スマート・クラウド戦略(3) スマートクラウド基盤の構築
「スマート・クラウド研究会中間取りまとめ(案)について(1)と(2)では、電子行政クラウド、そして医療・教育に代表される公共クラウドについて整理をしてきました。これに続くのが、社会インフラの高度化のためのスマートクラウド基盤の構築です。
本研究会の報告書では、スマート・クラウド基盤を、リアルタイムの膨大なストリームデータを統合し、情報流、物流、金融流、エネルギー流などを最適制御するため高度な社会インフラとしての基盤と位置づけ、国際競争力強化の観点からも重要であるとしています。
本報告書では、スマートクラウド基盤に該当するものとして以下の5つをあげています。
(1)スマートグリッド
まず、一番目にあげているのが「スマートグリッド」です。スマートグリッドはブログの「スマートグリッド」のカテゴリでもなんどか取り上げてきましたが、経済産業省なども国際競争力や産業育成、そして標準化などの観点から積極的に推進をしてきています。
経済産業省では、1月19日、「次世代エネルギー・社会システム協議会(第7回)」を開催し、中間取りまとめ案を公表し、日本型スマートグリッドの概要や今後の取り組みなどについて詳しく書かれています。また、1月28日には、「次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会(2009年8月9設置)」における検討の成果として、「スマートグリッドに関する国際標準化ロードマップ」を公表しています。スマートグリッドは世界規模での取り組みが進んでおり、日本も脱ガラパゴスに向けた対応が必要となってくるでしょう。
総務省の本報告書の中では、スマートメータを介して収集された各戸の電力消費や自然エネルギーの発電量などのリアルタイムのデータをクラウド技術を通じて統合化し、電力供給を制御する仕組みを構築することが可能であるとしています。
スマートグリッドの実現においては、新経済成長戦略においても何度もグリーン・イノベーションの中などで日本型スマートグリッド、アジア経済戦略の中でスマートグリッドの標準化に関する取り組みについては記載されています。
スマートグリッドは、CO2削減への対応や新産業の創出など経済産業省、総務省、そして国土交通省や環境省などの連携が必要となる重要な取り組みとなるでしょう。
(2)次世代ITS
次世代ITSの位置づけとして、各車両がもつプローブ情報(アクセス・ブレーキの仕様状況、位置情報、CO2排出量等)をクラウドサービスによって統合し、これらの情報に基づき、信号制御、交通規制の変更などにより、道路混雑の緩和やCO2排出量の削減等を実現することが可能であるとしています。ITSについては国土交通省でも取り組んでいるため、連携施策として展開していくことが重要となるでしょう。
またEV(電気自動車)の普及に備えて、充電スタンドとの連携や自動車の行動履歴を蓄積し、リコメンドするといった、よりインタラクティブな次世代ITS基盤の構築が必要となってくるのではないかと考えています。
(3)IPv6ベースの広域センサーネットワーク
IPv6ベースの広域センサーネットワークを構築し、センサーを介して収集される河川情報や山林などの地盤情報などをクラウドサービスによって統合することが可能となるとしています。また、避難経路をデジタルサイネージに表示することなど、地域の防災情報にも役立つことが可能になるとしています。
本研究報告書の中では「防災クラウド」については、特に言及がなかったのですが、災害が起きた地域に対して、コンピューターリソースを集中させるといった、使い方もあるのではないかと考えています。
その他(4)では、老朽化する橋やトンネルなどの補修履歴をクラウドで蓄積、(5)では、空間コードとの連携などが記載されています。
以上のスマートクラウド基盤に関する記述は、昨年12月22日、原口総務大臣が公表した「原口ビジョン」の「世界をリードする環境負荷の軽減」の項目に該当しているのではないかと思われます。
(出所:総務省 原口ビジョン 2009.12.22)
「ICTによるグリーン化の推進」の中で、スマートグリッドや次世代ITS、IPv6の社会インフラ高度化プロジェクトを全国300箇所で展開(2020年)と書かれています。10年スパンと少々期間が長いような気もしますが、これらの取り組みがどこまで一般的に浸透していくのかが、注目されるところです。