こんにちは! 生きざま番長 鈴木麻紀です。
今日は、ちとマジメに「働く意識」について書いてみたいと思います。

今週は、2冊の本を読みました。1冊目は、
Zerosyakai_1  新卒ゼロ社会-増殖する「擬態社員」
岩間夏樹著 角川書店

終身雇用が危うくなり、それを前提とした新卒社員定期一括採用も
当たり前ではなくなる。という社会モデルの変換に伴い、働く側の
価値観も、会社=ムラ頼みから、個人の幸せに変わってきた。
それは、日本を揺るがすパライダイム・シフトになりかねない大問題
なのじゃー、ということを、40年分の「新入社員意識調査」データを
元に説いている本です。

実は、ワタシが転職を決意し@IT自分戦略研究所に飛び込んだのも、
同じことを感じていて、何とかしたい! と思ったからなのでありました。
ワタシは前職(ITサービスプロバイダー)で採用やディレクションと
いった仕事をしていました。
日々面接なんぞをするのですが、その中で日増しにジワジワと危機感
をつのらせてきておりました。
なんだか「働く意識」が変わってきているぞ、と。

ワタシの元には、なんらかの理由で会社を辞めたり、辞めるつもり
だったりする人が面接にきます。最初の頃は、なんらかのチャレンジを
するために会社を「飛び出して」きた人が多かったのですが、だんだん
そうではない人に出会う確率が高くなってきたのです。

例えばこんな人です。
テクニカルコールセンターのマネージャー職に応募してきAさん。
職歴を聞くと、
「A社のコールセンターで半年働きました。仕事がきついので辞め、
 B社のコールセンターで半年働きました。仕事がきついのに給料が
 安いので辞めました。次はC社です。資格を取得したら給料を上げ
 てくれるという約束だったのに、資格取得支援制度が全くないので
 だまされたと思って辞めました。
 マネージャー経験? ありません。
 でも、ボクは色々なコールセンターを経験してきているので、マネ
 ージャーもできると思います」

冗談じゃありません。
彼はコールセンターを「経験」したのではなく、単に「在籍」していただけです。
自ら努力をすることもせず、与えてもらうことばかりを要求しているため、
成長することもありません。成長なしに転職するのですからステップアップは
望めず、いたずらに在籍社数を増やしているだけです。
ステップアップどころか、着実に事態は悪化しています。
全てのメーカーを制覇したら、彼はドコに行くのでしょう?

終身雇用が不確定なものになり、会社に将来を託せなくなったとき、
「会社に守ってもらえないのなら、自分の運命は自分で切り開くまでだ!」
というタフな方向に振れる人ばかりではありません。
現実は、表面的には旧来の会社員を演じつつ、その内心では日々をやりすごし
つつ腹の底では別な価値観を持つ「擬態社員(岩間夏樹用語)」になったり、
会社に期待をしないと同時に会社というものを軽視するがために会社間を
漂流し、いつのまにか行くあてがなくなる「企業ボヘミアン(鈴木麻紀用語)」
が、徐々に多くなってきているようなのです。

彼らは、「会社は守ってくれない、だから自分たちも責任は取らない」
とばかりに社会というリングに上がって試合をすることを放棄し、自立や
成長する機会を棄権しているようにも見受けられます。
「いーんだ、どうせオレの人生だし。自分のやりたいようにやるさ」
そう言うかもしれません。

でもこれは、もはやボヘミアンな人 個人々の問題ではありません。
個人も数が集まれば現象になります。
平成15年版の国民生活白書によれば、2001年で417万人のフリーターと
呼ばれる人がいるそうです。
フリーターが定職につかない人だとすれば、これはある意味ストライキ。
「団結なき集団デモ」だよねー、と岩間さんは書かれています。

そしてワタシは、こうも思いました。
かろうじて働いている人も、個人としての成長を拒否している。
個々の否成長が集まれば、全体の戦力ダウンになる。
「このままでは、日本の国力が落ちる! 日本が滅びる!」

何とかしてこの状況に警笛を鳴らさねば! と@IT自分戦略研究所の
扉を叩き(押し入り)、初対面の藤村(@IT代表)に上記のように
吠えたのを思い出しました。

誰でもみんな 自分で決意したら強くなれる。
今はまだ強くなれない人も、そのキッカケがまだないだけなんだ、
とワタシは思います。
だったら、ワタシがそのキッカケ(のキッカケぐらい)にはなれる
かもしれない。そう信じて 番長になったんだよ、ワタシ。

