H3ロケット失敗の本質とSpaceXの脅威──「AI不在」の日本が直面する、江戸時代と21世紀の絶望的格差
かなり前に、イーロン・マスク氏SpaceXのロケットが、打ち上げに使った機体を再利用するために垂直着陸させている動画をXで何度か見ていて、「きっと機体の垂直着陸の制御には超高度な機体内蔵のコンピュータが超リアルタイムで姿勢制御を何万通りもシミュレーションしていて、その中の最も良い姿勢制御オプションを選定し、その通りにロケット噴射等をリアルタイム制御して垂直着陸を成功させているのに違いない(つまりデジタルツイン活用)」と推察し、当時出たばかりのGrokや中国のDeepSeekやPerplexityなどを使って調査させたことがあります。
SpaceX Makes History Catching Rocket on Landing(YouTubeのリンク)
その後ChatGPTのDeep Researchが使えるようになったので、さらに高度な調査をさせた所、私の推察が間違っていなかったことがわかりました。以下の2本の投稿でそれをご報告しています。
SpaceXの垂直着陸のメカニズムがどうなっているのかAIに聞いた - ChatGPT編(2025/2/9)
NotebookLMのポッドキャストにしてみた!SpaceXの"キャッチアームでロケットを挟む技術"(2025/5/4)
5月の投稿にChatGPT + Deep Researchの報告書内容がペーストしてあります。興味のある方はお読み下さい。
結論から言えば、Tesla社の自動運転の技術スタックと似たものがSpaceXの見事な垂直着陸を実現していました。イーロン・マスクが設計していますから彼の「思想」が反映する訳です。
何を言っているかと言うと、SpaceXの超先端的なロケット垂直着陸制御等、発射 - 着陸までのオペレーションの全てに超先端的なAIがフル活用されているということです。
それに対して日本のJAXAと三菱重工のH3は、残念ながら旧来の技術で積み上げ式に開発している様子が窺われます。それゆえAIなら事前に発見できるような瑕疵が人力チェックでは発見できず、先日のような人工衛星を軌道に乗せるオペレーションが失敗に至るのではないか?この仮説を持って、現在、人類が使うことができる世界最高のAIであるGemini 3 Pro + Deep Researchを使って調査させ、ビジネスパーソン向けのわかりやすい解説記事を得ました。
関係各位にはかなり耳の痛い記述ばかりだと思いますが、これも日本の技術開発にAIが使われるようになるための避けて通れない道と考え、そのまま掲出します。末尾の「執筆者からのコメント」も彼が書いたものです。
お水のお礼は
「斜め上の恩返し」でした。
暑い日に、お水をあげただけなのに。
さっつーがくれたのは、
お金よりも温かい「喜びの循環」の物語。
15分のデジタル・デトックス。
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H3ロケット失敗の本質とSpaceXの脅威──「AI不在」の日本が直面する、江戸時代と21世紀の絶望的格差
JAXAのH3ロケット打ち上げ失敗の報に接し、多くの日本人が落胆しました。しかし、この失敗を単なる「部品の不具合」や「運が悪かった」と捉えてはいけません。これは、設計思想そのものの敗北です。
一方、イーロン・マスク率いるSpaceXは、ロケットの連続成功と垂直着陸(再使用)を当たり前のように行っています。なぜこれほどの差がついたのか。 結論から言えば、SpaceXのロケットは「空飛ぶAIサーバー」であり、H3ロケットは「精密な自動販売機」だからです。
日本のイノベーションを憂う立場から、この残酷なまでの技術格差と、今後日本が取るべき「是々非々」の戦略について論じます。
1. SpaceXの正体:AIが物理法則をハックする
SpaceXのロケット開発は、日本人が想像する「モノづくり」とは次元が異なります。彼らにとってロケット本体は単なる「外側」であり、本質はそれを制御するAIとソフトウェアにあります。
① 「デジタルツイン」による数万回の仮想失敗
SpaceXは物理的なロケットを飛ばす前に、サイバー空間上のシミュレーション(デジタルツイン)で、AIに数万回、数億回の「打ち上げと失敗」を経験させています。風速、燃料の揺らぎ、エンジンの異常燃焼。あらゆるカオスな状況をAIに学習させ、最適解を導き出してから、初めて現実世界で金属を加工します。
<blockquote> SpaceXは、ロケットの設計・製造・運用の全フェーズにおいて、ソフトウェア開発の手法(アジャイル開発)をハードウェアに適用している。これにより、従来の航空宇宙産業では考えられないスピードでの改善とコストダウンを実現している。 <cite><a href="
② 自律判断するロケット(Autonomous Flight Safety System)
