ワタシが担当している@ITジョブエージェントには「転職アドバイスメール」
というコーナーがあり、転職に関するエンジニアのお悩みに、さまざまな
ジャンルのアドバイザーがお答えしています。

先日、とある女性エンジニアから
「育児と仕事を両立させたいのだけれど、育児中は閑職に異動させられそう」
という相談がありました。
この相談を受けて、正直“困ったなぁ”と思ってしまいました。というのも
このお題、ワタシがお答えするとどうしても感情的になってしまうからなのです。
いままで、育児・家庭生活と仕事を両立している方は何人も見てきていますし、
能力と意欲のある方には出産後もどんどん活躍して欲しいと思ってます。
でも、その思いとは裏腹に、現実では苦い思い出もあるのです。

例えば、
お子さんが病気になって同僚が早退、その同僚の仕事を引き受けてワタシは深夜残業
なんて場合です。
病気なんだから仕方がないと頭では分かっているのですが、たび重なると
「他人の子供のために、なんでワタシが残業しなきゃいけないの、キーッ!」
となっちゃう。
だってね、お子さんが病気になると保育園に迎えにいったり看病したりするのは、
いつも母親であるワタシの同僚。
父親は早退したり休んだりすることはなく、普通に仕事をしているのです。
父親の方が他人よりも子供に対する責任が多いと思うのに、
その父親は子供が病気になっても(仕事上は)影響なし、
その代わり母親の周囲の人間の負担が増える、これってオカシクナイ?
そして翌朝同僚が出社して、ゴメンでもアリガトウでもなく、何事もなかったか
のようにオシャベリに興じている姿を見てガックリしたことが何度もあるのです。

このようなことが重なって育児と仕事が両立することができなくなり、
退社していった女性も何人も見てきました。
ツラツラと思い返してみると、彼女たちが育児と仕事を両立しきれなかった原因は、
主に下記の3つに集約できそうです。

1. 本人の意識の問題
育児中なのだから周囲が協力してくれて当たり前、と思ってしまったこと。

みんな育児が大変なことは分かっていますので、できる限りの協力をしたい
とは思っています。でもそれは「好意」であって「当然」のことではないのです。
勤務時間中は集中して働くとか、退社後も緊急時には電話やメールで連絡が取れる
ようにするなど、できるだけ周囲の協力を得ないでも業務を遂行できるように本人
も努力することが必要だし、その姿勢が見えれば周囲も多少の無理は聞いてくれる
ようになるハズ。

2. 家庭の問題
夫婦間の家事や育児の分担が偏っていて、その偏りが分担が多い方の会社の同僚に
まで及んでしまったいること。

父親や双方のご両親など子供の関係者みんなで育児を分担していけば、母親個人の
負担が減って、仕事との両立がしやすくなるハズ。

3. 会社の体制の問題
育児中の社員の業務量(not時間)の軽減や不在時のバックアップ体制などを、
本人にも外部にも明確にしなかったこと。

一般に、育児中の社員には勤務時間短縮+残業無しの措置がとられるのですが、
業務範囲や分量が契約書などで明確に軽減されていないことが多く、
時間が少ないにもかかわらず業務量が変わらない、という現象がおきがちです。
形式的に時間を減らすだけではなく、仕事の分量や責任範囲も時間に応じて軽減し、
その減らした分のバックアップ体制を明確にして 本人/社内/社外 にオープン
にする。そうすれば、本人も周囲も無理をしないで協力しあえるハズ。

うむ、だんだんスッキリしてきたじょ。
育児と仕事の両立は、母親1人の問題ではなくて、本人、家庭、会社の同僚や顧客、
みんなみんなの理解と協力と努力があって初めてなりたつ
ものなのだな。

このお題、ずっと気になっていたことなので、もう少し続けたいと思います。
皆さんのご意見も聞きたいデス。

鈴木 麻紀

Special

- PR -
コメント
大木豊成 2005/10/28 20:32

お邪魔します。
僕の知り合いにも、子育て奮闘中お母さん&管理職がいます。
保育園に送って、迎えに行ってなので、毎日ほとんど、ぎりぎりに駆け込んで、定時過ぎには帰る生活を送られています。
僕から見て、彼女が抱える問題のひとつは、「勉強する時間がない」ことと「考える時間がない」こと、いずれも時間がないのですが、仕事をする時間と育児をする時間で精一杯で、自分が成長する時間がない。もちろん、部下に対するケアをする時間も少なくなります。
周りの理解と協力も必要ですが、何より本人の覚悟が必要ですね。何をやって、何を止めるか、諦めるか。
もちろん、ご主人の理解、協力と覚悟が必要なのは、間違いありませんね。

Emie Kayama 2005/10/29 16:51

母でも母の同僚でもありませんがとても気になります。
子がいればこそ収入も必要で、しかし子は手がかかる。これ以外にもジレンマがあると思います。

当事者としての問題もさることながら、どう両立させるかは今の社会で克服すべき大きな課題だと思います。できるだけ多くの人が実情を理解するようになれば、いい案も出て社会・社内制度が整ってくるのではないでしょうか。

前のYomiuri Weeklyでそうした特集を見て考えてしまいました。

すわ 2005/10/29 23:39

「育児と仕事の両立」と一口に言っても、子供の年齢や各家庭の構成、経済的事情などの諸条件に大きく左右されると思います。そのバリエーションはそれこそ無数でしょう。「ケーススタディ」としては積み重なるのかもしれませんが、問題を抽象化して普遍的な解決策を求めるのは困難な気がします。

