデル構築、推論コストの削減、冷却方式の革新など、技術面と運用面の工夫が求められます。

加えて、データセンターが地域の電力網に与える負荷が増すことで、自治体や政府との協調が欠かせなくなり、立地戦略は従来以上にエネルギー政策との整合が問われるようになります。AIの発展を前提とした電力インフラ整備は、企業単独では進められず、官民連携が不可欠となっています。

今後の展望

2030年に向けて、データセンターは「AI需要の拡大」と「脱炭素」という二つの圧力を同時に受けることになります。消費電力の増大は避けられない一方で、企業と地域が持続的に成長するには電源の多様化と効率化の両立が求められます。短期的には天然ガスとBESSの組み合わせが現実解となり、中長期的にはグリーン水素やSMRなど新しい電力技術が事業戦略の選択肢として台頭していくでしょう。

AIサーバーの高密度化が進むほど、電力インフラとAIインフラの一体最適が重要になり、企業は従来のIT最適化だけでは対応しきれない段階に入っています。政策面でも、電力網の強化、クリーン電源の拡大、データセンター立地の広域分散など、多方面での調整が求められています。

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出典:IDC 2025.11

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※Google Geminiにて編集

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