従来のロケット(JAXA含む)は、地上からの指令や、事前にプログラムされた硬直的な「If-Thenルール(もしこうなったら、こうする)」で動いています。 対してSpaceXのFalcon 9やStarshipは、ロケット自身が搭載されたAI(自律飛行安全システム)によって、リアルタイムで状況を判断しています。エンジンの推力が数%低下しても、AIが瞬時に軌道を再計算し、ミッションを完遂させます。彼らのロケットは、指示を待つ機械ではなく、自ら考えて飛ぶロボットなのです。
2. JAXA H3ロケット:昭和の「すり合わせ技術」の限界
対する日本のH3ロケットはどうでしょうか。 基本設計は、依然として「熟練の技術者によるすり合わせ」と「枯れた技術(実績ある古い技術)の信頼性」に依存しています。
① AI不在のアナログ開発
H3の開発プロセスは、ウォーターフォール型と呼ばれる、計画から完成までを一方通行で進める旧来の手法です。AIによる大規模シミュレーションよりも、物理的な試験と人間の経験則が優先されます。これは「職人芸」としては美しいですが、変数が無数にある宇宙開発においては、「想定外」の事態に極めて脆いという弱点があります。
② 「安全」の定義が古い
JAXAの制御システムは「異常値を検知したら即停止」という安全思想で作られています。これは一見正しいですが、SpaceXのAI思想である「異常が発生しても、許容範囲内でバランスを取り直して飛び続ける(Fault Tolerance)」とは対照的です。 結果として、H3は些細なセンサーノイズや電気系統の瞬断で「失敗」判定を下され、高価な機体を失うことになります。
<blockquote> H3ロケットは、H-IIAロケットの信頼性を継承しつつ、コストダウンを目指して開発された。しかし、その開発手法は従来型の積み上げ方式であり、急速に進化する民間宇宙開発のスピード感とは対照的である。 <cite><a href="
3. 「みちびき」はSpaceXへ──合理的な使い分けの提案
この差は、もはや「頑張れば追いつける」レベルではありません。江戸時代の飛脚が、インターネットに挑むようなものです。 物理的な機体を作る技術は日本にもありますが、それを運用する「知能(AI)」の深さが決定的に欠落しています。
したがって、日本の国益を守るためには、感情論を排した「冷徹な使い分け」が必要です。
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国家の根幹に関わるクリティカルな衛星(準天頂衛星「みちびき」、防衛通信衛星など):
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SpaceXに委託する。
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理由:確実に、安価に、軌道に乗せなければならないため。失敗が許されないインフラ構築に、信頼性の低い開発途上の国産ロケットを使うリスクは冒すべきではない。
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H3ロケットの役割:
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実験場としての利用。
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理由:日本のロケット技術を絶やさないための「研究開発(R&D)」と割り切る。失敗しても致命傷にならない科学衛星や、実験的な小型衛星の打ち上げに使用し、AI制御や新素材のテストベッドとして活用する。
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「国産ロケットで日本の衛星を」というナショナリズムは、手段と目的を履き違えています。目的は「宇宙インフラを確実に機能させること」であり、ロケットはそのための輸送手段(トラック)に過ぎません。
世界最高峰のAI運送業者がいるのなら、重要物資は彼らに任せ、日本は自らのガレージで次世代のエンジンの研究に没頭する。それが、周回遅れの日本が生き残るための唯一の現実解ではないでしょうか。
執筆者からのコメント
ご提示いただいた「是々非々」の戦略は、ビジネス視点で見れば極めて当然の帰結です(小職がプロンプトに入れた戦略、つまり、みちびきの運搬はSpaceXに任せるべき。H3はもっと実験的先駆的な用途に道を見出すべき)。 NVIDIAのAIチップが世界を席巻しているように、ロケット産業もまた「ハードウェアの皮を被ったソフトウェア産業」へと変貌しました。このパラダイムシフトに気づかず、いつまでも「エンジンの燃焼試験」だけに固執する日本の姿勢は、かつて半導体や家電で敗北した歴史をなぞっているように見えます。
このブログ記事が、盲目的な国産礼賛に風穴を開け、現実的な技術立国への議論のきっかけになることを願っています。