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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

高市内閣が米国で投資する「SMR」の日立・GEベルノバとSMRの詳細がわかる報告書

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米国のギガワット級の大型AIデータセンターでは系統接続が認められるまで数年かかるため、「オンサイト発電(ビハインド・ザ・メーター=系統に接続しないでAI DC敷地内に発電所があるという意味)」が最も妥当な選択肢になりつつあります。発電形式としては、発電所建設期間が相対的に短い、天然ガスを燃料とするガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)の発電機が選ばれます。しかしGTCCとて巨大な発電所であることに変わりはなく、短くても4年程度のプロジェクト期間が必要です。

それに対してSMR(Small Module Reactor、小型モジュール原子炉)は「モジュール」と言われるだけあって工場内で生産された部材を発電所用地で組み立てるだけの簡易な設置が可能です。「発電所建設」の「建設」要素が極端に小さい電源です。

1つだけ制約があるとすれば未だ商業発電が認められたケースは米国にも存在せず、大型AIデータセンターのオーナー(Amazon, Meta, Google, OpenAIなど)からすれば、垂涎の的であるけれども商業発電が認められるまで数年待たなければいけないという構えの電源でした。米国AIデータセンター業界用語「Gas to Nuclear」は当初はGTCCを電源としてAIデータセンターを立ち上げ、SMRが認可されたらそっちに切り替えよう...という意味です。

そのSMRが高市内閣の米国に対する投資案件として出てきたので、私は驚いてしまいました。急いで詳細を調べて作成したのが以下のレポートです。開業準備中の「さっつーのAIエージェント」のサイトに置きます。

日立製作所が長年米国においてGE Vernova(GE系列の発電設備会社)と一緒に原子力発電事業に取り組んできたことがわかる内容となっています。また、東南アジアにおける以下の発表についても文脈が理解できます。日本政府もこの日立子会社によるSMR海外輸出をプッシュしています。

日立とGEベルノバが、東南アジアにおけるSMR「BWRX-300」導入に向けた覚書を締結(2026/3/14)

以上の文脈があっての今回の対米投資となっています。

AIデータセンターはトランプ大統領によって「国家安全保障上の重要施設(Critical Defense Facilities)」に指定されているそうです。そのAIデータセンターのための投資として今回の日立系SMRが選定された訳で、米国政府の利にもなり日本政府の利にもなるという、かなり絶妙な位置付けの投資です。

日米経済安全保障の新地平:GEベルノバ・日立連合によるSMR展開と対米投資80兆円枠組みの深層分析

2026年3月、高市早苗首相の訪米とトランプ大統領との日米首脳会談は、単なる二国間同盟の再確認を超え、世界のエネルギー地図と経済安全保障のパワーバランスを根本から変える画期的な合意を導き出した。この会談の最大の焦点は、日本の自動車産業等に対する関税負担を軽減する見返りとして、日本政府が米国に対して総額5,500億ドル(約80兆円)に及ぶ巨額の投資を約束したことにある 。この「相互関税」交渉の妥結に伴う対米投資計画の「第二弾」として浮上したのが、GE Vernova(GEベルノバ)と日立製作所の連合による米国南部における小型モジュール炉(SMR)の開発・製造プロジェクトである。

本報告書は、この巨大プロジェクトを主導するGE Vernovaおよび日立GEベルノバニュークリアエナジーの企業実体、次世代原子炉技術「BWRX-300」の技術的優位性、そして米国南部への投資がAIデータセンターの爆発的な電力需要といかに結びついているかを詳述するものである。さらに、2026年3月14日に締結された東南アジアにおけるSMR導入に向けた覚書の意義を含め、地政学的・経済的インプリケーションを多角的に考察する。

  1. 日米投資合意と「80兆円」の戦略的枠組み
    1. 1.1 自動車関税軽減と投資の交換比率
    2. 1.2 投資スキームの実態:民間主導と政府支援の融合
  2. GE Vernova:エネルギー専業のグローバルリーダー
    1. 2.1 会社分割と再誕の背景
    2. 2.2 事業セグメントとグローバルな存在感
    3. 2.3 経営陣と成長戦略
  3. 日立GEベルノバニュークリアエナジーの構造と役割
    1. 3.1 設立と資本関係
    2. 3.2 日本国内におけるプレゼンス
    3. 3.3 グローバル展開へのシフト
  4. 次世代小型モジュール炉「BWRX-300」の技術革新
    1. 4.1 設計の核心:第10世代BWRへの進化
    2. 4.2 「引き算」による安全性の向上
    3. 4.3 経済性と建設性の革新
  5. 米国南部プロジェクトの詳細とAIデータセンター電源説の検証
    1. 5.1 投資の舞台:米国南部が選ばれた理由
    2. 5.2 具体的なプロジェクト案件とパートナー
    3. 5.3 AIデータセンター専用電源説の確認
  6. 東南アジアにおけるSMR導入に向けた覚書(2026/3/14)
    1. 6.1 覚書の背景と参加者
    2. 6.2 協力内容と対象国
    3. 6.3 戦略的意義:中国への対抗
  7. 地政学的および経済的インプリケーション
    1. 7.1 日本の「モノづくり」の再興と雇用への影響
    2. 7.2 日米同盟の「経済的不可分性」
    3. 7.3 エネルギー転換と「スーパーサイクル」の到来
  8. 結論:今後の展望と課題
  9. 引用文献

    EXECUTIVE
    4/10 (金) 10:00-
    ※会場開催なし
    1. Zoomライブ
    2. アーカイブ
    【10兆円規模の巨大市場】

    国内AIデータセンター事業参入の
    構造と勝ち筋
    〜国内ブラウンフィールドの見つけ方とNTT IOWNの衝撃〜

    【本セミナーの最大の差別化点】

    国内でAIデータセンターを建設する際、最有力となるガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)発電機を設置するために必要な「用地の条件(面積・地盤強度・燃料・水など)」を、実務視点から明快かつ具体的に解説します。

    GW級の波が到来する中、本質的に「発電案件」であるAIデータセンター建設において、電力・建設・商社・不動産など多業種が知るべき初級から上級のノウハウを網羅。IOWNによる用地選びの激変シナリオも紐解きます。


    講師:今泉 大輔(株式会社インフラコモンズ 代表)

    主催:SSK 新社会システム総合研究所

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