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AIサーバー市場、再び拡大軌道へ──CSPとソブリンクラウドが牽引

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半導体市場の調査会社TrendForceは、2025年10月30日に発表した最新分析で、世界のAIサーバー出荷が2026年に再び大きく伸びると予測しました。

Strong Demand from CSPs and Sovereign Cloud to Drive Over 20% Growth in AI Server Shipments by 2026, Says TrendForce

クラウドサービスプロバイダー(CSP)と各国政府が進める「ソブリンクラウド(主権クラウド)」の投資拡大が背景にあります。

同社によると、AIサーバーの出荷台数は2026年に前年比20%以上増加し、全サーバー出荷の17%を占める見込みです。これは、AIの利用が特定企業の先進的取り組みから、産業全体に広がっていることを示しています。

2025年はNVIDIA製チップの中国向け制限や新製品の立ち上げ遅れの影響で、出荷成長率が24%前後に修正されましたが、それでも市場全体の売上は約48%増と力強い伸びを示しました。新世代の「Blackwell」プラットフォーム(GB200やGB300)がけん引役となっています。

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出典:TrendForce 2025.10.30

今回は、TrendForceの分析をもとに、AIサーバー市場の成長要因、技術動向、メモリ市場への影響、そして今後の展望を整理します。

クラウドとソブリンクラウドが成長を支える

AIサーバー市場を最も押し上げているのが、CSPによるAI投資です。米国の主要クラウド事業者は、生成AIやAIエージェントの導入を急速に進めています。これまでのように学習モデルを構築するだけでなく、日常業務やサービス運営の中でAIを活用する「推論処理(inference)」の需要が増えており、AI対応サーバーの拡充が欠かせない状況といいます。

同時に、各国政府が主導する「ソブリンクラウド」への投資も広がっています。データの保護や国家安全保障の観点から、自国内でAIを運用する基盤を整える動きが加速しています。欧州やアジアでは特にこの傾向が強く、AIインフラを国家の競争力と位置づける政策が増えています。

TrendForceは、こうした動きを背景に、2026年のAIサーバー市場が20%以上の成長を続けると予測しています。AIサーバーはもはや一部のハイエンド製品ではなく、データセンターに欠かせない「標準設備」となりつつあります。

GPUからASICへ──主役交代が進むAIチップ市場

これまでAIサーバー市場をけん引してきたのは、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)です。特にNVIDIAはAIチップ市場の約7割を占め、圧倒的な地位を築いてきました。

しかしTrendForceは、2026年にかけて「ASIC(特定用途向け半導体)」の台頭が進むと予測しています。北米のCSPや中国の大手企業が、自社向けに最適化したAI ASICを開発しており、演算性能と電力効率を両立した新しいAI基盤が生まれつつあります。

2026年には出荷数量ベースでASICがGPUを上回る可能性があり、AIインフラ市場の競争は「汎用性能」から「省エネ・コスト最適化」へと焦点が移りそうです。

さらに、GPUメーカー各社も従来の「チップ単体販売」から「ラック単位での統合システム提供」へと戦略を変えています。これにより、AIサーバー全体の付加価値が高まり、2026年のAIサーバー売上は前年比30%以上の成長が見込まれています。市場全体の売上高の約4分の3をAI関連サーバーが占める見通しです。

急増するHBM需要──AIメモリ競争の新局面

AIチップの進化を支えているのが、高速で大容量のメモリ「HBM(High Bandwidth Memory)」です。生成AIや推論AIでは大量のデータを瞬時に処理する必要があり、HBMの採用が欠かせません。

TrendForceの分析によると、2025年のAIチップ出荷だけでHBM需要は前年比130%以上増加しています。2026年も70%を超える成長が続く見通しです。

背景には、NVIDIAのB300・GB300、AMDのR200、IntelのVR200など、新しいAIチップの拡大があります。これらの多くはHBM3eを採用しており、Google TPUやAWS Trainiumなどの自社開発チップもHBM3eへの移行を進めています。

この需要の急増により、2025年はHBM3eの価格が5〜10%上昇しました。しかし、2026年にはSamsungがHBM3eの認証を完了し、SK hynix・Micronとあわせて3社競争が始まるため、価格は安定に向かう見通しです。

次世代のHBM4も開発が進んでおり、顧客企業がすでに在庫確保を進めています。HBM4はHBM3eより高価格になると見込まれており、メモリメーカーにとっては収益性向上のチャンスとなりそうです。

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※Google geminiを活用して編集

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