さて、今週の2冊目は
Kokoroe 社会人心得入門
山口瞳著 講談社+α文庫

前書に、この本の「新入社員に関する十二章」という働く心構えに
ついての小文の引用があり、それがとても気に入ったので買ってみました。
全文は長いので、12のタイトルだけ紹介します。

1. 社会を甘くみるな、勉強を怠るな
2. 学者になるな、芸術家になるな
3. 無意味に見える仕事も厭がるな
4. 出入りの商人に威張るな
5. 仕事の手順は自分で考えろ
6. 重役は馬鹿ではないし敵でもない
7. カネをつくるな、友人をつくれ
8. 新人殺しに気をつけよ
9. 正しい文字を書き、正しい言葉をつかえ
10. グチを言うまい、こぼすまい
11. 思想を持て、ヴィジョンを描け
12. 節を屈するな、男の意地をまげるな

うーん、しみじみ。
「自覚を持って働く」ことの美しさを感じました。

鈴木 麻紀

Special

- PR -
コメント
DC 2006/03/17 13:09

番長さん。こんにちは。僕は昨日「ウエブ進化論」を読了しました。
「キャリアパラダイムは始まってるよ。旧来の“個と組織の関係”に縛られず、自分を客観視できる力をつけて、自ら一歩踏み込んで、しあわせになろう、若者たちよ。おじさまたちよ」
かなり乱暴だけれども、そんなメッセージを著者から僕は受けとったのでした。(もちろんエレメントはウエブだけれども)。
ところでこれって“個と組織”に限らず、“個と個”でもおんなじ? お互いが「もたれあわず」に、一緒の時も離れてる時も、しあわせを感じあえる姿、理想の恋人同士だなあ。

大木 2006/03/17 18:13

makiさん、をを!怒ってますね~。w
> 冗談じゃありません。
> 彼はコールセンターを「経験」したのではなく、単に「在籍」していただけです。

仰るとおりですね、僕もそういう人は、はっきり言って嫌いです。
でもね、でもね、こういう人って、実は多くないですか?

僕たち会社員は、転職をするときに「きっかけ」が二度あると考えています。
一度目は、「退職のきっかけ」そして二度目が「転職のきっかけ」なのだと思います。
よく「当社を志望された動機は?」という「二度目」に対する質問をしていますが、実は「一度目」の理由がとても大切なんじゃないだろうか、と。

makiさんの仕事は、大変&面白そうです。(おもしろおかしいではなくて)
ぜひ、頭に来るときは「ばかっ!」と叱ってあげていただきたいなぁ。意味のあることだと思うんですけどね。(上司の方に叱られちゃうかな)
きっと、斜め前の方は拍手してくれるかと。(更に謎

maki 2006/03/18 00:34

DCさん
うんうん、そうねー。
うまくいってるカップルって、相手に「して欲しい」ことより、
「してあげたい」ことの方が多いように感じます。
キーワードは自立ダネ。
大木さん
怒るというよりも、当時はいたたまれない気分と、
なんとかしなきゃという焦りでいっぱいでした。
だって、みんな無自覚というか無邪気なんですもの。
いまの仕事は楽しい(おもしろおかしいではなくね)です。
以前とは違いこのブログのような場を得ることができたことですし、
「みんなで一緒に考えようよ」とハッパをかけていきたいと思います。

maki 2006/03/20 22:54

「新卒ゼロ社会」の元データ「新社会人白書」2006年度版ができたようです。
テーマは「就社」から「就職」へ。

http://www.jpc-sed.or.jp/contents/whatsnew-20060316-2.html

Bar 2006/03/28 12:46

>彼はコールセンターを「経験」したのではなく、単に「在籍」していただけです。
>自ら努力をすることもせず、与えてもらうことばかりを要求している

そうかなあ?
どうして努力していないって言い切れるんでしょうね。
一回や二回の面接で人の経験が見切れるものではないでしょう。

>「A社のコールセンターで半年働きました。仕事がきついので辞め、
> B社のコールセンターで半年働きました。仕事がきついのに給料が
> 安いので辞めました。次はC社です。資格を取得したら給料を上げ
> てくれるという約束だったのに、資格取得支援制度が全くないので
> だまされたと思って辞めました。

