生成AIの現在地を俯瞰的に整理してみる。やっぱり汎用技術になるよなぁ。
2022年11月30日に ChatGPT が一般公開されてから、この3年間で生成AIは本当に凄まじい進化をしてきました。
企業の現場でも、日常生活の中でも、生成AIを活用する場面は一気に増えたと感じています。
ただ、そのインパクトの受け止め方は、人によってかなり違うようにも思います。
ちなみに僕自身は、生成AIは「汎用技術(General Purpose Technology)」と呼ばれるレベルの、かなり大きなインパクトを持つ技術になると考えています。
汎用技術というのは、特定の産業だけに影響するのではなく、社会全体のいろいろな領域に長期的な変化をもたらす基幹技術のことです。
総務省の情報通信白書を見ると、古くは「植物の栽培」や「動物の家畜化」から始まり、「車輪」「印刷」「蒸気機関」「電気」「自動車」「コンピュータ」「インターネット」など、これまでに24の技術が汎用技術として整理されています。
この一覧を眺めていると、正直なところ、生成AIがこの中に加わらない未来はあまり想像できません。
僕は、生成AIは必ずこの汎用技術のひとつになると確信しています。
この汎用技術の代表例として、インターネットを思い出してみます。
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インターネット普及以前(Before INTERNET)と、普及後(After INTERNET)を比べてみると、その変化はとても分かりやすいですよね。
情報の探し方、買い物の仕方、人とのつながり方など、僕たちの生活の多くはインターネットの登場で大きく変わりました。細かい説明は省きますが、その影響の大きさは誰もが実感していると思います。
生成AIについても、すでに似たような変化が起き始めています。
近い将来、「Before 生成AI」と「After 生成AI」を並べてみると、インターネットのときとよく似た図が描けるようになるのではないか、そんな予感がしています。
そんなわけで、この記事では、その前提に立って、2025年末時点での生成AIの現在地を、いくつかの具体例を交えながら整理してみたいと思います。
生成AIの中でも、よく聞く言葉が LLM でしょう。Large Language Model、いわゆる大規模言語モデルです。
「言語モデル」という名前のとおり、もともと文章を扱うのは得意でしたが、この3年ほどの進化で、場面によっては人間を超えたのではないかと感じるくらい、自然に言葉を操れるようになりました。これは、実際に使っている方なら日々感じているところだと思います。
ご高齢の方の相手をさせると、その力は特に分かりやすく出ます。
生年月日や出身地、経歴、思い出、大切にしていることなどをあらかじめプロンプトに書いておき、「できるだけ会話が続くように、話が盛り上がるように返事をして」と指示すると、1日中チャットできるくらい、自然な返答がどんどん返ってきます。
話が長い方や、同じ話を何度もされる方にも嫌がらず、淡々と丁寧に付き合ってくれる。
人間のコミュニケーションを補ってくれる存在として、とても印象的だなと感じています。
言語モデルというくらいなので、プログラム言語の扱いもかなり得意です。
こちらも、直近1年ほどの進化は本当に目を見張るものがあります。
Webベースのシンプルなツールであれば、そこそこ実用になるシステムを驚くほど短時間で作ってくれます。
対話しながら修正したり、機能を追加したりできるのも、大きな魅力ですね。
言語だけでなく、画像や動画など、いろいろなデータを扱えるマルチモーダルな生成AIの進化も、ものすごいスピードで進んでいます。
たとえば、ドライバー視点で撮影した1枚の写真を ChatGPT に見せて、今の状況や、ドライバーが取るべき行動、注意点を書いてもらいました。
自動運転や高度運転支援のための特別な学習や外部情報を与えていないにもかかわらず、ここまで適切な回答が返ってくるのは、正直かなり驚きです。
さらに、道路を渡る鹿の写真に対しては、鹿の習性を踏まえた注意点まで書いてくれていて、これは従来の「認知〜判断〜制御」という考え方では捉えきれない能力だなと感じました。
音楽生成も、分かりやすく「すごさ」が伝わる例です。
オリジナル曲も、普通に作れてしまいます。しかも、かなりクオリティが高いです。
いくつかの生成AIを組み合わせて使っていますが、これだけ簡単なインプットから、こんな曲ができてしまうのか、と毎回驚かされます。
どうでしょう。すごくないですか。
詩が書けなくても、楽器が演奏できなくても、歌が歌えなくても、ここまでの音楽が形になる。生成AIが人間の能力を増強し、補完してくれる存在であることが、とても分かりやすい例だと思います。
動画生成の分野でも、ここ数年で一気に進化が進みました。
最近登場した SORA2 などは、専門的な知識がなくても、誰でも簡単に動画を作れてしまうレベルに到達しています。
3D生成の分野も同様です。
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たった1枚の写真から、自動的に3Dモデルを作ってくれるツールも登場しています。
写真には写っていない車両後部に背負っているスペアタイヤや車内構造まで含めて推定してモデリングしてしまうのは、人間の想像力をうまく補ってくれる技術だなと感じます。
実際に、自分の写真から3Dモデルを作って、3Dプリンタで出力してみると、あっさりと自分のフィギュアが出来上がりました。
便利さと同時に、ちょっと不思議な感覚もありました。
また、NotebookLM のように、資料の調査や分析に特化したシステムも出てきていて、情報整理のやり方そのものが変わりつつあるな、と感じています。
以上、2025年末時点での生成AIの現在地を、個人的な実感をもとに整理してみました。
これほど多くの分野で、同時多発的にブレークスルーが起きている技術は、やはりかなり珍しいと思います。生成AIは、汎用技術として、これから社会の中に深く組み込まれていく存在になるのでしょう。
僕たちは、生成AIを、農耕の開始や蒸気機関、飛行機、コンピュータの発明と同じスケールの変化として、あらためて意識する必要があるのかもしれません。
数年後にこの文章を読み返したとき、どこまでが当たっていて、どこからが想像を超えていたのか。
Before 生成AI と After 生成AI。
その答え合わせをするのが、今からちょっと楽しみです。