もしやるなら、様々なケースを整理し、「3 歳から小学校入学前、経済的には安定しているが、自分の能力を活かしたい」といった代表的なパターンを抽出することで、個別の議論が可能かもしれませんね。しかし、こういった「ドライな分析」の成果を利用して、育児と仕事の両立を実現すれば、本当に幸せになれるのでしょうか。

むしろ、「子育てに専念する」というのも良い選択肢かもしれません。これはもちろん、女性に限らず男性が選択しても良いわけです。自分の子供が日々成長し、一つの命として存在を確立していく姿を、期間限定でたっぷり味わえる。そこに自分がコミットできる。こんな素晴らしい「仕事」は、そうそうないと思います。

小学校に上がるまでのたった数年間、子供と真剣に向き合い、泣いたり笑ったり振り回されて、いろいろなことに気付く毎日。そうやって子育てに精一杯夢中になるという経験は、とても貴重だと思います。

とはいいつつも、僕は独身なので「お前は現実がわかってない! 甘い!」と言われてしまえば、返す言葉もないわけですが...

みみ 2005/10/31 11:05

以前仕事で世話になっていた男性が、数年前に3ヶ月ほどの育児休暇をとりました。男性としては社内第1号だったようです。しかし、実態はと言うと、彼は週のうち3日以上は事務所に出向き、客先にまで出向いていたようです。(彼の場合、妻も育児休暇は取っていたようですが、3人目で他の兄弟もまだ幼く、母親一人では辛いということで、彼はどちらかというと家庭では補助的な役割だったようです)そもそも、早い時期から育児休暇を取ろうと言っていながら、いつから取るか、休暇中の社内体制をどうするか、結局彼も周りもほとんど直前まで手を回していなかったようで、結局「休暇中」も彼自身が動かなければならない、ということになってしまったようです。しかし、あくまで「休暇中の自主的(勝手?)な行動」ということで、「休暇中」の実績はまったく評価されなかったようで、次のボーナス査定は格段に低かったそうです。何のための育児休暇か、そんな状況で本当に育児は出来たのか。。。本人にも周りにも問題が多かったのだと思います。
で、つい最近、その彼は「家庭の事情」で会社を辞めました。詳しい事情をまったく話してくれないのでよくわかりませんが、早朝や深夜に家を空けることが出来なくなったのだということ(子供を自分ひとりで育てなければならなくなったのか?)。そう言いつつ、職場に代わりの人材がいないとかで、いまだに毎日昼間だけ「出社」して仕事をしているそうです。。。

maki 2005/10/31 13:02

皆さん、ご意見を ありがとうございます。
いろいろな立場や見方からの意見を聞きたかったので、
とてもありがたいです。

ワタシ自身は独身オンナなので、育児と仕事の両立の大変さを“1人称”では理解できていません。
あくまでも「働く親の同僚」の視点からの見方なので、どうしても本当にいま苦労している働く親の皆さんとは温度差が違う、理想論だったり考えが甘いところがあるだろうな、と思います。
「社会の問題」という視点がかけてますしね。

そして、「働く父親」も大変深刻な問題だと思います。
父親の場合、まだまだ「父親が家事や育児をする」ということに対しての理解が得られにくく、職場や顧客からのプレッシャーが母親以上に重いなぁと、これも同僚として見ていて思いました。
ex.父子家庭の父親への「あの営業は、夕方以降会社にいない」といった顧客からのクレームとか。
「残業できない事実や不在時のバックアップメンバー」を顧客にオープンにしていないこととかが原因の1つにあげられるのですが、父親の場合、例えオープンにしても「早く再婚しろ」という言葉を投げつけられることが多いように見受けられました。

おかん 2006/02/14 19:58

はじめまして。
育児と仕事の両立についてご紹介したい記事がありますのでTBさせていただきます。
どうぞよろしくお願いします。

みもぞう 2006/03/15 13:44

トラックバックをさせていただきました。
今後ともよろしくお願いします。

記事に書かれていること、おっしゃるとおりだと思います。やっぱり、権利は使ってもいいけれど振りかざすのはよくないですよね。

僕自身育児休暇をとる時にも、そのために周囲が困るようなことがあったら、自分自身もつらい立場に追い込まれてしまうというのを実感しました。

maki 2006/03/15 20:09

みもぞうさん
トラックバックをありがとうございました。
デンマークでは、男女とも育児休暇をとるのが
普通で、週に2日はお父さん/残り2日はお母さん/
残りの1日はご両親にヘルプを頼む、なんてパターン
で子育てされる家庭も多いそうですよ。
前に見たNHKの番組情報なので、うろ覚えで申し訳
ないのですが。
▼NHKスペシャル;データマップ63億人の地図「出生率~女と男・支え合う 未来へ」
http://www.nhk.or.jp/special/libraly/04/l0009/l0926.html


コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/2851748

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

鈴木麻紀と丸の内ファイブ

鈴木麻紀と丸の内ファイブ

アイティメディアで、スキル/キャリア関連サービスを企画・運営しているチーム。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年6月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ikizama
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


Special

- PR -
最近のトラックバック
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