コールセンター業務は、会社によっては非常に劣悪な労働条件を押しつけてくるところが多いです。A社がほんとうに「きつく」なかったと、あなたにどうして判断できますか? 人間に耐えうる労働量には限りがあります。B社の給与も本当に安かったのかもしれません。業界を見ているとありがちな話だとしか思えません。C社はあきらかに詐欺ですよね。まあ、どこの会社でもこういうことをしていますが。少なくともこの人は資格を取得しようという努力はしていますよね。

> マネージャー経験? ありません。
> でも、ボクは色々なコールセンターを経験してきているので、マネ
> ージャーもできると思います」

べつに根拠のない万能感だとは思えません。資格取得しているわけだし、3社もコールセンターをまわっているということは、かなり臨機応変に対応できるスキルが身についているでしょう。

ぼくにはこのエントリは、視野の狭い人がスケープゴートを仕立てて攻撃対象にしているだけの自己満足記事にしか見えません。面接を通してひとりの人間を不採用にするのは企業の自由ですが、そこから演繹して社会で不遇に甘んじている人全体を非難の対象にするのは底の浅い行為でしょう。この程度の考察しかできない人に、キャリアだのスキルだのを語ってもらいたくないです。

>「このままでは、日本の国力が落ちる! 日本が滅びる!」

誰かをスケープゴートにしてウサをはらしたがっている人は、さいきんすぐにこういうことを言いますね。もう少し自分のオリジナルのことばで語ろうという努力はされないのでしょうか。どこかの人のウケウリでしゃべってばかりいると、それこそ日本の国力が落ちます。アイティメディアも滅びます。

DC 2006/03/28 22:48

いろいろな意見がコメントされていますね。再度おじゃましました。
僕はある小さな事務所に所属するグラフィックデザイナーです。むろん僕たちの業界のご多分にもれず、一般的に見れば劣悪な条件、昼食時間なし・連日の徹夜・土日返上・残業代などありません。体力的にきついのはあたりまえです。で、いつも「楽しく」仕事をしています。
僕は、いまの仕事と僕の関係で、はたから見れば「負の部分」を、自分ではない「誰か」や「何か」のせいにはしたくないし、できない。
「かわいそうな自分探し」はとうの昔にやめました。だって前にすすめないもの。自分の能力は「自分」の責任で磨きたい。給与をもらう身ではあるけれど、会社は僕という個を「武器」としておおいに使って、組織として成長できればよいし、僕は「会社」にとって、もっと大きくいえば「デザインの世界」にとって、「オンリーワン」の存在をひたすらめざす。するといつの間にか「条件」なんて、後から追いかけてきてくれるし、「条件」よりも大事なものがたくさんあるのにも気がつくことができると思うのでした。

maki 2006/03/28 23:31

Barさん、コメントありがとうございました。
まず、ワタシのエントリーで不快な想いをされたのでしたら、申し訳なく思います。
誤解されていたらいけないのであらためて書きますが、ワタシは、このエントリーで誰かを非難しようというつもりは毛頭ありません。
ただ、「働くことについて、いまいちど真剣に考えてみようよ」と問いかけたかったのです。
_
コールセンターが過酷な環境であることは、ワタシも間接的にですが知っています。並みの人には勤まらない仕事です。でも、いや だからこそ、そこで働くためには 人並み以上に強い意思が必要だと思うのです。
例としてあげたのは架空の人物や会社ですが、実際 本当にキツい労働条件で給料も安い会社はたくさんありますし、そういった会社を想定して書きました。でも会社が「してくれない」ことは、その人が「がんばらない」ことの理由にはならないと思うのです。
同様に、「資格取得で給料があがること」と「資格取得支援制度がない」のは別の話です。ワタシが言いたかったのは、あきらめないで欲しい、ということです。
せっかくチャンス(結果がでれば、給料をあげる)があるのだから、会社が補助してくれなくても自力でがんばればいいじゃん、と思うのです。なのに、「補助してくれないから資格も取らないし、会社も辞める」では、あまりにもったいない話だし、そのことをもったいないと気付いていないことが、歯がゆいのです。
「外側の尺度に振り回されない自分を持て」というのが、「自分戦略」が掲げるメッセージです。ワタシはこの考えを大切にしていきたいと思います。
_
DCさん。
澄んだコメントを、ありがとうございました。
DCさんは 本当の意味で「楽しく」仕事をしている方だろうなぁと感じました。


コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/2937486

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

鈴木麻紀と丸の内ファイブ

鈴木麻紀と丸の内ファイブ

アイティメディアで、スキル/キャリア関連サービスを企画・運営しているチーム。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年6月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ikizama
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


Special

- PR -
最近のトラックバック
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